地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

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第三章 自分のこと、これからのこと

38.私のお気に入りの場所

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 二人で軽く飲んでから、早めに店を出る。
 氷室さんは何処に連れて行かれるのかと不安だったみたいだけど、別に大したところに行くつもりもなくて。
 私にとってはいつも通りで、普通の選択だったんだけど……。

「付き合うとは言ったが、まさか……」
「はい、カラオケです。落ち込んだ時とか一人で歌ったりするんですけど……」

 氷室さんが躊躇して固まってる。
 苦手だったのかな? 確かにカラオケのイメージは全くない。

「本気で無理って人もいますし、だったら気にしないでください。私は歌って帰るので」
「いや……学生の頃に来たことはある。君が歌うのを聞くのは構わない」
「良かった。じゃあ、行きましょう」

 週末のせいで賑わってはいるけど、お部屋は開いてたから良かった。
 受付をしている間にも、氷室さんは身長も高いせいかとても目立つ。
 さっきの飲み屋でもそうだけど、キリっとしていてクールな印象だから社長とは別の意味で目をひく。

「どうやら私は場違いな気がするな。随分とぶしつけに見られている気がする」

 氷室さんもすれ違う人にやたらと見られていることには気付いていたみたい。

「目立ちますよ。背も凄く高いし、我が社の氷の王子様ですから」
「その呼び名はやめてほしいのだが」

 氷室さんが眉間に皺を寄せて嫌がるから、クスリとしてしまう。
 二〇七番の部屋に入ると、二人にしては少し広い部屋でゆったりと座れそうだった。

「じゃあ、早速ガンガン歌っていきますよー! 氷室さんは?」
「私のことは気にしないでいい」
「そうですか? でも、折角だから少しは歌ってくれると嬉しいです」

 私がお願いしても微妙な表情なので、歌うことが苦手なのかカラオケという場所が苦手なのかは分からないけど……とにかく甘えさせてもらうことにする。

 声はどちらかと言うと高いほうだから低すぎる曲は歌えない。
 歌は何でも好きだけど、やっぱり楽しい曲が好きだ。
 ノリが良くて、高音がガツンと伸びるようなタイプの曲は良く歌う。

 一発目に声を出して思いっきり歌ったら、氷室さんを驚かせてしまった。
 今日は特にもやもやとしていたから、余計に大きな声で歌いたい気分だったんだけど……。
 それでも、私が歌い終えると氷室さんがパチパチと拍手してくれた。

「何というか……見た目とのギャップが凄いな。しっとりと歌い上げるタイプなのかと思ったが」
「それ良く言われるんですけどね。見た目は地味だけど歌は派手めの方が得意です。バラードも嫌いじゃないですけどね」

 何だか褒めてもらうと嬉しい。
 さすがに氷室さんが暇になってしまいそうだから、お酒と食べ物も頼むことにする。
 飲み放題にしたし、私は氷室さんが帰った後もフリータイムで歌っちゃうつもりだし。

 カラオケだからさっきのお店みたいにオシャレなお酒は出てこないけど、ビールはあるから二人分頼んでおく。
 ワインしか飲まないか確認したら、ビールも飲めるみたいだから安心した。

 カラオケで食べると言ったら定番の唐揚げとポテトも頼んだし、楽しく過ごせそう!
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