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箱の中.1
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ガサガサと音を立てて蠢いているのは一番大きな箱だった。
よく見ると箱の外側から隙間を埋めるようにしっかりとガムテープが何重にも貼り付けられており、その上にさらに四方八方からテープが巻きてけてある。
なんならテープのせいで段ボールが見えないくらいに頑丈に巻かれている始末だ。
完全に舞い上がっていた。
こんなあからさまに怪しいものに気が付かなかったなんて。
家の玄関ドア叩いて居ないとか思いこんで安心しきってしまっていた。
そんな後悔をしている暇もなく箱はガサゴソと揺れだす。
段ボールに入ってる可能性を完全に見落としてた…
普通ならあり得ないんだろうけど、こんな世界自体があり得ないんだから、いろいろ想定しておくべきだった。
いや、良い方向に考えれば他の箱を開けた瞬間に襲われなかっただけラッキーだろう。
やばい…
どうする、どうする…
焦るな、まずは武器だ。
背中に背負っているリュックから急いで包丁を取り出して構える。
いつ飛び出してくるのかわからない。
ん?そうだ、確かにいつ飛び出すかわからない。
なら、段ボールに入っている間に外側から一方的に刺してしまえばいいのではないか?
そうだ、それが一番安全なはずだ。
なんて考えているうちに揺れは激しさを増す。
やばい!
早く決めろ!刺すぞ…刺すぞ…
ガサガサと大きく揺れる段ボールの前にしゃがみ込み、段ボールの側面にそっと包丁を構える。
いくぞ…
包丁をしっかりと両手で握り、体重を思い切り柄の部分にかけ、段ボールを貫く。
が、中身に当たらなかったようで手ごたえを感じなかった。
刺しこむ時よりも早くスッと引き抜き包丁に中身のものの痕跡が付着していないかを確認するが、やはりこれといって何かがついている様子はなかった。
ならばと今度は裏側からまた包丁を構え、段ボールの表面をスッとなぞり、再度刺しこもうと力をこめる。
肺から不要な空気を短く吐出し、体の重心を後ろに少し傾ける。
グッと柄を握りしめ、刃先が表面にめり込んだ瞬間だった。
「助けて……」
反射だった。
奇跡と言ってもいい。
包丁が刺さりきる前に止められたことがだ。
完全に頭の中は混乱状態。
は、え?人?まさか…
そんな反応はそれまでなかったはずだ。
これまで声も聞こえなかったし、話しかけても来なかった。
待て、聞き違いの可能性もある。
まずは本当に人か確かめなくてはいけない。
「は、え、あっあの…」
久しぶりに会話をしようとしている相手が人かどうかもわからない状況、かつまだ混乱しているせいかうまく言葉が出ない。
そのまま完全にフリーズする俺…
世の中がこうなる前はコミュ障ではなかったはずだ。
上司とも同僚ともうまくやれていたし、友人も何人かいた。
なんなら自ら合コン参加するくらいのこともしていた。
が、しかし、なぜかうまく口が回らない。
ぐるぐる頭の中を回る、今必要のない思考の数々。
「ごめんなさい、ごめんなさい…お願いです、助けてください…」
それを止めたのは箱の中の声だった。
よく見ると箱の外側から隙間を埋めるようにしっかりとガムテープが何重にも貼り付けられており、その上にさらに四方八方からテープが巻きてけてある。
なんならテープのせいで段ボールが見えないくらいに頑丈に巻かれている始末だ。
完全に舞い上がっていた。
こんなあからさまに怪しいものに気が付かなかったなんて。
家の玄関ドア叩いて居ないとか思いこんで安心しきってしまっていた。
そんな後悔をしている暇もなく箱はガサゴソと揺れだす。
段ボールに入ってる可能性を完全に見落としてた…
普通ならあり得ないんだろうけど、こんな世界自体があり得ないんだから、いろいろ想定しておくべきだった。
いや、良い方向に考えれば他の箱を開けた瞬間に襲われなかっただけラッキーだろう。
やばい…
どうする、どうする…
焦るな、まずは武器だ。
背中に背負っているリュックから急いで包丁を取り出して構える。
いつ飛び出してくるのかわからない。
ん?そうだ、確かにいつ飛び出すかわからない。
なら、段ボールに入っている間に外側から一方的に刺してしまえばいいのではないか?
そうだ、それが一番安全なはずだ。
なんて考えているうちに揺れは激しさを増す。
やばい!
早く決めろ!刺すぞ…刺すぞ…
ガサガサと大きく揺れる段ボールの前にしゃがみ込み、段ボールの側面にそっと包丁を構える。
いくぞ…
包丁をしっかりと両手で握り、体重を思い切り柄の部分にかけ、段ボールを貫く。
が、中身に当たらなかったようで手ごたえを感じなかった。
刺しこむ時よりも早くスッと引き抜き包丁に中身のものの痕跡が付着していないかを確認するが、やはりこれといって何かがついている様子はなかった。
ならばと今度は裏側からまた包丁を構え、段ボールの表面をスッとなぞり、再度刺しこもうと力をこめる。
肺から不要な空気を短く吐出し、体の重心を後ろに少し傾ける。
グッと柄を握りしめ、刃先が表面にめり込んだ瞬間だった。
「助けて……」
反射だった。
奇跡と言ってもいい。
包丁が刺さりきる前に止められたことがだ。
完全に頭の中は混乱状態。
は、え?人?まさか…
そんな反応はそれまでなかったはずだ。
これまで声も聞こえなかったし、話しかけても来なかった。
待て、聞き違いの可能性もある。
まずは本当に人か確かめなくてはいけない。
「は、え、あっあの…」
久しぶりに会話をしようとしている相手が人かどうかもわからない状況、かつまだ混乱しているせいかうまく言葉が出ない。
そのまま完全にフリーズする俺…
世の中がこうなる前はコミュ障ではなかったはずだ。
上司とも同僚ともうまくやれていたし、友人も何人かいた。
なんなら自ら合コン参加するくらいのこともしていた。
が、しかし、なぜかうまく口が回らない。
ぐるぐる頭の中を回る、今必要のない思考の数々。
「ごめんなさい、ごめんなさい…お願いです、助けてください…」
それを止めたのは箱の中の声だった。
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