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3巻
3-3
「心配かけて、ごめん。でも、ほら、俺も痛い目には遭いたくないからさ、十分気をつけてるんだよ。だから、大丈夫だって!」
そう主張したけれど、それでも二人は疑わしげな眼差しを俺に向けたままだ。
「えーっと? なんでそんな目で見るの?」
「……滅多なことでサフィラス様に何かあるとは思っておりませんが、あまり危ないことはなさらないでくださいませ。それで、もし差し支えなければ、あのような事態になった経緯を教えていただけますか?」
「もちろん」
今後の学院の警備に関わることでもあるし、きちんと話しておく必要はある。
人伝てにパーシヴァルが俺を探してるって聞いたこと、何かあるだろうと思ったので倉庫に向かったこと、倉庫に閉じ込められ襲われそうになったので返り討ちにしたことを話した。
アウローラの手前、下半身を剥き出しにしてやったことについては割愛する。
「それから、あいつらは倉庫の鍵を持っているって言ってた」
つまり、彼らに鍵を渡した誰かがこの学院内にいるということだ。とにかく学院の警備は穴だらけじゃないかなと言えば、その件に関しては今後大きく見直されることになるそうだ。
「サフィラス様を呼び出したお相手に、お心当たりはございますか?」
それは恐らくナイジェルだ。相当俺のことを恨んでいるようだから。だけど確たる証拠もないので、名前を出すのは憚られる。
「えーと、それは……」
「……大体事情はわかりましたわ」
言い淀んでいれば、アウローラは俺の言いたいことを察してくれたようだ。
ともかく、けしからん姿の不審者が見つかったために、翌日から学舎のそこかしこに騎士が立つことになった。特に人気のない場所は警戒が厳しく、迷い猫一匹忍び込めない状態だ。これだけ警戒が厳しくなれば、彼もしばらくはよからぬことを企めないだろう。相変わらず離れた場所から俺を睨みつけてはいるけど、そんな視線なんて痛くも痒くもない。
まぁ、仮に何かを企んでいたとしても無駄に終わるだろうけど。
そんな騒動があって数日後。アデライン夫人からお茶のお誘いがあった。
「場所は母の実家だ。かしこまった茶会ではなく、参加するのは母だけだから気軽に来てほしい」
パーシヴァルが言うには、ベリサリオ家の人間が領地を離れることは滅多にないので、王都に屋敷を持たないのだそうだ。どうしても用事があって王都に来る時はアデライン夫人の実家にお世話になるので、特に不便はないらしい。
「アデライン夫人が辺境に嫁ぐ前はどうしてたの?」
「王城に滞在していたらしい。王家の行事以外で王都に来ることはないからな」
今でこそ使うことはなくなったけれど、いまだにお城に部屋が残されているとか。
ちなみに、アデライン夫人のご実家であるギディングス侯爵家は代々外交を担っていて、今は弟さんが侯爵家と仕事を引き継いでいるそうだ。お父さんはまだまだご健在で、弟さんの相談役をしているという。歴史を遡ると外つ国のお姫様をお嫁さんに迎えたこともあるらしく、なんとも凄い血筋の人であった。
「……パーシヴァルも一緒に行くんだよね?」
「ああ、もちろんだ」
よかった。いくらアデライン夫人のご実家とはいえ、一人で見知らぬ貴族のお屋敷にお邪魔するのはやっぱり緊張する。
お茶会の当日、俺はアデライン夫人にいただいた服を着て、パーシヴァルと共にギディングス侯爵家へと向かった。公爵家ほどではないけれど、かなり立派なお屋敷だ。
感じのいい執事に迎えられ庭園に案内されると、蔦薔薇で美しく彩られたガゼボで寛いだ様子のアデライン夫人が待っていた。
「いらっしゃい、サフィラスさん。待っていましたよ」
「本日は、お招きありがとうございます」
「お洋服、着てくれたのね。嬉しいわ。とてもよく似合っているわよ」
アデライン夫人は真っ先に俺の服を褒めてくれた。
「……色々とお気遣いありがとうございます。俺自身で身の回りのことに気を回せるといいんですけど、どうにもそういうのに疎くて。世間知らずですみません」
いくら気軽に来てくれていいよと言われても、他所様のお城にお邪魔するのに着古してよれよれの服はまずかったよな。旅の準備に抜かりはなかったけど、そこに少しおしゃれな普段着を数着入れておけば、より完璧だった。
「まだ成人前なのですから、できなくて当然ですよ。それよりもサフィラスさんは公爵家の支援を受けているのに、どうして寮のお部屋があの場所なのかしら?」
どうやらアデライン夫人は、俺が第四寮棟で暮らしていることも心配だったようだ。
部屋が下位貴族用のままなのは、俺がただ面倒臭がったせい。誤解があってはいけないので、自分の意思だということはちゃんと言っておかないとね。
「公爵閣下には高位貴族用の寮に移るように言われているんですが、もうあの部屋に落ち着いてしまっていたので。でも、学年が上がる時には移る予定です」
「そうだったのね。それならいいの。それで、普段の生活に不便はないのかしら? 足りないものや困っていることはない?」
次から次へとアデライン夫人から質問が飛んでくる。その全てが俺を心配するものだ。随分と気を遣ってくれるけど、俺はそんなに頼りなく見えているのかな。
「大丈夫です。毎月必要なものを買うお金は十分すぎるほどいただいていますし、大抵のことは自分でできますから」
「……サフィラスさんは、本当にしっかりしているのね」
アデライン夫人が俺の頭をそっと撫でた。ちょっと驚いたけれど、温かいその掌にふっと前世での母親を思い出した。
そういえば、俺の母さんもよくこうして頭を撫でてくれたっけ。些細なことでも、いいことをすれば褒めてくれた。その代わり、悪さをした時はオーガの如く怒られて、ゲンコツだって容赦なく喰らったけどな。
俺は十四で冒険者になってさっさと家を出てしまったから、それきり母さんと会わず終いだったけれど。
「サフィラスさんは今まで誰にも頼らず、なんでも一人でやってきたのでしょうね。それはとても素晴らしいことです。ですが、あなたはまだ成人前なのですから、もっと身近な人を頼っていいのですよ。ソロの冒険者も、時には誰かの力を借りて依頼をこなすこともあるでしょう? それと同じで、誰かに協力を仰ぐことは決して悪いことではないのです。何より、サフィラスさんは将来パーシィとパーティを組むのですから、遠慮せずにパーシィやわたくしたちを頼ってほしいわ」
そう言ってアデライン夫人は微笑んだ。
そのやわらかで優しい笑みが自分に向けられていると思うと、胸の奥がむずむずする。照れるというか恥ずかしいというか、顔にカーッと熱が昇ってなんとも複雑な気持ちだ。中身はもう結構な大人なんだけどな。
何も言えなくなってしまって、助けを求めるようにパーシヴァルに視線を向けたけれど、彼はどういうわけか物凄く真剣な顔をして、ただ頷いていた。
夫人の温かさに触れて、改めて納得した。ペルフェクティオ家の中で、俺は彼らの家族ではなかった。
わかってはいたし、前世を思い出してからは僅かにも期待していなかったから、今さら悲しむこともないけれど。ただ、サフィラスは可哀想だったと思う。
「ベリサリオ家はいつでもサフィラスさんを歓迎いたします。次の長期休暇も必ずヴァンダーウォールにいらしてちょうだい。待っているわ」
「……はい。ありがとうございます」
俺には少しばかり落ち着かない空気のお茶会だったけど、侯爵家の人たちも凄く親切で、決して居心地の悪いものではなかった。
勧められるまま菓子と軽食をいただき、すっかり満腹になって寮に戻った。その日の夕食は案の定食べることができず、パーシヴァルを心配させてしまった。
だってどれもこれも美味しそうで、断れなかったんだもん。
お茶会の翌日、アデライン夫人は王都を発った。ヴァンダーウォールまで転移で送りましょうか? と申し出たけれど、久々に領地を出たので顔を出さなければならないところがあちこちあるんだそうだ。
「まだまだ、根回しが必要ですからね」
そう意気込んでいたけれど、辺境の地はいつ何があるかわからないから、いざという時の協力を頼めるように、縁のある貴族と親睦を深めておく必要があるんだろうな。辺境伯夫人ともなると大変だ。
☆ ☆ ☆
「魔法演技大会? 何それ?」
休憩時間に次の教科の準備をしていた俺は、クラスのまとめ役ライリー・スポッツにもうすぐ魔法演技大会だよな、と声をかけられて首を傾げた。
「そうか、サフィラスは知らないのか。魔法演技大会っていうのは、クラスで代表三名を選出して、学年関係なく魔法の腕前を競い合う大会のことさ。優秀なクラスにはステッラ賞が与えられるんだよ」
なるほど? 剣術大会の魔法版ってことか。確かに貴族の子息、令嬢なら魔力があって当然の世の中だから、魔法を競い合うような大会があるのも頷ける。
「へぇ……で、そのステッラ賞をもらえるといいことがあるの?」
「ステッラ賞を獲った学生には、星の徽章が授けられる。これは俺たち学院生にとって、とっても栄誉なことなんだ」
そういえば制服の襟に星の徽章を着けている学院生がちらほらいたような記憶がある。
ウェリタスの襟にもあった気がするな。ということは一年の時にステッラ賞を獲ったのか。
「毎年、魔法師団や騎士団も見学に来るんだ。そこで魔法の腕を見込まれて、スカウトされる学院生もいる。将来魔法師団を目指す者だったら、当然気合が入る大会だ。それに、星を獲った学生が所属するクラスにはお祝いがあるしね。もちろん、サフィラスは代表の一人になってくれるよな!」
ライリーは、俺が出場を断るとは夢にも思っていないような口振りだ。
だけど、申し訳ないが俺はそのなんとか大会に出るつもりはない。
「ごめん。俺はその大会に出るつもりはないよ」
そう答えるとクラスがざわついた。
みんなも当然俺は断らないと思っていたらしい。
まぁ、俺の魔法の腕前はこのクラスでは誰もが知るところだからな。
「も、もしかして、前に魔力なしって言ったことを根に持っているのか?」
いや、いや、さすがにそんなことはない。一体どれだけ執念深いと思われているんだよ。直接何かをされたわけじゃないのに、ちょっと遠巻きにされただけでいつまでも根に持ったりはしない。
そうじゃなくて、俺が出場しちゃったら折角の魔法大会がちっとも面白くなくなるからだ。
クレアーレの学院生と俺とでは、魔法使いとしての実力に圧倒的な差がある。俺の大会出場を例えるなら、小さな魔鼠をやっつけるのに、竜を召喚するようなものだ。
「そうじゃないよ。そんなことはもう気にしてないって」
「じゃぁ、なんで……」
「その大会はきっと元兄が出るだろ。そこに俺が出たら、なんだか面倒臭いことになりそうだからさ」
「ああ……ウェリタス・ペルフェクティオ先輩かぁ」
その名前が出ると、誰もが納得したように頷いた。
第一学年で星を獲ったウェリタスの評判がどうかは知らないが、今年もきっと代表になるだろう。本当は圧倒的な力の差を見せつけて、ペルフェクティオの面子を潰すこともできるけど。未来ある魔法使いたちが活躍する舞台を邪魔してまですることじゃない。
「大会には出ないけど、助言だったらできるよ」
「助言?」
「そ、大会で星を獲るための助言さ。その魔法演技大会のルールについて、詳しく教えてくれる?」
「僕から説明するより、これを読んだ方が早いかも」
ライリーから渡されたルールブックによると、魔法演技大会はクラスの代表三人が出て魔法を披露するとあるが、ほとんどの代表は個人で演技を見せるそうだ。だけど、どこにも協力して演技をしてはいけないとは記されていない。
なので、俺は一つの提案をした。
「三人で一つの演技をするっていうのはどう?」
「え? 三人で?」
「そう。一人で演技するのも悪くはないけど、折角クラスの代表として出るんだから、三人で力を合わせてみたら? 一人ではできないような魔法も、三人で力を合わせればできちゃったりするんじゃないかな? それで、その三人をクラスで支えるんだ。折角の大会なんだし、みんなで楽しんだ方がよくないかな?」
第一学年の俺たちがステッラ賞を狙っても、星を獲るのは難しいだろう。だから賞を狙うのではなく、魔法を楽しんだらどうかと提案する。
魔法は身を守ったり攻撃したりするだけじゃなくて、誰かを感動させたり笑顔にしたりもできるんだってことを改めて思い出してほしい。
最初こそ渋っていたみんなだけど、俺の考えを伝えたら面白いかもしれないと納得してくれた。何より、三人の代表に全てを任せるのではなくて、自分たちも裏方として大会に関わることに興味を持ってくれたのだ。
大会はひと月後。
既に学院で魔法の基礎を学んでいるから、準備の期間としては十分だ。
その後の話し合いで、自薦の男子二人とみんなで推薦した女子一人に代表が決まった。
なんだか、面白くなってきたぞ。これぞ学生生活なんじゃないか?
「……でさ、俺は個人で魔法を見せるんじゃなくて、三人で協力して演技をしたらどうかって提案したんだ」
その日の夜食時に、今日の出来事を夕食の一品代わりにパーシヴァルに話す。
「なるほど、協力して魔法を作るのか。それは考えたことがなかったな」
「ルールに協力するなとは書いてなかったからね。どうせ俺たち第一学年じゃステッラ賞は狙えないだろうし。だったら、みんなでやった方が楽しいと思ったんだよ」
「サフィラスらしい考え方だな」
「みんなも結構やる気でさ。きっと、いい魔法を披露できると思う」
「そうか。それは大会当日が楽しみだ」
パーシヴァルが太陽の騎士の笑みを浮かべる。その笑顔は相変わらず爽やかで眩しい。
確かにこれはみんなに好かれるよ。惚れちゃうナイジェルの気持ちもわからないでもない。罪な男だな、パーシヴァル!
「……君たちがどんな魔法を見せようと私には関係ないよ。そもそも実力が違いすぎるのだから。私の邪魔さえしなければ好きにしたらいいんじゃないか」
俺がパーシヴァルの微笑みに感動していたら、近くの席の会話が耳に飛び込んできた。随分と突き放した物言いだなと思って視線を向けると、数人のクラスメイトと食事をしているウェリタスがいた。
こんなに近くにいたのに、全く気がつかなかった。うっかり視線が合ってしまって、ウェリタスがあからさまに眉を寄せる。
「……なぜお前はまだ学院にいるんだ?」
「これはペルフェクティオ先輩。お久しぶりです」
「質問に答えろ。最早貴族ではないお前が、なぜここにいるのかと聞いているんだ」
なんだ、ウェリタスは俺が公爵家の支援を受けていると知らなかったのか。伯爵は公爵家のお茶会で起きたことを、ウェリタスに話さなかったんだな。
まぁ、あの伯爵が話すわけないか。
本当は相手にしたくないけど、ここでしつこく絡まれるのも面倒臭いから仕方がないなと口を開きかけた時だ。
「ペルフェクティオ先輩」
ガタリと椅子を鳴らして、パーシヴァルが立ち上がった。
え? どうしたの? と思いながら、俺はパーシヴァルを見上げる。そこにはさっきまでの太陽のような笑顔はない。
「……なんだ?」
「サフィラスは優秀な魔法使いと認められ、ブルームフィールド公爵家の後ろ盾を得て学院に通っているのです」
「優秀な魔法使い? この無能の役立たずが? はっ、何を馬鹿なことを。入学早々問題を起こした魔力なしのそいつが優秀だとは笑わせてくれる。一体どんな薄汚い手を使って公爵家に取り入ったんだ? こんな愚か者を支援するなどと、ブルームフィールド公爵家も全くどうかしている」
大声を出しているわけじゃないけど、この時間は夕食時だから人が多い。こんな誰が聞いているかわからない場で、随分と言っちゃったな。
大体まだその話をしてるだなんて、情報が古すぎる。そんなことだから、自分の家が周囲の貴族からどういう評価を受けているのかわからないんだ。
「ペルフェクティオ先輩。口を慎んだ方がよろしいかと」
「なんだと? 辺境伯の三男如きが偉そうに何を言う」
お前もな。今や落ち目の魔法伯爵家の嫡男が何を言う。
「我がブルームフィールド公爵家がどうかいたしましたか?」
凛とした声が割り込んだ。いつの間にかそこにいたのか、アウローラがにっこりと微笑んでいる。美しい笑みだが、目は全く笑っていない。
「ご機嫌よう、皆様。今、我が公爵家の名が聞こえたようですけれど、なんのお話かしら?」
ほら見ろ。場を弁えなかったせいで、周囲の空気が凍りついたぞ。ウェリタスとテーブルを一緒にしていた人たちも青褪めているじゃないか。
アウローラは扇子を広げると口元をスッと隠す。アウローラの後ろに立っているリリアナの表情も無だ。そりゃ、自分が仕えているお嬢様の家を馬鹿にされたんだから怒って当然。
しかし、ウェリタスは伯爵家嫡男としての勉強を全くしてないんじゃないかな? まぁ、あれが親だし、まともなことを教えられるとも思えないけど。
「……学院の後援奨学金制度は、厳正なる試験を行って合格した方だけが受けられますのよ。サフィラス様はその試験に見事合格なされました。現在、メルキオール王太子殿下は、王国の人材となる若者を育てることに力を入れておりますの。特に、この学院の運営や教育方針について王太子殿下御自ら考え、学院長とよくよく話し合っておられますわ」
アウローラはそこで一度言葉を切り、目をすっと細めた。
「ペルフェクティオ様が学院の後援奨学金制度に対する不信をお持ちでしたら、王太子殿下に直接お聞きになったらよろしいのですよ。日頃より王太子殿下は、忌憚なき意見を学院生の皆様からお聞きしたいと申しております。そのようなお話であれば、きっと真摯に耳を傾けてくださることでしょう。もちろん、我がブルームフィールド公爵家当主であるわたくしの父に尋ねてくださっても結構です」
文句があるなら王太子殿下や公爵閣下に直接言えと言われてしまったウェリタスは、顔を顰めたかと思うと黙って席を立ち上がり、カフェテリアから出ていってしまった。
なんとも居た堪れない空気の中で置いてきぼりにされてしまった彼のクラスメイトは困惑している。
あーあ、トレイも置きっぱなし。自分の使った食器くらい片付けてから行けばいいのに。一体、誰が片付けるんだよ。
「なんかごめん、アウローラ嬢。俺のせいで公爵家が侮辱された。それに、パーシヴァルにも不愉快な思いをさせてしまったな」
ウェリタスは俺のことをとことん見下している。俺は無能だの役立たずだの我が家の恥だのと、伯爵から散々吹き込まれているからだ。ただただ俺を貶めようとして言ったことだったのに、まさかアウローラに聞かれるとは思っていなかっただろう。
伯爵に似ているなら、気位は高くとも度胸はないだろう。アウローラに詰め寄られたウェリタスは、今頃青くなって震えているはずだ。
「いいえ。サフィラス様が謝罪する必要はございませんわ。我がブルームフィールド公爵家の後ろ盾を得ていると、堂々と胸を張ってくださいませ」
すっかりいつもの美少女に戻ったアウローラが扇子をパチンと閉じてにっこりと微笑むと、パーシヴァルは俺の肩をポンポンと叩いた。
「……二人とも、ありがとう」
二人の気遣いがなんだかくすぐったくって背中をむずむずとさせている間に、ウェリタスのクラスメイトたちはいなくなっていた。この場にいづらくなったんだろう。彼らはウェリタスに巻き込まれただけで全くの無関係だったのに。ちょっと気の毒だった。
ちなみに、ウェリタスが置いていったトレイはちゃんと片付けられていた。
☆ ☆ ☆
「攻撃的な激しい魔法は、みんなやると思うんだ。派手で、誰が見てもわかりやすいからね。だからこそ、俺たちが同じことをやってもダメだと思う。折角の演技が埋もれてしまうよ」
どんな演技を見せるのか、この話し合いには時間がかかった。クラスのみんなは炎や雷、風の魔法での演技を見せたがったけれど、きっとその辺りはどのクラスも考えるだろう。
「じゃぁ、どんなのがいいんだ?」
「えーっと、楽しくて素敵なの?」
俺がそう言えば、みんなため息をついた。
なんでだよ! だって、魔法は楽しいものだろ?
「……あ、あの」
意見がまとまらない中、クラスでも大人しい令嬢、ローラがおずおずと手を上げた。みんなが彼女に注目すると、躊躇いながらも制服の隠しから一枚のハンカチーフを取り出した。
「実は私、幼い頃からとても見たいと思っていた景色があるの」
彼女がハンカチーフをひらりと広げると、そこには繊細で美しい刺繍が施されていた。色とりどりの糸で綴られたその刺繍は、妖精と小鳥が楽しそうに舞い踊り、花々が鮮やかに彩りを添えて、所々に金糸で星も描かれていた。女学生たちからは素敵、と声が上がる。モチーフとしては令嬢が好みそうなそれだけど、刺繍の腕前が素晴らしい。
「これはお祖母様が刺繍をしてくださったハンカチーフなのですけど、この刺繍を眺める度に、こんな夢のような世界に行けたらなって思っていたの。だから、その……」
「うん、いいと思うな! 魔法で表現するにはぴったりだと思う!」
俺は一番に賛成の声を上げた。
魔法で作り上げるに相応しい世界だ。何より夢があるし素敵じゃないか。他のクラスが攻撃的な魔法ばかりを披露するのだとしたら、この幻想的な世界観は間違いなく目立てるし、違いが際立つ。
「魔法は想像力が大切なんだよ」
「想像力?」
三人は揃って首を傾げた。
俺は早速クラスの代表である、フロイド・ホールデン、ジョナサン・ストレンジ、ベハティ・マッカトニー嬢に魔法のコツを伝授している。
魔法で大事なのは、もちろん魔力量とその魔力を正確に操ることなんだけど、それと同じく必要なのは想像力。
驚いたことに、みんなそれを知らなかった。想像力は、魔法が発動するまでの時間に大いに関わってくるんだけど。
「例えば絵を描いてくださいって言われたら、みんなは最初に何を描こうかなって考えるだろ。その考えている時間が魔法の発動までにかかる時間だと思ってほしい」
「なるほど?」
「なんとなく、言いたいことはわかったような……」
「……」
三人ともよくわかったようなわからないような顔をしているので、もう少し説明を付け加える。
「じゃぁ、もっと具体的に例を挙げるよ。鳥の絵を描いてくださいって言われたら、とりあえずどんな鳥の絵を描くか考えるだろ? だけど鳥の種類や大きさや色まで指定してもらえたら、どんな鳥を描こうか考えなくてもすぐに描き始められるよね。魔法もそれと一緒なんだ。魔力はいつだって魔法を使う準備ができているけど、使い手のイメージが曖昧だと形になりにくいし、すぐに消えてしまう。魔法で炎を出すとしても、指先ほどの小さな炎から、魔獣を焼き尽くす強力な炎もある。その場に相応しい炎を、どれだけはっきりと正確に想像できるかが大事って話なんだ」
俺は掌の上に、ハンカチに刺繍されていた妖精を水で作り上げた。薄い羽や揺れる長い髪、しなやかな手足や、はためく服までが水で形作られている。
みんながわぁっと小さな歓声を上げる。さすがだなって声も聞こえたけれど、そうじゃないんだな。
「これはみんなにもできるよ」
「いや、無理だろ。そんな難しい魔法はサフィラスだからできるんだ」
「さっき、魔法は想像力だって言っただろ。無理だと思った時点でできなくなっちゃうんだ。確かに最初からこれを作るのは難しいけど、少しずつイメージを固めていけばいいのさ。できるだけ具体的に、細部まで細かく思い浮かべるんだ。それができるようになれば簡単に形作れるようになるし、長い間維持できる。それを訓練しようってこと。じゃぁ、最初は球体から始めようか」
まずは誰でも簡単に想像できる単純な球体から。これは授業でもやった。
この球体の形を少しずつ複雑にしていく。今回は刺繍の見本があるので、頭の中に思い浮かべるのは簡単だ。形を作れるようになったら、今度はその形をどれだけ長く保っていられるか。これは魔力量に関係してくるので、誰でもできるとは言えない。
そこで魔法具の出番だ。杖を使えば楽に魔力を調整できる。
「形は大体、大丈夫そうだね。後は魔力操作だけど、これは杖で補えるから、三人には杖を使ってもらおうと思う」
「……あ、あの、ごめんなさい。私、杖は使えないの」
ベハティ嬢が申し訳なさそうに言った。
彼女はみんなが推薦するだけあって、魔法の腕前はなかなかだけど魔法操作が不安定だ。彼女こそ杖の補助があった方がいいと思うんだけど。
杖を使って何か障害があるような話は特に聞いたことがない。もしかして、俺の杖に関する知識が浅いのかもしれないけれど。素材もただの植物や獣の一部だし。
そんな杖が使えないとはこれいかに?
「えーっと、なんで?」
「その、父が……杖を使う魔法使いは一流ではないからと。使うことを許してくれないの」
ベハティ嬢はとても言い難そうに、杖を使えない理由を口にした。
きっと杖を持って魔法を使う人たちに気を遣ったんだろう。クラスには杖を愛用している人は何人かいる。今回大会に出場するフロイドもその一人だ。もちろん俺もね。まさか杖否定派の魔法使いがいるとは思わなかった。だけど、彼女自身は杖を使うことに否定的ではなさそうだ。
だったら話は簡単。
「君の父上だって、計算をする時は間違いがないように算術盤を使うだろう。穀物商は小麦を重る時に計量天秤を使って、損をしないように正確に重さを量る。魔法使いが魔力を杖で制御するのは、それと同じことだと俺は思うよ。魔力だって無限じゃない。魔力を上手く調整して、合理的に使うことは実践では何より重要になってくる。魔獣と戦っている時に魔力制御が上手くいかず窮地に陥っても、突然魔力が暴走して、誰かを傷つけることになっても、君の父上は助けてはくれない」
そう主張したけれど、それでも二人は疑わしげな眼差しを俺に向けたままだ。
「えーっと? なんでそんな目で見るの?」
「……滅多なことでサフィラス様に何かあるとは思っておりませんが、あまり危ないことはなさらないでくださいませ。それで、もし差し支えなければ、あのような事態になった経緯を教えていただけますか?」
「もちろん」
今後の学院の警備に関わることでもあるし、きちんと話しておく必要はある。
人伝てにパーシヴァルが俺を探してるって聞いたこと、何かあるだろうと思ったので倉庫に向かったこと、倉庫に閉じ込められ襲われそうになったので返り討ちにしたことを話した。
アウローラの手前、下半身を剥き出しにしてやったことについては割愛する。
「それから、あいつらは倉庫の鍵を持っているって言ってた」
つまり、彼らに鍵を渡した誰かがこの学院内にいるということだ。とにかく学院の警備は穴だらけじゃないかなと言えば、その件に関しては今後大きく見直されることになるそうだ。
「サフィラス様を呼び出したお相手に、お心当たりはございますか?」
それは恐らくナイジェルだ。相当俺のことを恨んでいるようだから。だけど確たる証拠もないので、名前を出すのは憚られる。
「えーと、それは……」
「……大体事情はわかりましたわ」
言い淀んでいれば、アウローラは俺の言いたいことを察してくれたようだ。
ともかく、けしからん姿の不審者が見つかったために、翌日から学舎のそこかしこに騎士が立つことになった。特に人気のない場所は警戒が厳しく、迷い猫一匹忍び込めない状態だ。これだけ警戒が厳しくなれば、彼もしばらくはよからぬことを企めないだろう。相変わらず離れた場所から俺を睨みつけてはいるけど、そんな視線なんて痛くも痒くもない。
まぁ、仮に何かを企んでいたとしても無駄に終わるだろうけど。
そんな騒動があって数日後。アデライン夫人からお茶のお誘いがあった。
「場所は母の実家だ。かしこまった茶会ではなく、参加するのは母だけだから気軽に来てほしい」
パーシヴァルが言うには、ベリサリオ家の人間が領地を離れることは滅多にないので、王都に屋敷を持たないのだそうだ。どうしても用事があって王都に来る時はアデライン夫人の実家にお世話になるので、特に不便はないらしい。
「アデライン夫人が辺境に嫁ぐ前はどうしてたの?」
「王城に滞在していたらしい。王家の行事以外で王都に来ることはないからな」
今でこそ使うことはなくなったけれど、いまだにお城に部屋が残されているとか。
ちなみに、アデライン夫人のご実家であるギディングス侯爵家は代々外交を担っていて、今は弟さんが侯爵家と仕事を引き継いでいるそうだ。お父さんはまだまだご健在で、弟さんの相談役をしているという。歴史を遡ると外つ国のお姫様をお嫁さんに迎えたこともあるらしく、なんとも凄い血筋の人であった。
「……パーシヴァルも一緒に行くんだよね?」
「ああ、もちろんだ」
よかった。いくらアデライン夫人のご実家とはいえ、一人で見知らぬ貴族のお屋敷にお邪魔するのはやっぱり緊張する。
お茶会の当日、俺はアデライン夫人にいただいた服を着て、パーシヴァルと共にギディングス侯爵家へと向かった。公爵家ほどではないけれど、かなり立派なお屋敷だ。
感じのいい執事に迎えられ庭園に案内されると、蔦薔薇で美しく彩られたガゼボで寛いだ様子のアデライン夫人が待っていた。
「いらっしゃい、サフィラスさん。待っていましたよ」
「本日は、お招きありがとうございます」
「お洋服、着てくれたのね。嬉しいわ。とてもよく似合っているわよ」
アデライン夫人は真っ先に俺の服を褒めてくれた。
「……色々とお気遣いありがとうございます。俺自身で身の回りのことに気を回せるといいんですけど、どうにもそういうのに疎くて。世間知らずですみません」
いくら気軽に来てくれていいよと言われても、他所様のお城にお邪魔するのに着古してよれよれの服はまずかったよな。旅の準備に抜かりはなかったけど、そこに少しおしゃれな普段着を数着入れておけば、より完璧だった。
「まだ成人前なのですから、できなくて当然ですよ。それよりもサフィラスさんは公爵家の支援を受けているのに、どうして寮のお部屋があの場所なのかしら?」
どうやらアデライン夫人は、俺が第四寮棟で暮らしていることも心配だったようだ。
部屋が下位貴族用のままなのは、俺がただ面倒臭がったせい。誤解があってはいけないので、自分の意思だということはちゃんと言っておかないとね。
「公爵閣下には高位貴族用の寮に移るように言われているんですが、もうあの部屋に落ち着いてしまっていたので。でも、学年が上がる時には移る予定です」
「そうだったのね。それならいいの。それで、普段の生活に不便はないのかしら? 足りないものや困っていることはない?」
次から次へとアデライン夫人から質問が飛んでくる。その全てが俺を心配するものだ。随分と気を遣ってくれるけど、俺はそんなに頼りなく見えているのかな。
「大丈夫です。毎月必要なものを買うお金は十分すぎるほどいただいていますし、大抵のことは自分でできますから」
「……サフィラスさんは、本当にしっかりしているのね」
アデライン夫人が俺の頭をそっと撫でた。ちょっと驚いたけれど、温かいその掌にふっと前世での母親を思い出した。
そういえば、俺の母さんもよくこうして頭を撫でてくれたっけ。些細なことでも、いいことをすれば褒めてくれた。その代わり、悪さをした時はオーガの如く怒られて、ゲンコツだって容赦なく喰らったけどな。
俺は十四で冒険者になってさっさと家を出てしまったから、それきり母さんと会わず終いだったけれど。
「サフィラスさんは今まで誰にも頼らず、なんでも一人でやってきたのでしょうね。それはとても素晴らしいことです。ですが、あなたはまだ成人前なのですから、もっと身近な人を頼っていいのですよ。ソロの冒険者も、時には誰かの力を借りて依頼をこなすこともあるでしょう? それと同じで、誰かに協力を仰ぐことは決して悪いことではないのです。何より、サフィラスさんは将来パーシィとパーティを組むのですから、遠慮せずにパーシィやわたくしたちを頼ってほしいわ」
そう言ってアデライン夫人は微笑んだ。
そのやわらかで優しい笑みが自分に向けられていると思うと、胸の奥がむずむずする。照れるというか恥ずかしいというか、顔にカーッと熱が昇ってなんとも複雑な気持ちだ。中身はもう結構な大人なんだけどな。
何も言えなくなってしまって、助けを求めるようにパーシヴァルに視線を向けたけれど、彼はどういうわけか物凄く真剣な顔をして、ただ頷いていた。
夫人の温かさに触れて、改めて納得した。ペルフェクティオ家の中で、俺は彼らの家族ではなかった。
わかってはいたし、前世を思い出してからは僅かにも期待していなかったから、今さら悲しむこともないけれど。ただ、サフィラスは可哀想だったと思う。
「ベリサリオ家はいつでもサフィラスさんを歓迎いたします。次の長期休暇も必ずヴァンダーウォールにいらしてちょうだい。待っているわ」
「……はい。ありがとうございます」
俺には少しばかり落ち着かない空気のお茶会だったけど、侯爵家の人たちも凄く親切で、決して居心地の悪いものではなかった。
勧められるまま菓子と軽食をいただき、すっかり満腹になって寮に戻った。その日の夕食は案の定食べることができず、パーシヴァルを心配させてしまった。
だってどれもこれも美味しそうで、断れなかったんだもん。
お茶会の翌日、アデライン夫人は王都を発った。ヴァンダーウォールまで転移で送りましょうか? と申し出たけれど、久々に領地を出たので顔を出さなければならないところがあちこちあるんだそうだ。
「まだまだ、根回しが必要ですからね」
そう意気込んでいたけれど、辺境の地はいつ何があるかわからないから、いざという時の協力を頼めるように、縁のある貴族と親睦を深めておく必要があるんだろうな。辺境伯夫人ともなると大変だ。
☆ ☆ ☆
「魔法演技大会? 何それ?」
休憩時間に次の教科の準備をしていた俺は、クラスのまとめ役ライリー・スポッツにもうすぐ魔法演技大会だよな、と声をかけられて首を傾げた。
「そうか、サフィラスは知らないのか。魔法演技大会っていうのは、クラスで代表三名を選出して、学年関係なく魔法の腕前を競い合う大会のことさ。優秀なクラスにはステッラ賞が与えられるんだよ」
なるほど? 剣術大会の魔法版ってことか。確かに貴族の子息、令嬢なら魔力があって当然の世の中だから、魔法を競い合うような大会があるのも頷ける。
「へぇ……で、そのステッラ賞をもらえるといいことがあるの?」
「ステッラ賞を獲った学生には、星の徽章が授けられる。これは俺たち学院生にとって、とっても栄誉なことなんだ」
そういえば制服の襟に星の徽章を着けている学院生がちらほらいたような記憶がある。
ウェリタスの襟にもあった気がするな。ということは一年の時にステッラ賞を獲ったのか。
「毎年、魔法師団や騎士団も見学に来るんだ。そこで魔法の腕を見込まれて、スカウトされる学院生もいる。将来魔法師団を目指す者だったら、当然気合が入る大会だ。それに、星を獲った学生が所属するクラスにはお祝いがあるしね。もちろん、サフィラスは代表の一人になってくれるよな!」
ライリーは、俺が出場を断るとは夢にも思っていないような口振りだ。
だけど、申し訳ないが俺はそのなんとか大会に出るつもりはない。
「ごめん。俺はその大会に出るつもりはないよ」
そう答えるとクラスがざわついた。
みんなも当然俺は断らないと思っていたらしい。
まぁ、俺の魔法の腕前はこのクラスでは誰もが知るところだからな。
「も、もしかして、前に魔力なしって言ったことを根に持っているのか?」
いや、いや、さすがにそんなことはない。一体どれだけ執念深いと思われているんだよ。直接何かをされたわけじゃないのに、ちょっと遠巻きにされただけでいつまでも根に持ったりはしない。
そうじゃなくて、俺が出場しちゃったら折角の魔法大会がちっとも面白くなくなるからだ。
クレアーレの学院生と俺とでは、魔法使いとしての実力に圧倒的な差がある。俺の大会出場を例えるなら、小さな魔鼠をやっつけるのに、竜を召喚するようなものだ。
「そうじゃないよ。そんなことはもう気にしてないって」
「じゃぁ、なんで……」
「その大会はきっと元兄が出るだろ。そこに俺が出たら、なんだか面倒臭いことになりそうだからさ」
「ああ……ウェリタス・ペルフェクティオ先輩かぁ」
その名前が出ると、誰もが納得したように頷いた。
第一学年で星を獲ったウェリタスの評判がどうかは知らないが、今年もきっと代表になるだろう。本当は圧倒的な力の差を見せつけて、ペルフェクティオの面子を潰すこともできるけど。未来ある魔法使いたちが活躍する舞台を邪魔してまですることじゃない。
「大会には出ないけど、助言だったらできるよ」
「助言?」
「そ、大会で星を獲るための助言さ。その魔法演技大会のルールについて、詳しく教えてくれる?」
「僕から説明するより、これを読んだ方が早いかも」
ライリーから渡されたルールブックによると、魔法演技大会はクラスの代表三人が出て魔法を披露するとあるが、ほとんどの代表は個人で演技を見せるそうだ。だけど、どこにも協力して演技をしてはいけないとは記されていない。
なので、俺は一つの提案をした。
「三人で一つの演技をするっていうのはどう?」
「え? 三人で?」
「そう。一人で演技するのも悪くはないけど、折角クラスの代表として出るんだから、三人で力を合わせてみたら? 一人ではできないような魔法も、三人で力を合わせればできちゃったりするんじゃないかな? それで、その三人をクラスで支えるんだ。折角の大会なんだし、みんなで楽しんだ方がよくないかな?」
第一学年の俺たちがステッラ賞を狙っても、星を獲るのは難しいだろう。だから賞を狙うのではなく、魔法を楽しんだらどうかと提案する。
魔法は身を守ったり攻撃したりするだけじゃなくて、誰かを感動させたり笑顔にしたりもできるんだってことを改めて思い出してほしい。
最初こそ渋っていたみんなだけど、俺の考えを伝えたら面白いかもしれないと納得してくれた。何より、三人の代表に全てを任せるのではなくて、自分たちも裏方として大会に関わることに興味を持ってくれたのだ。
大会はひと月後。
既に学院で魔法の基礎を学んでいるから、準備の期間としては十分だ。
その後の話し合いで、自薦の男子二人とみんなで推薦した女子一人に代表が決まった。
なんだか、面白くなってきたぞ。これぞ学生生活なんじゃないか?
「……でさ、俺は個人で魔法を見せるんじゃなくて、三人で協力して演技をしたらどうかって提案したんだ」
その日の夜食時に、今日の出来事を夕食の一品代わりにパーシヴァルに話す。
「なるほど、協力して魔法を作るのか。それは考えたことがなかったな」
「ルールに協力するなとは書いてなかったからね。どうせ俺たち第一学年じゃステッラ賞は狙えないだろうし。だったら、みんなでやった方が楽しいと思ったんだよ」
「サフィラスらしい考え方だな」
「みんなも結構やる気でさ。きっと、いい魔法を披露できると思う」
「そうか。それは大会当日が楽しみだ」
パーシヴァルが太陽の騎士の笑みを浮かべる。その笑顔は相変わらず爽やかで眩しい。
確かにこれはみんなに好かれるよ。惚れちゃうナイジェルの気持ちもわからないでもない。罪な男だな、パーシヴァル!
「……君たちがどんな魔法を見せようと私には関係ないよ。そもそも実力が違いすぎるのだから。私の邪魔さえしなければ好きにしたらいいんじゃないか」
俺がパーシヴァルの微笑みに感動していたら、近くの席の会話が耳に飛び込んできた。随分と突き放した物言いだなと思って視線を向けると、数人のクラスメイトと食事をしているウェリタスがいた。
こんなに近くにいたのに、全く気がつかなかった。うっかり視線が合ってしまって、ウェリタスがあからさまに眉を寄せる。
「……なぜお前はまだ学院にいるんだ?」
「これはペルフェクティオ先輩。お久しぶりです」
「質問に答えろ。最早貴族ではないお前が、なぜここにいるのかと聞いているんだ」
なんだ、ウェリタスは俺が公爵家の支援を受けていると知らなかったのか。伯爵は公爵家のお茶会で起きたことを、ウェリタスに話さなかったんだな。
まぁ、あの伯爵が話すわけないか。
本当は相手にしたくないけど、ここでしつこく絡まれるのも面倒臭いから仕方がないなと口を開きかけた時だ。
「ペルフェクティオ先輩」
ガタリと椅子を鳴らして、パーシヴァルが立ち上がった。
え? どうしたの? と思いながら、俺はパーシヴァルを見上げる。そこにはさっきまでの太陽のような笑顔はない。
「……なんだ?」
「サフィラスは優秀な魔法使いと認められ、ブルームフィールド公爵家の後ろ盾を得て学院に通っているのです」
「優秀な魔法使い? この無能の役立たずが? はっ、何を馬鹿なことを。入学早々問題を起こした魔力なしのそいつが優秀だとは笑わせてくれる。一体どんな薄汚い手を使って公爵家に取り入ったんだ? こんな愚か者を支援するなどと、ブルームフィールド公爵家も全くどうかしている」
大声を出しているわけじゃないけど、この時間は夕食時だから人が多い。こんな誰が聞いているかわからない場で、随分と言っちゃったな。
大体まだその話をしてるだなんて、情報が古すぎる。そんなことだから、自分の家が周囲の貴族からどういう評価を受けているのかわからないんだ。
「ペルフェクティオ先輩。口を慎んだ方がよろしいかと」
「なんだと? 辺境伯の三男如きが偉そうに何を言う」
お前もな。今や落ち目の魔法伯爵家の嫡男が何を言う。
「我がブルームフィールド公爵家がどうかいたしましたか?」
凛とした声が割り込んだ。いつの間にかそこにいたのか、アウローラがにっこりと微笑んでいる。美しい笑みだが、目は全く笑っていない。
「ご機嫌よう、皆様。今、我が公爵家の名が聞こえたようですけれど、なんのお話かしら?」
ほら見ろ。場を弁えなかったせいで、周囲の空気が凍りついたぞ。ウェリタスとテーブルを一緒にしていた人たちも青褪めているじゃないか。
アウローラは扇子を広げると口元をスッと隠す。アウローラの後ろに立っているリリアナの表情も無だ。そりゃ、自分が仕えているお嬢様の家を馬鹿にされたんだから怒って当然。
しかし、ウェリタスは伯爵家嫡男としての勉強を全くしてないんじゃないかな? まぁ、あれが親だし、まともなことを教えられるとも思えないけど。
「……学院の後援奨学金制度は、厳正なる試験を行って合格した方だけが受けられますのよ。サフィラス様はその試験に見事合格なされました。現在、メルキオール王太子殿下は、王国の人材となる若者を育てることに力を入れておりますの。特に、この学院の運営や教育方針について王太子殿下御自ら考え、学院長とよくよく話し合っておられますわ」
アウローラはそこで一度言葉を切り、目をすっと細めた。
「ペルフェクティオ様が学院の後援奨学金制度に対する不信をお持ちでしたら、王太子殿下に直接お聞きになったらよろしいのですよ。日頃より王太子殿下は、忌憚なき意見を学院生の皆様からお聞きしたいと申しております。そのようなお話であれば、きっと真摯に耳を傾けてくださることでしょう。もちろん、我がブルームフィールド公爵家当主であるわたくしの父に尋ねてくださっても結構です」
文句があるなら王太子殿下や公爵閣下に直接言えと言われてしまったウェリタスは、顔を顰めたかと思うと黙って席を立ち上がり、カフェテリアから出ていってしまった。
なんとも居た堪れない空気の中で置いてきぼりにされてしまった彼のクラスメイトは困惑している。
あーあ、トレイも置きっぱなし。自分の使った食器くらい片付けてから行けばいいのに。一体、誰が片付けるんだよ。
「なんかごめん、アウローラ嬢。俺のせいで公爵家が侮辱された。それに、パーシヴァルにも不愉快な思いをさせてしまったな」
ウェリタスは俺のことをとことん見下している。俺は無能だの役立たずだの我が家の恥だのと、伯爵から散々吹き込まれているからだ。ただただ俺を貶めようとして言ったことだったのに、まさかアウローラに聞かれるとは思っていなかっただろう。
伯爵に似ているなら、気位は高くとも度胸はないだろう。アウローラに詰め寄られたウェリタスは、今頃青くなって震えているはずだ。
「いいえ。サフィラス様が謝罪する必要はございませんわ。我がブルームフィールド公爵家の後ろ盾を得ていると、堂々と胸を張ってくださいませ」
すっかりいつもの美少女に戻ったアウローラが扇子をパチンと閉じてにっこりと微笑むと、パーシヴァルは俺の肩をポンポンと叩いた。
「……二人とも、ありがとう」
二人の気遣いがなんだかくすぐったくって背中をむずむずとさせている間に、ウェリタスのクラスメイトたちはいなくなっていた。この場にいづらくなったんだろう。彼らはウェリタスに巻き込まれただけで全くの無関係だったのに。ちょっと気の毒だった。
ちなみに、ウェリタスが置いていったトレイはちゃんと片付けられていた。
☆ ☆ ☆
「攻撃的な激しい魔法は、みんなやると思うんだ。派手で、誰が見てもわかりやすいからね。だからこそ、俺たちが同じことをやってもダメだと思う。折角の演技が埋もれてしまうよ」
どんな演技を見せるのか、この話し合いには時間がかかった。クラスのみんなは炎や雷、風の魔法での演技を見せたがったけれど、きっとその辺りはどのクラスも考えるだろう。
「じゃぁ、どんなのがいいんだ?」
「えーっと、楽しくて素敵なの?」
俺がそう言えば、みんなため息をついた。
なんでだよ! だって、魔法は楽しいものだろ?
「……あ、あの」
意見がまとまらない中、クラスでも大人しい令嬢、ローラがおずおずと手を上げた。みんなが彼女に注目すると、躊躇いながらも制服の隠しから一枚のハンカチーフを取り出した。
「実は私、幼い頃からとても見たいと思っていた景色があるの」
彼女がハンカチーフをひらりと広げると、そこには繊細で美しい刺繍が施されていた。色とりどりの糸で綴られたその刺繍は、妖精と小鳥が楽しそうに舞い踊り、花々が鮮やかに彩りを添えて、所々に金糸で星も描かれていた。女学生たちからは素敵、と声が上がる。モチーフとしては令嬢が好みそうなそれだけど、刺繍の腕前が素晴らしい。
「これはお祖母様が刺繍をしてくださったハンカチーフなのですけど、この刺繍を眺める度に、こんな夢のような世界に行けたらなって思っていたの。だから、その……」
「うん、いいと思うな! 魔法で表現するにはぴったりだと思う!」
俺は一番に賛成の声を上げた。
魔法で作り上げるに相応しい世界だ。何より夢があるし素敵じゃないか。他のクラスが攻撃的な魔法ばかりを披露するのだとしたら、この幻想的な世界観は間違いなく目立てるし、違いが際立つ。
「魔法は想像力が大切なんだよ」
「想像力?」
三人は揃って首を傾げた。
俺は早速クラスの代表である、フロイド・ホールデン、ジョナサン・ストレンジ、ベハティ・マッカトニー嬢に魔法のコツを伝授している。
魔法で大事なのは、もちろん魔力量とその魔力を正確に操ることなんだけど、それと同じく必要なのは想像力。
驚いたことに、みんなそれを知らなかった。想像力は、魔法が発動するまでの時間に大いに関わってくるんだけど。
「例えば絵を描いてくださいって言われたら、みんなは最初に何を描こうかなって考えるだろ。その考えている時間が魔法の発動までにかかる時間だと思ってほしい」
「なるほど?」
「なんとなく、言いたいことはわかったような……」
「……」
三人ともよくわかったようなわからないような顔をしているので、もう少し説明を付け加える。
「じゃぁ、もっと具体的に例を挙げるよ。鳥の絵を描いてくださいって言われたら、とりあえずどんな鳥の絵を描くか考えるだろ? だけど鳥の種類や大きさや色まで指定してもらえたら、どんな鳥を描こうか考えなくてもすぐに描き始められるよね。魔法もそれと一緒なんだ。魔力はいつだって魔法を使う準備ができているけど、使い手のイメージが曖昧だと形になりにくいし、すぐに消えてしまう。魔法で炎を出すとしても、指先ほどの小さな炎から、魔獣を焼き尽くす強力な炎もある。その場に相応しい炎を、どれだけはっきりと正確に想像できるかが大事って話なんだ」
俺は掌の上に、ハンカチに刺繍されていた妖精を水で作り上げた。薄い羽や揺れる長い髪、しなやかな手足や、はためく服までが水で形作られている。
みんながわぁっと小さな歓声を上げる。さすがだなって声も聞こえたけれど、そうじゃないんだな。
「これはみんなにもできるよ」
「いや、無理だろ。そんな難しい魔法はサフィラスだからできるんだ」
「さっき、魔法は想像力だって言っただろ。無理だと思った時点でできなくなっちゃうんだ。確かに最初からこれを作るのは難しいけど、少しずつイメージを固めていけばいいのさ。できるだけ具体的に、細部まで細かく思い浮かべるんだ。それができるようになれば簡単に形作れるようになるし、長い間維持できる。それを訓練しようってこと。じゃぁ、最初は球体から始めようか」
まずは誰でも簡単に想像できる単純な球体から。これは授業でもやった。
この球体の形を少しずつ複雑にしていく。今回は刺繍の見本があるので、頭の中に思い浮かべるのは簡単だ。形を作れるようになったら、今度はその形をどれだけ長く保っていられるか。これは魔力量に関係してくるので、誰でもできるとは言えない。
そこで魔法具の出番だ。杖を使えば楽に魔力を調整できる。
「形は大体、大丈夫そうだね。後は魔力操作だけど、これは杖で補えるから、三人には杖を使ってもらおうと思う」
「……あ、あの、ごめんなさい。私、杖は使えないの」
ベハティ嬢が申し訳なさそうに言った。
彼女はみんなが推薦するだけあって、魔法の腕前はなかなかだけど魔法操作が不安定だ。彼女こそ杖の補助があった方がいいと思うんだけど。
杖を使って何か障害があるような話は特に聞いたことがない。もしかして、俺の杖に関する知識が浅いのかもしれないけれど。素材もただの植物や獣の一部だし。
そんな杖が使えないとはこれいかに?
「えーっと、なんで?」
「その、父が……杖を使う魔法使いは一流ではないからと。使うことを許してくれないの」
ベハティ嬢はとても言い難そうに、杖を使えない理由を口にした。
きっと杖を持って魔法を使う人たちに気を遣ったんだろう。クラスには杖を愛用している人は何人かいる。今回大会に出場するフロイドもその一人だ。もちろん俺もね。まさか杖否定派の魔法使いがいるとは思わなかった。だけど、彼女自身は杖を使うことに否定的ではなさそうだ。
だったら話は簡単。
「君の父上だって、計算をする時は間違いがないように算術盤を使うだろう。穀物商は小麦を重る時に計量天秤を使って、損をしないように正確に重さを量る。魔法使いが魔力を杖で制御するのは、それと同じことだと俺は思うよ。魔力だって無限じゃない。魔力を上手く調整して、合理的に使うことは実践では何より重要になってくる。魔獣と戦っている時に魔力制御が上手くいかず窮地に陥っても、突然魔力が暴走して、誰かを傷つけることになっても、君の父上は助けてはくれない」
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