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第17話 手始め
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今世のマルギットの身体を手に入れた黒魔女のマルギットは隠し部屋の外へ出ると石壁に向かい丁寧に呪文を唱えた。
「我、ここに復活した。我の痕跡をこの場より消し去る。古の黒の陣にて一切のものを寄せ付けぬ封を施す。再びこの扉開くことなし。我の痕跡を永遠に消し去る」
ブウゥン・・・・
ブウゥン・・・・
地下通路の石壁に赤黒い魔法陣が浮きあがった。
ウワンッ!!!
赤黒い光が波紋の様に広がると石壁は完全に塞がれ、そこに部屋があったことすら解らない。
復活した黒魔女マルギットは隠し部屋を完全に封印した。
じっと己の左手を見る。
赤黒い光の珠が乗っている。
「ふうぅぅぅぅ」
石壁に向かい赤黒い光の珠へ息を吹きかかると地下通路全体に赤黒い靄が立ち込めた。
「まぁ、こんなものだな。それにしてもマルギットよ、そなた大した者だな。古の我の時代よりも魔術が容易に使えるではないか。惜しい事をしたな。そなたと融合できていれば王国を手に入れることなど雑作もなかったであろうに・・・・」
黒魔女は忌々し気に石壁を見つめた。
「チッ!あやつがおらねば・・・・あの夫がおれねば愛などと言う愚かなものに惑わされることもなかったであろうに」
ハイノと共に自身の深淵江落ちて行ったマルギットの姿が頭に浮かんだ。
「ふっ!!!!」
勢いよく頭に浮かんだ二人の姿を吹き消す。
「・・・・愛など・・・・未来永劫、変らず傍にいることなどないわっ!助けられず深淵に落ち、戻る事のない闇の中を選んだではないかっ!それが愛などと呼べるのかっ!笑わせるなっ!マルギット、そなたはいずれ選択を誤ったと悟であろう。深淵の中でなっ!ふっふっふっ・・・・あはっはっはっ!!!!」
黒魔女のマルギットは高らかな笑い声を上げた。
封が施された石壁に左手を置き、今一度確認をする。
「よしっ!これで誰もここに足を踏み入れることはできまい。この部屋さえ見つけられなければ、我は永遠に輪廻を繰り返す」
黒魔女のマルギットはほくそ笑んだ。
「さぁ、では始めるとするかっ!まずは足場を固めるか・・・・」
カツッカツッカツッ・・・・
カツッカツッカツッ・・・・
黒魔女は地下通路を地上へ向けて歩みだした。
ギイィィィ・・・・
パアァ・・・・・
地上への扉を開けると明るい日差しに包まれた。
「暖かい・・・・いつぶりか・・・・この暖かさは・・・・」
100有余年間、冷たく暗い深淵深くに封印されていた魂の復活を身体全体で感じ取る。
黒魔女マルギットは目を閉じ、しばしその暖かさに身を委ねた。
「ふっ!」
己の掌に一つ息を吹きかる。
乗っ取った今世のマルギットの身体の感覚を確かめた。
「いささか・・・・」
100有余年ぶりに得た肉体はいささか重たく感じる。
「まぁ、しばし時を要せば自由になる。焦らずにまいるか・・・・100有余年待ったのだからな」
慣れない肉体をほぐす様に歩み、マルギットは執務室へ向かった。
チリリリリン・・・・
執務室に入るとベルを鳴らす。
トンットンットンッ
「マルギット様、お呼びでございますか」
暫くすると侍従のベルントが執務室の扉を叩いた。
マルギットはベルントの姿を目にすると扇子を顔の前で広げた。
パンッ!!!
「ベルント、近こう寄れ」
「はっ!」
カツッカツッカツッ・・・・
ベルントはマルギットの指示に従い、マルギットが座る執務机の前まで進んだ。
左手を胸にあて頭を下げる。
スッ!
マルギットは立ち上がり、ベルントの左横に立った。
フワリッ・・・・
顔の前に置いていた扇子を一振りする。
サアァ・・・・
ベルントの身体を赤黒い靄が覆った。
「・・・・」
ベルントは左手を胸にあてたまま無言で立ちつくしている。
「・・・・ほぉ、そなた、この靄が見えるのか?」
「・・・・」
マルギットの問いにベルントは無言で返す。
「どうした、ベルント。主の問いに答えぬか。この靄が見えているのか?」
フワリッ・・・・
マルギットは同じ問いと共に今一つ扇子を振った。
「いえ、何も見えません」
ベルントの胸に置かれた左手が小刻みに震えている。
「ふっ・・・・そなた恐ろしいのか?主が恐ろしいと感じているのか?」
フワリッ・・・・
なおも扇子を一振りするとベルントの身体は完全に赤黒い靄で覆われた。
フルフルと身体が震えている。
「なに、恐れずともよい。そなたには今まで以上に我に仕えてもらわねばならぬのでな。離れていても我の言葉が聞え、我の意志に従い、我の思う様に動けるように仕掛をするだけだ。安心致せ。痛みも苦しみもない。少し寒気がするだけだ」
フワリッ・・・・
再び扇子を一振りする。
ブワンッ!!!
赤黒い靄は螺旋状にベルントの身体を巻きこんだ。
マルギットは呪文を唱える。
「赤黒く渦巻く靄に包まれし者、我の手足となり、我に仕えよ。その身滅びる時、その魂は我の物となり、再び新たな肉体に宿る事を許す。その魂、我より離れること叶わず、故に新たな肉体を授ける約定を結ぶ」
ブワンッ!!!
「ふっ!!!」
扇子を一振りし扇子に息を吹き掛けるとベルントを覆った赤黒い靄は消え去った。
カタカタとベルントが震えている。
「どうだ?ベルント。少しの痛みも苦しみもなかったであろう?寒気は暫くすれば収まる。安心致せ。これで、そなたの魂は肉体が滅びようとも新たな肉体を得て過ごす事ができるのだ。死する事がなくなるということだ。永遠にな。うれしかろう?」
マルギットはニヤリとベルントに笑いかける。
「はっ!マルギット様に未来永劫、お仕え致します」
ベルントは力強く宣誓するとマルギットを見上げた。
ベルントの瞳は赤黒く染まっていた。
「さぁ、これでひとまずは片手ができたな。後は・・・・ベーベルか。ベルント、早速だがベーベルを呼んでおくれ。そなたと同じ様に永遠の魂を授けよう」
「はっ!かしこまりました」
ベルントは執務室を後にした。
マルギットは執務机にもたれ掛かり、扇子を口元にあてる。
「ふっ・・・・ふふっ・・・・人は永遠を欲するものだからな・・・・」
マルギットはニヤリと笑った。
徐々に肉体の感覚を取り戻していると感じる。
「さて、次は王都の別邸か・・・・ふむ、まずは我の子らに挨拶をするか・・・・どう動いてくれるか楽しみだな・・・・」
ベルントを赤黒い靄で取り込み、魂の呪縛を手始めと考えていた。
徐々に呪縛の拡大を図り、足場を固めていくのであった。
「我、ここに復活した。我の痕跡をこの場より消し去る。古の黒の陣にて一切のものを寄せ付けぬ封を施す。再びこの扉開くことなし。我の痕跡を永遠に消し去る」
ブウゥン・・・・
ブウゥン・・・・
地下通路の石壁に赤黒い魔法陣が浮きあがった。
ウワンッ!!!
赤黒い光が波紋の様に広がると石壁は完全に塞がれ、そこに部屋があったことすら解らない。
復活した黒魔女マルギットは隠し部屋を完全に封印した。
じっと己の左手を見る。
赤黒い光の珠が乗っている。
「ふうぅぅぅぅ」
石壁に向かい赤黒い光の珠へ息を吹きかかると地下通路全体に赤黒い靄が立ち込めた。
「まぁ、こんなものだな。それにしてもマルギットよ、そなた大した者だな。古の我の時代よりも魔術が容易に使えるではないか。惜しい事をしたな。そなたと融合できていれば王国を手に入れることなど雑作もなかったであろうに・・・・」
黒魔女は忌々し気に石壁を見つめた。
「チッ!あやつがおらねば・・・・あの夫がおれねば愛などと言う愚かなものに惑わされることもなかったであろうに」
ハイノと共に自身の深淵江落ちて行ったマルギットの姿が頭に浮かんだ。
「ふっ!!!!」
勢いよく頭に浮かんだ二人の姿を吹き消す。
「・・・・愛など・・・・未来永劫、変らず傍にいることなどないわっ!助けられず深淵に落ち、戻る事のない闇の中を選んだではないかっ!それが愛などと呼べるのかっ!笑わせるなっ!マルギット、そなたはいずれ選択を誤ったと悟であろう。深淵の中でなっ!ふっふっふっ・・・・あはっはっはっ!!!!」
黒魔女のマルギットは高らかな笑い声を上げた。
封が施された石壁に左手を置き、今一度確認をする。
「よしっ!これで誰もここに足を踏み入れることはできまい。この部屋さえ見つけられなければ、我は永遠に輪廻を繰り返す」
黒魔女のマルギットはほくそ笑んだ。
「さぁ、では始めるとするかっ!まずは足場を固めるか・・・・」
カツッカツッカツッ・・・・
カツッカツッカツッ・・・・
黒魔女は地下通路を地上へ向けて歩みだした。
ギイィィィ・・・・
パアァ・・・・・
地上への扉を開けると明るい日差しに包まれた。
「暖かい・・・・いつぶりか・・・・この暖かさは・・・・」
100有余年間、冷たく暗い深淵深くに封印されていた魂の復活を身体全体で感じ取る。
黒魔女マルギットは目を閉じ、しばしその暖かさに身を委ねた。
「ふっ!」
己の掌に一つ息を吹きかる。
乗っ取った今世のマルギットの身体の感覚を確かめた。
「いささか・・・・」
100有余年ぶりに得た肉体はいささか重たく感じる。
「まぁ、しばし時を要せば自由になる。焦らずにまいるか・・・・100有余年待ったのだからな」
慣れない肉体をほぐす様に歩み、マルギットは執務室へ向かった。
チリリリリン・・・・
執務室に入るとベルを鳴らす。
トンットンットンッ
「マルギット様、お呼びでございますか」
暫くすると侍従のベルントが執務室の扉を叩いた。
マルギットはベルントの姿を目にすると扇子を顔の前で広げた。
パンッ!!!
「ベルント、近こう寄れ」
「はっ!」
カツッカツッカツッ・・・・
ベルントはマルギットの指示に従い、マルギットが座る執務机の前まで進んだ。
左手を胸にあて頭を下げる。
スッ!
マルギットは立ち上がり、ベルントの左横に立った。
フワリッ・・・・
顔の前に置いていた扇子を一振りする。
サアァ・・・・
ベルントの身体を赤黒い靄が覆った。
「・・・・」
ベルントは左手を胸にあてたまま無言で立ちつくしている。
「・・・・ほぉ、そなた、この靄が見えるのか?」
「・・・・」
マルギットの問いにベルントは無言で返す。
「どうした、ベルント。主の問いに答えぬか。この靄が見えているのか?」
フワリッ・・・・
マルギットは同じ問いと共に今一つ扇子を振った。
「いえ、何も見えません」
ベルントの胸に置かれた左手が小刻みに震えている。
「ふっ・・・・そなた恐ろしいのか?主が恐ろしいと感じているのか?」
フワリッ・・・・
なおも扇子を一振りするとベルントの身体は完全に赤黒い靄で覆われた。
フルフルと身体が震えている。
「なに、恐れずともよい。そなたには今まで以上に我に仕えてもらわねばならぬのでな。離れていても我の言葉が聞え、我の意志に従い、我の思う様に動けるように仕掛をするだけだ。安心致せ。痛みも苦しみもない。少し寒気がするだけだ」
フワリッ・・・・
再び扇子を一振りする。
ブワンッ!!!
赤黒い靄は螺旋状にベルントの身体を巻きこんだ。
マルギットは呪文を唱える。
「赤黒く渦巻く靄に包まれし者、我の手足となり、我に仕えよ。その身滅びる時、その魂は我の物となり、再び新たな肉体に宿る事を許す。その魂、我より離れること叶わず、故に新たな肉体を授ける約定を結ぶ」
ブワンッ!!!
「ふっ!!!」
扇子を一振りし扇子に息を吹き掛けるとベルントを覆った赤黒い靄は消え去った。
カタカタとベルントが震えている。
「どうだ?ベルント。少しの痛みも苦しみもなかったであろう?寒気は暫くすれば収まる。安心致せ。これで、そなたの魂は肉体が滅びようとも新たな肉体を得て過ごす事ができるのだ。死する事がなくなるということだ。永遠にな。うれしかろう?」
マルギットはニヤリとベルントに笑いかける。
「はっ!マルギット様に未来永劫、お仕え致します」
ベルントは力強く宣誓するとマルギットを見上げた。
ベルントの瞳は赤黒く染まっていた。
「さぁ、これでひとまずは片手ができたな。後は・・・・ベーベルか。ベルント、早速だがベーベルを呼んでおくれ。そなたと同じ様に永遠の魂を授けよう」
「はっ!かしこまりました」
ベルントは執務室を後にした。
マルギットは執務机にもたれ掛かり、扇子を口元にあてる。
「ふっ・・・・ふふっ・・・・人は永遠を欲するものだからな・・・・」
マルギットはニヤリと笑った。
徐々に肉体の感覚を取り戻していると感じる。
「さて、次は王都の別邸か・・・・ふむ、まずは我の子らに挨拶をするか・・・・どう動いてくれるか楽しみだな・・・・」
ベルントを赤黒い靄で取り込み、魂の呪縛を手始めと考えていた。
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