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27.ヒミツの地下室

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 そーっと階段を下りていくと、細長い通路があった。
 ゆっくり足音がしないように歩いていくと、奥にまた薄暗い部屋が見えてくる。
 しゃべってるような声がするから、先に下りていった黒い服の人たちも部屋の中にいるみたいだ。

 近づいていくと、低くてうなるような声も聞こえてきた。
 とっても苦しそうで、辛そうな声だ。
 まだうまく聞き取れないけど、苦しいって時々言っている気がする。

「不機嫌そうだぜ。エサは投げつければいいか」
「これで摘まんで肉をやれって言ってただろ。いいからさっさと終わらせよう」

 広い一つの部屋の右奥の方から声が聞こえる。
 僕たちには気づいてないみたいだから、まずは左側の方へ歩いていく。
 
 部屋から、みんなの悲しい声がいっぱい聞こえてくる。

「みんな……助けてって言ってる」
「フィロ、聞こえるのか? 確かに鳴き声のようなものは聞こえているが。全ての生き物の言葉は私には分からないからな」
「うん。怖いって。ここから出してって言ってる」
「やっぱり無理やり捕まえてきてるのね。こうなったら人間たちの邪魔をしてやりましょ! みんな逃がしちゃえばいいのよ」

 僕たちは小声で話し合って、ここに捕まっている生き物たちをみんな助けることにした。
 辺りを見回すと、たくさんのおりの中に珍しい動物や大人しい魔物たちがいる。

「ぐるるる……」
「うぅぅ……」

 角がついてるウサギや、ふさふさしっぽのイタチ、青くてキレイな目のネコ。
 他にも見たことない動物もたくさんいる。
 大きなおりの中には、僕と同じ年くらいのエルフさんたちも捕まっていた。
 ラグお姉さんが言っていた奴隷どれいの話を思い出して、本当に悲しい気持ちになる。
 
 エルフさんたちもふるえてたけど、僕たちがはげますと少しだけ元気が出たみたいだ。
 ラグお姉さんがカギをこわして檻を開ける。
 おりから出てもらって順番に木の手錠てじょうを外していくと、みんな嬉しそうにお礼を言ってくれた。

「……ピッ! ピッピ!」

 小さな声だけど、僕を呼ぶ声がする。
 急いでかけよると、銀色の鳥かごの中にポイがいた。

「ポイ! 良かった。ごめんね、僕のせいで」
「ピピ!」

 ポイは首を振って、大丈夫だって言ってくれた。
 僕のことを信じて待っていてくれたんだ。

「ポイは賢いな。ちゃんと小さな声でフィロを呼ぶとは。ポイが話していたから、捕まっている者たちも落ち着いているのではないか?」
「小さい割にはやるじゃない。あたしたちが来たっていうのに、あの人間たちは奥でガチャガチャしてるから気が付いてないみたいだしね」

 さっきから奥の方で音はしてるんだけど、低い声とガシャンガシャンっていう音が聞こえるだけで僕たちは見つかってない。
 ラグお姉さんがカギをこわすと、ポイが飛び出てきて僕のほっぺにすり寄ってくる。

「ケガしてない? 本当に良かった」
「ピ! ピピピ!」

 ポイはみんなと話していたから、こわかったけど大丈夫だって言ってくれた。
 他の子たちも、良かったねって一緒に喜んでくれてるみたいだ。
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