ゼロ距離からはじまる二人の夜

楓乃めーぷる

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番外編(本編終了後の話を含みます。ご注意ください)

【翌日会社編】2.不機嫌な理由

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 いや、確かにもうすぐ昼休みだが?
 だからといってコイツと顔を合わせるのも気まずいってのに……一体何の用なんだ?
 しかも不機嫌って……俺、記憶を飛ばしたときにコイツの家で粗相でもしたか?
 だとしたら、怒ってても不思議じゃないが……記憶をたどっても正直思い出せない。

「おい! どこまで行くつもりだ……」

 俺の訴えを無視し、藤帆ふじほは俺を引っ張り続ける。
 結果、何故か開いている会議室に押し込まれた。
 藤帆は俺を通さないと言わんばかりにドアの前を塞いで、ご丁寧に施錠までしたらしい。

「……昨日は迷惑をかけた。悪かった。コレでいいか? 何かやらかしたってんなら、それ相応の対応はするが金銭面はすぐには工面できないからもう少し待ってくれ」

 俺が謝罪しても、藤帆の表情は怒ったままに見える。これ以上一体どうしろって言うんだ?
 俺の記憶が確かなら、告白までされたはずなんだが……聞き間違いだったのだろうか。

「……別に謝られるようなことはありません。ただ、栞川しおりかわさんはガードが甘すぎるんですよ。あの人、篠並しのなみさんでしたっけ。気を付けた方がいいですよ」
「……は? 篠並の何に気をつけろって? アイツはただの同期だ。暇になると話しかけてくるだけで部署も違うし……」

 俺の言葉を聞くと、藤帆は長いため息を吐き出してから俺の身体を反転させて今度はドアへ背を押し付けた。
 そして、俺が逃げ出さないようにとご丁寧に両腕をドアについて俺の逃げ道を塞いでくる。
 コレは……壁ドンならぬドアドンか? 聞いたことないっての。

「栞川さん、昨日の勝負に負けた方は何でも言うことを聞く。覚えてますか?」
「そんなこと言ってたな。で、負けたのは俺だって言いたいのか?」
「先に達したのは栞川さんです。酔っていたから忘れたとは言わせませんよ? ちゃんと録音しましたし」
「は? なんだよ、録音って。お前、ふざけん……」

 文句を言いかけたところで、乱暴に唇を塞がれた。
 両腕で思い切り胸板を押してみたが、ビクともしない。
 昨日裸を見ながら触っていたが、藤帆は均整の取れた良い体つきをしていた。
 俺も多少は鍛えているつもりだが、藤帆は俺より身長もあるし力では残念ながら敵わない。

 ムカつくことにキスもうまい。
 噛みつくように唇を塞がれたあとは、息することも忘れてしまうくらいにキツク吸われて頭がくらくらしてくる。
 呼吸しようと口を開こうとすると、すぐに舌も吸われてしまい一気に追い詰められていく。

「……んだよ。これも……脅しか?」
「いいえ。栞川さん、俺と付き合ってください」
「は? 付き合えって……こういうことか?」

 仕方なくノってやろうと藤帆の下半身に手を伸ばそうとすると、手首を強めに掴まれた。
 顔を歪めると、藤帆が俺の耳元に唇を近づけて小声で伝えてくる。

「身体の関係も込みで、恋人になってもらいます」
「恋人? 付き合うって……そっちの付き合うってことを言ってるのか? お前が、俺と?」

 確認の意味で復唱すると、はいと今度は満足げな表情で俺を見つめてきた。
 コイツ……最初からそのつもりで俺と関係を持ったってのか。
 あー……最悪だ。俺は何故勝負しようとか言ったんだ?
 クソ、やってられるか! 俺は一晩限りの関係がいいのであって、恋人とかそういうまどろっこしい関係はごめんだってのに……。

「すごく不満そうですね。オレなら栞川さんの夜の相手にもピッタリだと思いますけど。だって、良さそうでしたし」
「お前、顔に似合わず腹黒なタイプ? はあ……面倒くさいことになった」

 俺が心底不快な顔をしていたのが伝わったらしく、藤帆はしょんぼりと悲しそうな表情で俺に訴えてくる。
 これじゃ、俺が悪いことをしているみたいだ。
 
「……分かった。だが、俺も仕事を失いたくない。会社では今まで通り、普通に接してくれ」
「仕方ありません。でも、約束を破ったときは……栞川さんの恥ずかしい声や性癖をネットに流出しますから。そのつもりで」

 コイツ……爽やかな顔して言ってることはえげつないな。
 諦めて頷いてやると、藤帆は嬉しそうに笑って俺を強く抱きしめた。
 俺なんかのどこが気に入ったのかも分からないが、どうやら厄介なヤツに捕まったらしい。
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