【本編完結】変わりモノ乙女ゲームの中で塩対応したのに、超難易度キャラに執着されました

楓乃めーぷる

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第三章 地道なお手伝いで金貨を稼ごう

11.寝落ちからの出会い

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 水を飲みながら休んでいると、急に睡魔が襲ってくる。
 もう陽も傾きかけているから、本当は家へ戻らないといけないんだろうけどまぶたはどんどん重くなってきた。

「ダメだ……少しだけ……」

 持っていた水筒を草むらへ転がし、睡魔に身をゆだねて両目を閉じてしまった。

 +++

 微睡む意識の中、身体が揺すられているのに気づいてゆっくりと目を開ける。
 視界には灰緑のもさっとしたものが飛び込んできた。

「わっ!」

 俺が声を上げると、灰緑は離れていく。
 あれ……なんで灰緑だなんて単語がすぐに出てきたんだ?
 寝ぼけ頭をフル回転させて、まじまじともさもさの塊を眺める。

「ハルさん! ここで眠ったらダメじゃないですかぁー。ラウディ様、ハルさんはあっしの仕事をお手伝いしてくださったので怒っちゃだめですよ」
「……」

 ラウディ……? って、まさか。土の精霊のグラウディ?
 しまった、俺は眠気に負けて寝落ちしたんだった!
 ココはコイツのお気に入りの昼寝場所の一つだったような……。
 別に好かれたい訳じゃないからいいけど、無許可で寝るのはよくないよな。

「すみません、俺の落ち度なので。失礼しました」

 俺は転がしていた水筒を拾い上げて、慌てて立ち上がろうとする。
 けど、足がふらついて倒れそうになる。

「あ……」

 こけそうになった俺を目の前のグラウディが支えてくれた。
 細いのかと勝手に思ってたけど、しっかりと支えられてるし想像以上に背も高い。

「すみません。あと……コレ、返します」
 
 グラウディの肩の上で心配そうな顔をしているモグに水筒を手渡す。
 その間もグラウディは一言も話さない。
 そうだった。グラウディは話さないし、見えるのは口元くらいだったんだった。
 今も不機嫌なのかどうかも分からない。

「では、失礼します」
「はい、お気をつけてー」

 モグは器用に手を振ってくれるが、最後までグラウディが怒っているのかどうかは分からなかった。
 明日、一応モグに失礼がなかったかどうかを聞きに行ったほうがいいかもしれないな。
 仲良くするのと礼儀は別問題だし。念のためだ。
 ただでさえ俺への評価が低いだろうし、効率よく動くためには多少フォローしておいた方がいいよな。

 夜の道は迷いそうだったけど、何故か自然と家へ帰りつくことができた。
 家には必ず帰宅できる仕様なら、むしろ助かる。

「大したことしてないのに、どっと疲れた……」

 俺はまた自然と用意されていた食事にも手を付けずに、そのままベッドに転がり込んで眠ってしまった。

 +++

 俺の目の前に見たことのない光景が広がっている。
 寝てしまったことから考えると……これは夢か。
 
 マンガやゲームの中でしか見ないような豪華な家具、ひらひらの服を着た人たち。
 アレか? 貴族様ってヤツか。
 その中で偉そうにしている男性が、俺に向かって罵声ばせいを浴びせている。

 お前は才能がないだの、跡取りとして力不足だのと聞いているこっちが不快になるような言葉ばかりだ。
 この人は一体誰なのだろうか?
 俺は悲しさと悔しさでいっぱいなのに、一言も言い返すことができない。
 ただひたすら耐えてから、静かに部屋を出ていく。

 そして、廊下へ出た途端に置いてあったツボを持ち上げて床へ叩きつけた。
 その音でメイドらしき人が駆け寄ってくるが、それも突き飛ばして長い廊下を走り抜ける。

 これは本当にただの夢?
 その割にはまるで自分の出来事のように鮮明に見える。

 もしかして……ライバルの記憶?

 そう思うと色々とに落ちて、今の状況を納得できそうだった。
 異世界転生ものではよくあるパターンだよな。
 でも、ゲーム内ではこんな描写は一切なかった。描かれるのはキレイなことばかりだったはずだ。
 しかもライバルは少ししか登場しないモブキャラだ。ただの嫌なヤツなだけってことくらいで彼の私生活や家のことは詳しく語られていない。

「誰も俺のことなんて理解していないんだ……誰も……」

 自室に戻った俺の口から、俺の言葉ではない台詞が聞こえてくる。
 でも、その悲痛な思いは俺の胸にも訴えかけてくるものがあった。
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