めーぷる詰め合わせ<SS&短編集>

楓乃めーぷる

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☆ぺにふぇん

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 ペニフェンとは……この世界に伝わる聖なる決闘である。
 互いの人的被害を最も少なく戦いを決着させることを目的とし、ペニ・ヌ神の御心のままに互いの魂をぶつけ合う。
 戦いの先頭に立つものは、ペニフェンを極めし者がなるべしと広く伝えられている。

 +++

「団長ー!」
「隊長ー!」

 ここは争い合う国同士の国境付近。
 蒼の国と紅の国は長年の戦争で疲弊しきっていた。互いの国の長は、この世界に伝わる最も神聖な決闘方法であるペニフェンで決着をつけることにした。

 蒼の国代表は、巧みな技と知識を用いて戦場を混乱させる神出鬼没な蒼の国の誇る傭兵団隊長。
 一方紅の国代表は、その体躯は遠くからでも目立つ大男。戦場を血で染める筋骨隆々の騎士団長。
 この二人は力と技で長年戦い続けた好敵手だ。
 
「準備はいいか? 筋肉野郎」
「望むところだ、今日こそ逃げるなよ」

 大勢の部下に囲まれる中、荒廃した大地に一陣の風が巻き起こる。
 決闘の見守り人である神官がペニ・ヌ神からの授かりものとされる神聖な食べ物、長い棒状のビスキュを対峙し合う二人の前で掲げて見せた。
 二人はにらみ合い互いに端と端を咥えると、下半身から己の魂を取り出す。

「見ろ! 団長の黒きエクスカリパーだ! なんて太さだ……っ!」
「いや、ウチの隊長のゲイ・ポルクの長さはとんでもないぜ!」
 
 部下たちの励ましを背に、二人は両手を頭の後ろへ回して組むと牽制するように睨み合う。
 そして、互いの距離を確かめながら少しずつビスキュを食べ進め始めた。
 
 この決闘では、ペニ・ヌ神の授かりものを互いの体内に全て収めることが第一だ。
 途中で口を離すことは言語道断。
 万が一口を離すようなことがあれば神の与えしものを粗末にした愚か者となり、その時点で敗北決定だ。
 そして、食べ進めながら距離を縮め互いの魂と魂をぶつけ合うことによって神に認められし戦士がどちらなのかを決める。
 優れた戦士は神を喜ばせる聖なる白き水を噴出させることができる者であり、魂と魂のぶつかり合いによって高められた究極の一瞬を生み出せし者なのだ。

「んぐっ」
「んふ、ふぅ」

 くぐもった声を出しながら、二人はじわりじわりと距離を詰めていく。
 慎重にかつ丁寧に。急いては相手に先手を取られることになる。

「んっ!」

 先に魂を触れさせたのは隊長だ。槍の特徴である長さを存分に生かし、先端で剣を突いて翻弄する。

「ぅぐっ」
「ふ……」

 しかし余裕は長く続かない。
 思い切って食べ進め距離を詰めた団長の魂が、剣特有の猛々しさを持ってグッと槍を押し返す。
 ぬめりとした感触に、一瞬隊長の顔が歪む。

「隊長! 気を付けて!」
「やはり小細工など必要なかった! 強さは正義だ!」

 団長が有利かと思われたが、隊長も柔軟にやり過ごし刀身をスッと滑らせた。
 更に距離が縮まってくると、魂同士も頻繁に絡みあうようになってくる。
 つかず離れずの攻撃を繰り返す隊長と、重い一撃を繰り出す団長。
 どちらも一歩も譲らない戦いに、周囲の緊張も高まっていく。

 激しい魂のぶつかり合いの果てにビスキュイを食べ終えれば、自然と唇が重なり合う。
 ここからはビスキュイの争奪戦だ。
 貪り合うように互いの口内のビスキュイの欠片を奪い合いながら、魂と魂は何度もぶつかり合う。

「む、むぐぅ」
「むぁ、ぅ」

 激しい攻防の末、息の続かなくなった団長が少し口を開く。
 その隙を見逃さずに、隊長が一気に上と下の同時攻撃に移り激しく舌と刀身を絡み合わせた。

「しまっ……うぐっ」

 団長のエクスカリパーが大きく戦慄き、聖なる白き水を吹き出し戦いの終わりを告げた。
 その勢いは凄まじく、隊長の口元まで飛び出していく。

「フッ……俺の勝ちだ」
「クッ……一生の不覚」

 誇らしげに聖水を舐め上げる隊長と、ガクリと膝をつく団長。
 勝負は一瞬。しかし、その魂の輝きはペニ・ヌ神にも届くだろう。
 神官が隊長の勝利を告げると、蒼の国の陣営は歓びの雄叫びに包まれた。
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