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海藻バース 名家の坊ちゃんは癇癪持ち<攻め視点>
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今日も喉が渇いて仕方がない。
それが海藻として生きる者の運命だとしても、俺にとってはちっとも嬉しくない。
終わらない乾きは俺を常にイラつかせる。
そこへ毎日飽きるほど繰り返す、俺と従者の言い争いの一日が始まる訳だ。
「坊ちゃん、お着換えのお手伝いをいたします」
「いつもしなくていいって言ってるだろ! いつになったら理解するんだ!」
「お着換えも私の仕事です。私にお任せいただければ、すぐにご準備を……」
「いい。自分でできる。いいから、下がれ!」
俺がキッパリ断ると、従者は一歩引き下がる。
ただ、甲冑の奥で坊ちゃんはワガママだとか余計なことを言い続けてるのがまた腹立たしい。
全身甲冑のせいで従者の表情は全く見えないが、子どもの頃からの長い付き合いのせいか動きや話し方で見えない表情は想像できる。
コイツは今、俺のせいで自分の仕事ができないと思って不服なんだろう。
「坊ちゃんはいつも私の仕事を奪って楽しいですか?」
「断ってるのは俺の身体へ触れる行為だけだろう。他はガチャガチャ言わせながら無理やり割り込んでくるじゃないか」
「私はもっと坊ちゃんのお役に立ちたいだけです」
「肝心なところだけでいい。俺はもうガキじゃない」
冷たくあしらっても、コイツはめげずに食いついてくる。
もう少し若い頃は、今よりも更に乾きが酷くてどうしようもないイライラは全てコイツにぶつけていた。
思い切り蹴飛ばしたこともあったし、部屋の物を投げつけたこともあった。
俺が暴れたせいで二人とも二階から庭へ落下した時は、コイツが俺を庇って下敷きになった。
コイツの甲冑のおかげで俺はケガしなかったが、俺のせいで従者は命が危なかったらしい。
あの時はさすがの俺も焦った。
「坊ちゃんのお相手の方は、名家の方ですから。望み通りの方でしょうね」
「物静かで可愛くて、俺に従順なヤツなんだろうな?」
「坊ちゃん、運命の海水の方に乱暴しないでくださいよ? あぁ……心配です」
ショックを受けたようなポーズを取られるのが腹立たしいが、コイツの心配性は度を越している気がしているのは気づいていた。
コイツは自分のことは二の次で、いつも俺のことしか考えていない。
「そうだな。お前みたいに頑丈じゃないだろうから、大切に可愛がってやらないとな」
「……坊ちゃんが言うと恐ろしいのですが」
「俺は優しいだろうが」
「坊ちゃんが思うよりも更に優しくして差し上げてくださいね」
従者の声は、普段よりも優しさと寂しさが滲んでいる。
俺に相手ができることはコイツにとって喜ばしいことではないらしい。
俺から解放されて喜ぶものかと思っていたのに、責任感が強いヤツだ。
「お前に言われるまでもない。俺だけの海水を大切にしない訳がないだろう」
「いくら坊ちゃんでもそれはそうですよね。安心しました」
そういえば昔、子どもの頃に高熱を出して寝込んだ時に一度だけコイツの肌に触れたことがあった。
苦しそうな俺の手を握ってくれたことがあったが、その時の体温と微かに嗅いだ香りが俺の病状を落ち着かせた。
あの香りは一体何だったのか?
朧げな記憶で自信がないが、いつかコイツの甲冑を剥げば謎が明らかになるかもしれない。
おしまい
それが海藻として生きる者の運命だとしても、俺にとってはちっとも嬉しくない。
終わらない乾きは俺を常にイラつかせる。
そこへ毎日飽きるほど繰り返す、俺と従者の言い争いの一日が始まる訳だ。
「坊ちゃん、お着換えのお手伝いをいたします」
「いつもしなくていいって言ってるだろ! いつになったら理解するんだ!」
「お着換えも私の仕事です。私にお任せいただければ、すぐにご準備を……」
「いい。自分でできる。いいから、下がれ!」
俺がキッパリ断ると、従者は一歩引き下がる。
ただ、甲冑の奥で坊ちゃんはワガママだとか余計なことを言い続けてるのがまた腹立たしい。
全身甲冑のせいで従者の表情は全く見えないが、子どもの頃からの長い付き合いのせいか動きや話し方で見えない表情は想像できる。
コイツは今、俺のせいで自分の仕事ができないと思って不服なんだろう。
「坊ちゃんはいつも私の仕事を奪って楽しいですか?」
「断ってるのは俺の身体へ触れる行為だけだろう。他はガチャガチャ言わせながら無理やり割り込んでくるじゃないか」
「私はもっと坊ちゃんのお役に立ちたいだけです」
「肝心なところだけでいい。俺はもうガキじゃない」
冷たくあしらっても、コイツはめげずに食いついてくる。
もう少し若い頃は、今よりも更に乾きが酷くてどうしようもないイライラは全てコイツにぶつけていた。
思い切り蹴飛ばしたこともあったし、部屋の物を投げつけたこともあった。
俺が暴れたせいで二人とも二階から庭へ落下した時は、コイツが俺を庇って下敷きになった。
コイツの甲冑のおかげで俺はケガしなかったが、俺のせいで従者は命が危なかったらしい。
あの時はさすがの俺も焦った。
「坊ちゃんのお相手の方は、名家の方ですから。望み通りの方でしょうね」
「物静かで可愛くて、俺に従順なヤツなんだろうな?」
「坊ちゃん、運命の海水の方に乱暴しないでくださいよ? あぁ……心配です」
ショックを受けたようなポーズを取られるのが腹立たしいが、コイツの心配性は度を越している気がしているのは気づいていた。
コイツは自分のことは二の次で、いつも俺のことしか考えていない。
「そうだな。お前みたいに頑丈じゃないだろうから、大切に可愛がってやらないとな」
「……坊ちゃんが言うと恐ろしいのですが」
「俺は優しいだろうが」
「坊ちゃんが思うよりも更に優しくして差し上げてくださいね」
従者の声は、普段よりも優しさと寂しさが滲んでいる。
俺に相手ができることはコイツにとって喜ばしいことではないらしい。
俺から解放されて喜ぶものかと思っていたのに、責任感が強いヤツだ。
「お前に言われるまでもない。俺だけの海水を大切にしない訳がないだろう」
「いくら坊ちゃんでもそれはそうですよね。安心しました」
そういえば昔、子どもの頃に高熱を出して寝込んだ時に一度だけコイツの肌に触れたことがあった。
苦しそうな俺の手を握ってくれたことがあったが、その時の体温と微かに嗅いだ香りが俺の病状を落ち着かせた。
あの香りは一体何だったのか?
朧げな記憶で自信がないが、いつかコイツの甲冑を剥げば謎が明らかになるかもしれない。
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