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第一章 音色が繋ぐその先は
3.運命?
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俺にはお構いなしで、イケメンは興奮気味に話を続けた。
コイツの話なんて聞きたくないが、ちょうど退路を塞がれているせいで俺は椅子から降りることもできない。
「この音色、間違いない! 子犬のワルツだよね? あぁ……やっと出会えた。奇跡だ!」
「いや、何が何だか。いいから退けよ」
話が通じなさそうだし、関わり合いになるのは面倒だ。
俺が置いておいたナマケモノに手を伸ばそうとすると、またイケメンが大声をあげた。
「嬉しいな、まだ持っていてくれたなんて。オレのお気に入りのマケマケ」
「マケマケ? 何、その縁起悪い名前」
「ナマケモノだから、マケマケ。ほら、覚えてないかな? 昔、会ったことあるんだけど……」
イケメンは俺にニコニコアピールを続けてくる。昔会ったことがあるって言えば、このナマケモノをくれた男の子くらいか?
いや、まさか……?
「お前、まさか……ストリートピアノの時の?」
「そう、その時の! どうしよう、オレ泣きそう……ずっと探してたんだ。オレの運命の音色」
イケメンは更に嬉しそうに目を細めて、俺を愛おしそうに見てきた。
しかも、運命の音色ってなんだよ。さっきから鳥肌が止まらない。
「よく分かんねぇけど。俺、もう帰るから。じゃあな」
「え? そんな、待ってよ! 折角会えたのに……」
「んなこと言われても、知らねぇし。じゃあな、イケメン君」
俺は無視して横を通り過ぎようとしたのに、イケメンは思いっきり俺の腕を掴んできた。
しかも、意外と力が強い。もしかして、運動部か?
「自分でも変なことを言っているのは分かってる。でも、お願いだから……せめて名前だけでも」
「なんでいちいち名乗らないといけないんだよ、面倒臭い。だったら、お前から名乗れ。興味ないけど」
「オレは藤川透莉。で、君の名前は?」
コイツ……俺が名前を言うまで離さない気か? なんか面倒なヤツに絡まれたな。
「……山地だ」
俺は自分の名前ではなく、ダチの名前を名乗った。
イケメンが大人しく腕を離したので、俺はさっさと背を向けて音楽室から出て行こうとする。
「山地くんか……分かった! ありがとう」
背中に声がかけられる。俺は返事もせずにその場から立ち去った。
関わってはいけない部類の人間だ、アレは。
ガキの頃は単純に嬉しかったが、今のアイツは厄介なイケメンでしかない。
「なんだよ、運命って……ベートーヴェンかっつの」
運命の音色? そんなこと言われても迷惑だ。
俺は特にうまくもないし、何となく弾いてるだけの人間だ。
だから、一方的に持ち上げられるのはごめんだ。
スクバを背負って、決して振り返らないようにズンズン進む。
急いだせいで、ナマケモノも置いていったが……あのイケメンの物だと思ったら未練はなくなった。
いつまでも大事に持っていた自分が馬鹿らしい。
あのイケメンには二度と関わりたくないし、暫く音楽室へ近寄らない方がいいだろう。
「アイツ……何者? この学校、意外と人多いし分かんねー……あんなヤツいたか?」
いい気分で弾いてたはずなのに、一気にテンションが下がった。
このままゲーセンで憂さ晴らしして帰るのもありだな。
コイツの話なんて聞きたくないが、ちょうど退路を塞がれているせいで俺は椅子から降りることもできない。
「この音色、間違いない! 子犬のワルツだよね? あぁ……やっと出会えた。奇跡だ!」
「いや、何が何だか。いいから退けよ」
話が通じなさそうだし、関わり合いになるのは面倒だ。
俺が置いておいたナマケモノに手を伸ばそうとすると、またイケメンが大声をあげた。
「嬉しいな、まだ持っていてくれたなんて。オレのお気に入りのマケマケ」
「マケマケ? 何、その縁起悪い名前」
「ナマケモノだから、マケマケ。ほら、覚えてないかな? 昔、会ったことあるんだけど……」
イケメンは俺にニコニコアピールを続けてくる。昔会ったことがあるって言えば、このナマケモノをくれた男の子くらいか?
いや、まさか……?
「お前、まさか……ストリートピアノの時の?」
「そう、その時の! どうしよう、オレ泣きそう……ずっと探してたんだ。オレの運命の音色」
イケメンは更に嬉しそうに目を細めて、俺を愛おしそうに見てきた。
しかも、運命の音色ってなんだよ。さっきから鳥肌が止まらない。
「よく分かんねぇけど。俺、もう帰るから。じゃあな」
「え? そんな、待ってよ! 折角会えたのに……」
「んなこと言われても、知らねぇし。じゃあな、イケメン君」
俺は無視して横を通り過ぎようとしたのに、イケメンは思いっきり俺の腕を掴んできた。
しかも、意外と力が強い。もしかして、運動部か?
「自分でも変なことを言っているのは分かってる。でも、お願いだから……せめて名前だけでも」
「なんでいちいち名乗らないといけないんだよ、面倒臭い。だったら、お前から名乗れ。興味ないけど」
「オレは藤川透莉。で、君の名前は?」
コイツ……俺が名前を言うまで離さない気か? なんか面倒なヤツに絡まれたな。
「……山地だ」
俺は自分の名前ではなく、ダチの名前を名乗った。
イケメンが大人しく腕を離したので、俺はさっさと背を向けて音楽室から出て行こうとする。
「山地くんか……分かった! ありがとう」
背中に声がかけられる。俺は返事もせずにその場から立ち去った。
関わってはいけない部類の人間だ、アレは。
ガキの頃は単純に嬉しかったが、今のアイツは厄介なイケメンでしかない。
「なんだよ、運命って……ベートーヴェンかっつの」
運命の音色? そんなこと言われても迷惑だ。
俺は特にうまくもないし、何となく弾いてるだけの人間だ。
だから、一方的に持ち上げられるのはごめんだ。
スクバを背負って、決して振り返らないようにズンズン進む。
急いだせいで、ナマケモノも置いていったが……あのイケメンの物だと思ったら未練はなくなった。
いつまでも大事に持っていた自分が馬鹿らしい。
あのイケメンには二度と関わりたくないし、暫く音楽室へ近寄らない方がいいだろう。
「アイツ……何者? この学校、意外と人多いし分かんねー……あんなヤツいたか?」
いい気分で弾いてたはずなのに、一気にテンションが下がった。
このままゲーセンで憂さ晴らしして帰るのもありだな。
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