8 / 100
お姉様攻略編
第8話 お姉様の懺悔
しおりを挟む
お姉様が森で迷った理由。
そしてそれからどうしていたか。
家に帰った後、休息を取ってからそれらを順に訊ね、お姉様はしばらく森に近づくことを禁止された。
お父様とお母様は頭ごなしに怒るのではなく冷静に、それでいてしっかりと叱ったのでお姉様は終始項垂れていたけれど、ミカリエラが無事だったことを耳にすると安堵の表情を浮かべた。よっぽど心配だったんだろう。
しかしミカリエラは両足を骨折しており、そのまま入院することになった。
崖下からお姉様に返事をしていた時はそんな素振りは見せなかったそうだけれど、ずっと痛みに耐え続けていたらしい。
ミカリエラは自分を責めていたけれど、彼女のおかげでお姉様の心細さが軽減されたのだから感謝してるわ。私はそう伝えてミカリエラを抱き締めた。
代わりに信用できる人物としてミカリエラの母親――前メイド長のエイミーが臨時で付き人として採用され、お姉様はそれはもう規則正しい生活を強いられている。
叱られたことよりもこちらの方がよっぽど罰になってる気がするわ……。
そんなエイミーの発案による様々な習い事が忙しい中、お姉様から私に会いにきてくれたのが今日の昼のことだった。
いつもはこちらから会いに行くことばかりだったから、まさかお姉様から来てくれるとは思っていなかった私は両目に加えて口も大きく開いてびっくり仰天した。
ついでに読もうとしていた本をばさりと落としてしまい、お姉様に「そんなゴーストを見たような顔をするのは失礼じゃない!?」と怒られてしまう。
「いえ、真昼間から自分に都合の良い夢を見てしまったなと思って……」
「現実としてすら受け止めていなかったの!? ……まったく、あなたって本当に変な妹だわ」
「ふふ、お姉様に妹だって認識してもらえて嬉しいです。ところで私になにかご用ですか?」
理由もなく私の部屋に来るなんてことはないだろう。
お姉様は目を泳がせて言い淀むと、少し話があるの、とドアを閉めた。
「ふたりだけで話したいからエイミーにお願いして時間を作ってもらったのよ」
「えっ!? お、お姉様が私とふたりだけで……!?」
「今度こそゴーストを見たような顔ね!」
お姉様は呆れ顔で私に勧められるまでもなくイスに座る。
なんというか、前よりも角が取れて表情の幅が広がったというか、ある意味子供らしくなった気がした。うん、お姉様可愛いわ。
そんなことを考えているとお姉様がおずおずと言った。
「聞いたわよ。お父様の家系魔法……影の動物の召喚と、そこに意識を移すことにはリスクがあるのに、あなた躊躇わずに使ったそうね」
「あっ、はい、すみません。それしか思いつかなくて――」
「……ありがとう」
無鉄砲と怒られると思っていた私はお姉様を見つめる。
聞き間違いではなさそうだ。
お姉様も言い慣れていないのか居心地が悪そうな顔で続けた。
「でも、今回のことでよくわかったの。私は誰かにそこまでしてもらっていい人間じゃないわ」
「な、なにを言うんですか! そんなこと……」
「だって私、あなたを殺そうと思ったことがあるのよ」
声を絞り出してお姉様は言う。
あ、知ってます、とは言えない。
しかしここでまったく何も知らないふりをして驚くのもいけない気がした。
自分から告白してくれたお姉様を早く安心させてあげたいというのが本音だ。
私は困った笑みを浮かべつつもお姉様の手を握る。
「……なんとなく、そうじゃないかなって思ってました。けど今はそんなこと思ってないんですよね?」
「ええ、けど――」
「私はそれで十分です。お姉様がどんな人でも私は大好きですよ。だからあの時見つけられて良かった。また家に帰ってきてくれてよかったです」
最初から全部知っていたという真実は話せないけれど、口にしたことは全部本当。
そして今のお姉様にしっかりと私の気持ちを知っていてほしい。
私は、今の家族のまま順風満帆な人生を歩みたいの。
(……そうよ。そのためにも暗殺を阻止するだけでなく、みんなにも幸せになってもらわないといけないんだ)
今のお姉様には私から罰を与える必要はないと思っている。
だから許していることと、今の気持ちを伝えた。
これからも姉妹として、家族として隣にいられるように。
世の中にはこれが逆効果になることもあるだろうけれど――喋り方はしっかりしていてもお姉様はまだ小さな子供。
罰されるほうが楽になるなんてことはなく、私から許されたことで緊張の糸が切れたのか泣きながら謝り始めた。――やっぱり小さな子供だ、と再確認した私はまるで妹をあやすように抱き締めて頭を撫でる。
これから私たちが普通の姉妹として育っていけますように、と願いを込めて。
しばらくそうしているとコンコンと部屋のドアがノックされ、泣き疲れてうとうとしていたお姉様は突然しゃんとした。
目元はまだ少し赤いけれど、鼻を啜るなんてことはなさそうだ。
私が外に向かって「どうぞ」と言うと、部屋に顔を覗かせたのは柔和な笑みを浮かべたお父様だった。
「ウィナがフルーツケーキを焼いたって言っていたからふたりを呼びにきたんだ。でもお邪魔だったかな?」
「いえ! お姉様、一緒におやつにしましょうか」
「う、うん」
ウィナは厨房を任されている料理人だ。
彼の作る料理は普段の食事からデザートまで最高なので逃すことはできない。
それに泣き疲れたお姉様にも甘いものはばっちり効くだろう。
そんな中、メイドに任せず自ら迎えにきてくれた子煩悩なお父様を見上げる。
ふたりの娘を前ににこにこしているお父様。
最長のタイムリミットはお祖父様もお父様も同じ。
最短だとお祖父様の方が早いから、お姉様の件が一件落着した後に優先すべきなのはあちらからだけれど――探りを入れやすいのは断然お父様のほうだった。
お祖父様はもしかすると探られているのに気がつき、私を怪しんで決行を早めてしまうかもしれない。なにせお祖父様の一存で決まることだから。
今はまだ様子を見て、下手に刺激しないようにしつつ地盤を固めておくべきかもしれないわね。
つまり。
(今の状況だと次にどうにかすべきは……お父様)
こんな心の底から家族を愛しているようなお父様が、本当に実の娘を殺そうと考えているのだろうか。
しかも覗き見た手紙にはお父様に対する『見せしめなのだからヘーゼロッテ家により大きな屈辱を与えるべく、初めに一家の中で一番若い者、特に妹という存在を狙うように』という反吐の出るような指示があったのだ。
なんで妹という点を強調しているのかはよくわからないけれど、とにかく一番若いのは私。
同じ実の娘でもメラリァお姉様が狙われなくて良かったと思ったものの、きっとたっぷりと屈辱を与えた後は同じ道を辿らせようとするだろう。
(アロウズお父様……あなたはどんな気持ちで私たちと暮らしているの?)
嫌々暮らしているのか、せせら笑っているのか、苦しんでいるのか。
それとも本当は何も感じずに演技だけを淡々と続けているのか。
そんな疑問を視線に込めて見上げたけれど、お父様がこちらを振り返ることはなかった。
そしてそれからどうしていたか。
家に帰った後、休息を取ってからそれらを順に訊ね、お姉様はしばらく森に近づくことを禁止された。
お父様とお母様は頭ごなしに怒るのではなく冷静に、それでいてしっかりと叱ったのでお姉様は終始項垂れていたけれど、ミカリエラが無事だったことを耳にすると安堵の表情を浮かべた。よっぽど心配だったんだろう。
しかしミカリエラは両足を骨折しており、そのまま入院することになった。
崖下からお姉様に返事をしていた時はそんな素振りは見せなかったそうだけれど、ずっと痛みに耐え続けていたらしい。
ミカリエラは自分を責めていたけれど、彼女のおかげでお姉様の心細さが軽減されたのだから感謝してるわ。私はそう伝えてミカリエラを抱き締めた。
代わりに信用できる人物としてミカリエラの母親――前メイド長のエイミーが臨時で付き人として採用され、お姉様はそれはもう規則正しい生活を強いられている。
叱られたことよりもこちらの方がよっぽど罰になってる気がするわ……。
そんなエイミーの発案による様々な習い事が忙しい中、お姉様から私に会いにきてくれたのが今日の昼のことだった。
いつもはこちらから会いに行くことばかりだったから、まさかお姉様から来てくれるとは思っていなかった私は両目に加えて口も大きく開いてびっくり仰天した。
ついでに読もうとしていた本をばさりと落としてしまい、お姉様に「そんなゴーストを見たような顔をするのは失礼じゃない!?」と怒られてしまう。
「いえ、真昼間から自分に都合の良い夢を見てしまったなと思って……」
「現実としてすら受け止めていなかったの!? ……まったく、あなたって本当に変な妹だわ」
「ふふ、お姉様に妹だって認識してもらえて嬉しいです。ところで私になにかご用ですか?」
理由もなく私の部屋に来るなんてことはないだろう。
お姉様は目を泳がせて言い淀むと、少し話があるの、とドアを閉めた。
「ふたりだけで話したいからエイミーにお願いして時間を作ってもらったのよ」
「えっ!? お、お姉様が私とふたりだけで……!?」
「今度こそゴーストを見たような顔ね!」
お姉様は呆れ顔で私に勧められるまでもなくイスに座る。
なんというか、前よりも角が取れて表情の幅が広がったというか、ある意味子供らしくなった気がした。うん、お姉様可愛いわ。
そんなことを考えているとお姉様がおずおずと言った。
「聞いたわよ。お父様の家系魔法……影の動物の召喚と、そこに意識を移すことにはリスクがあるのに、あなた躊躇わずに使ったそうね」
「あっ、はい、すみません。それしか思いつかなくて――」
「……ありがとう」
無鉄砲と怒られると思っていた私はお姉様を見つめる。
聞き間違いではなさそうだ。
お姉様も言い慣れていないのか居心地が悪そうな顔で続けた。
「でも、今回のことでよくわかったの。私は誰かにそこまでしてもらっていい人間じゃないわ」
「な、なにを言うんですか! そんなこと……」
「だって私、あなたを殺そうと思ったことがあるのよ」
声を絞り出してお姉様は言う。
あ、知ってます、とは言えない。
しかしここでまったく何も知らないふりをして驚くのもいけない気がした。
自分から告白してくれたお姉様を早く安心させてあげたいというのが本音だ。
私は困った笑みを浮かべつつもお姉様の手を握る。
「……なんとなく、そうじゃないかなって思ってました。けど今はそんなこと思ってないんですよね?」
「ええ、けど――」
「私はそれで十分です。お姉様がどんな人でも私は大好きですよ。だからあの時見つけられて良かった。また家に帰ってきてくれてよかったです」
最初から全部知っていたという真実は話せないけれど、口にしたことは全部本当。
そして今のお姉様にしっかりと私の気持ちを知っていてほしい。
私は、今の家族のまま順風満帆な人生を歩みたいの。
(……そうよ。そのためにも暗殺を阻止するだけでなく、みんなにも幸せになってもらわないといけないんだ)
今のお姉様には私から罰を与える必要はないと思っている。
だから許していることと、今の気持ちを伝えた。
これからも姉妹として、家族として隣にいられるように。
世の中にはこれが逆効果になることもあるだろうけれど――喋り方はしっかりしていてもお姉様はまだ小さな子供。
罰されるほうが楽になるなんてことはなく、私から許されたことで緊張の糸が切れたのか泣きながら謝り始めた。――やっぱり小さな子供だ、と再確認した私はまるで妹をあやすように抱き締めて頭を撫でる。
これから私たちが普通の姉妹として育っていけますように、と願いを込めて。
しばらくそうしているとコンコンと部屋のドアがノックされ、泣き疲れてうとうとしていたお姉様は突然しゃんとした。
目元はまだ少し赤いけれど、鼻を啜るなんてことはなさそうだ。
私が外に向かって「どうぞ」と言うと、部屋に顔を覗かせたのは柔和な笑みを浮かべたお父様だった。
「ウィナがフルーツケーキを焼いたって言っていたからふたりを呼びにきたんだ。でもお邪魔だったかな?」
「いえ! お姉様、一緒におやつにしましょうか」
「う、うん」
ウィナは厨房を任されている料理人だ。
彼の作る料理は普段の食事からデザートまで最高なので逃すことはできない。
それに泣き疲れたお姉様にも甘いものはばっちり効くだろう。
そんな中、メイドに任せず自ら迎えにきてくれた子煩悩なお父様を見上げる。
ふたりの娘を前ににこにこしているお父様。
最長のタイムリミットはお祖父様もお父様も同じ。
最短だとお祖父様の方が早いから、お姉様の件が一件落着した後に優先すべきなのはあちらからだけれど――探りを入れやすいのは断然お父様のほうだった。
お祖父様はもしかすると探られているのに気がつき、私を怪しんで決行を早めてしまうかもしれない。なにせお祖父様の一存で決まることだから。
今はまだ様子を見て、下手に刺激しないようにしつつ地盤を固めておくべきかもしれないわね。
つまり。
(今の状況だと次にどうにかすべきは……お父様)
こんな心の底から家族を愛しているようなお父様が、本当に実の娘を殺そうと考えているのだろうか。
しかも覗き見た手紙にはお父様に対する『見せしめなのだからヘーゼロッテ家により大きな屈辱を与えるべく、初めに一家の中で一番若い者、特に妹という存在を狙うように』という反吐の出るような指示があったのだ。
なんで妹という点を強調しているのかはよくわからないけれど、とにかく一番若いのは私。
同じ実の娘でもメラリァお姉様が狙われなくて良かったと思ったものの、きっとたっぷりと屈辱を与えた後は同じ道を辿らせようとするだろう。
(アロウズお父様……あなたはどんな気持ちで私たちと暮らしているの?)
嫌々暮らしているのか、せせら笑っているのか、苦しんでいるのか。
それとも本当は何も感じずに演技だけを淡々と続けているのか。
そんな疑問を視線に込めて見上げたけれど、お父様がこちらを振り返ることはなかった。
12
あなたにおすすめの小説
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!
966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」
最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。
この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。
錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる