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早朝の金の林檎亭にて
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同じ年頃の女性が四人も集まると、こんなに話をするものなのだろうか。
さらには貴族の令嬢達の茶会で、こんなにハイテンポで会話をしているのを見たことはない。
帰るタイミングを完全に逃した男二人、そんなことをお互い思いながら部屋の端で並び静かに話を聞いていた。
まもなく夜中の三時になろうかと言う時間だが、寧ろここからが本番だと言うように、さらに話のテンポが数段速くなる。
ラウルもリチャードもいつもは温和で、ゆっくり丁寧に話すアイオライトが早口なのを、新鮮に感じていた。
「ねぇ、アオさんや」
「なんだい? リコさんや」
「運転、教えて」
「運転? 自分、馬車の手綱握ったことないけど、ラウルさんかリチャードさんに教えてもらう?」
この世界には飛行機のように空を飛ぶ乗り物もないし、移動は徒歩か馬車の二択である。
「車だよ。車。キャンピングカー作ったんだ~」
「リコは確かに自動車開発してたけど、一人で作れるもの?」
「魔法があるじゃん。結構それで解決しちゃうよね」
タイヤ、サスペンションは前世で使用していた仕組みを少し改良するだけで良かったが素材選びに難航したそうだ。燃料は魔力をガソリンのように貯めておき、それを動力にする。動力は電気自動車のエンジンを参考に作ったという。
「凄いね! 車があると移動が楽になるよね。ジーランでは一般的なの?」
「いや、全然。試作で作ったんだ~」
「国家予算を使ってね」
カリンが爆弾発言を投げ入れた。
「え! 二人とも国家予算使えるほど凄い人なの!?」
「いやそんなことないよ。この車は色々あって拝借してきちゃった」
てへっと可愛らしく笑うカリンだが、国家予算を使って作ったものを拝借とは、大丈夫なのだろうかと心配になる。
「運転は別にいいけど、明日はさ、王様と王妃様がこの街にに視察で来るから、あんまり目立つことはしたくないんだよな……」
「別にこの店に視察に来るわけではないから、その車というのに乗っても問題ないのでは?」
帰るタイミングを逃して部屋の隅にいたリチャードが急に興味を表したかのように会話に参加してきた。
馬のいない馬に乗りたいと全身が語り掛けているような顔である。
「そうだな。ただし俺たちが一緒でなければ怪しまれるかもしれないけどね。どうだろう。俺たちも一緒に乗ってもいい? アイオライト」
ちらりと見るとラウルも面白いものを見つけたようなキラキラした目でアイオライトを見ている。
「えっと……」
「いいんじゃない? どういうものか見てもらえれば、後の説明も楽だわ」
カリンは特段問題ないような顔で了承して、またレノワールと話をし始めた。
先ほどからカリンとレノワールで何かを話をしているが、アイオライトには何を話しているのか全く聞こえない。
自分の力が必要であればちゃんと話をしてくれるし、おかしな犯罪に手を染めるような人間ではないことは前世からわかっているので無理に聞かないことにした。
「車はどこに?」
この街で馬車も入れる入口は南門だけだ。
商店街と職人街に近い東門の外には、荷渡や荷下ろしのための一時停車場が出入口があるが、どちらにしてもキャンピングカーが駐車していたら悪目立ちするだろう。
「車はね、この街から十五分ほど歩いた辺りのオアシス近くの森に隠してあるよ」
「あぁ、あそこか。あの辺りはオアシスに目が行きがちだから、その近くの森には人は近づかない」
ラウルが隠し場所に感心してから、アイオライトに視線を移し、ダメかな?と少し腰を落として視線を合わせ、ふわりとした笑顔を浮かべた。
『ちっくしょう。その笑顔! 優勝!』
仕方ないよ。その笑顔向けられたら断り切れないよ!心の中で踊りだす。
すでに今日だが火の日は定休日。水の日は代休にしているので、店の心配はなし。
アイオライトは振り返ってリコに告げる。
「運転するならもう寝るけど、いい?」
「ほんと!やった!」
「やった! 馬のいない馬車に乗れるんだ! 楽しみ!」
リコの喜びの声と共に、ラウルも屈託のない笑顔をアイオライトに見せる。
「じゃぁ今日はお開きにします! 三人ともここに泊まる? ラウルさんとリチャードさんはどうされますか?」
レノワールとリコ、カリンの三人は金の林檎亭に泊まり、ラウルとリチャードは宿に戻ることになった。
アイオライトはみんなで泊まって貰えれば楽しいなと思ったのだが、ラウルはどうしても宿に戻ると言い張った。
再度の待ち合わせは、店の前で朝の九時とした。
少しだけ早起きしてお弁当も作ろうと考えながら、ラウルとリチャードの背中を見送った。
---------
宿への帰り道……
「泊まれば普段見れないようなアイオライトの顔も見れただろうに」
「馬鹿だな。冷静でいられる自信がないから宿に戻るんだよっ」
「あ、そ」
本人がはっきり自覚していることが分かってリチャードも一安心である。
---------
バーベキューからの三人との再会。まだ一人足りないが一気に三人に再会できて興奮していたのか、通常店を開ける時間に目が覚めてしまった。
夜のうちに入れなかったお風呂に入ってさっぱりした後、お弁当の為の準備を始めた。
三人ともきっと日本食は久しぶりのはずだ。
食べやすいようにおにぎりと簡単に摘まめるおかずを作ることにする。
おにぎりの具には以前ラウルに作ったお弁当にも入れた梅干しとツナマヨ。
おかずはソーセージと甘い卵焼き、アスパラのベーコン巻き、簡単ナポリタンを詰め込む。
朝ごはんは、あまり寝ていないお腹に負担をかけないように、鶏のささみの粥。
「おはよう。お風呂沸いているから入ってきちゃえば? 三人で入れるよ」
丁度粥を火にかけたところで、二階から三人が降りてきた。
みんなさっぱりしたいだろうとお風呂を勧めると、もともと泊まる気だったのだろうか、ちゃんと着替えをもってきていたようだ。
一度二階に戻って着替えを持ってから店の隣に建てたお風呂場に案内する。といっても全然距離は離れていないのだが。
二人なら湯船に十分浸かれる。洗い場もあるし、シャワーも付いているので順番に湯船に浸かって入れば問題ないだろう。
「お風呂あがったら朝ごはんにしようね」
「「「お風呂の後に朝ごはんまで!? 至れり尽くせりが過ぎる」」」
「そんな大げさだな。ほら、お風呂、いってらっしゃい」
コトコトと鍋から小気味いい音が聞こえてきた。
いったん火からおろして、三人がお風呂から出てくるのを店内で待つ。
信じていなかったわけではないが、信じ切れていない自分もいた。
異世界転生はしたけれど、その転生した先でさらに友達と再び出会えるなんてよっぽどの幸運だ。
運命の神様もようやく本腰を入れてその力を振るってくれたのだと思う。
あと一人足りてないけれど、きっと、いや、絶対に会えると思えてきた。
この世界で一人ぼっちでは決してなかったけれど、たまにくる一人ぼっちのような孤独感が何となく薄まったような気がして、自然と笑みが浮かんでしまう。
金の林檎亭は今日はお休みだ。
アイオライトは気持ちのいい風を入れたくて、窓を開け、扉を開ける。
カラン、カラン。
聞きなれたドアベルが鳴る。
風魔法で店内の空気を循環させながら、店の前の階段に腰を下ろして、ぐっと腕を上げ背伸びをする。
これから楽しい毎日が来るのだろうか、いや、でも自分仕事もあるから、遊んでばかりもいられないし、あの三人はどこに住むのかな、リコとカリンは国を出てきたっぽいことも言っていた。
あまり詳しく話を聞かなかったが、ちゃんと三人の話も聞かなくちゃ……。
「おはよう。アイオライト。どうしたの? 笑ったり困ったり色々な顔してたけれど」
「おはようございます。ラウルさん」
アイオライトはつい自分の思考に夢中になりすぎて、ラウルとリチャードが目の前にいたことに気が付かなかった。
お店が休みなのに今日も朝から会えるなんて嬉しい限りである。
「あ、いえ。昨日はあのあとすぐ寝てしまったので、三人からまだちゃんと話を聞けていないんです。三人ともこの町に住むのかな~とか考えてて」
「そっか。レノワールさんはオーリエ王国の人だからアルタジアに住むとなっても問題ないだろうけれど、ジーランから来た二人はちょっと難しいかもしれないよ」
「え? なんでですか?」
「アルタジアとジーランにはほとんど交流がないんだよ。国交がないわけではないんだけれど、部屋を貸す側としたら、知らない国の人間になるからね」
ラウル自身もジーランについてほとんど知らないという。
「ですが、私としてはこれはジーランを知るいい機会であると思っています。おはようございます。アイオライト」
「おはようございます。リチャードさん」
後ろにいたリチャードにも朝の挨拶を告げる。
「アオ~。お風呂あがったよ~。朝ごはん食べようよ~」
店内からリコの声が聞こえる。
どうやらお風呂を出たようだ。
「もしよければ、お二人も朝ごはんご一緒にいかがですか? お粥……、えっとご飯をさらに軟らかく煮たものなんですけれど、胃にも優しいですよ」
「休みの日にまで、アイオライトのご飯が食べられるなんて嬉しいな」
そう言って、階段に座っていたアイオライトに手を差し出して、優しく手を引き寄せて立たせてくれる。
少しよろけると、ラウルは前から肩に手を置くようにして倒れないように支えてくれた。
「ごめん、ちょっと強かった?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
自分の手よりもとても大きい。
支えてくれていた手が肩から離れていく。
「では、中へどうぞ」
ラウルの手が離れていってしまった事に、アイオライトは少しだけ寂しさを感じたが、その寂しさの正体がなんだか分からなかった。
さらには貴族の令嬢達の茶会で、こんなにハイテンポで会話をしているのを見たことはない。
帰るタイミングを完全に逃した男二人、そんなことをお互い思いながら部屋の端で並び静かに話を聞いていた。
まもなく夜中の三時になろうかと言う時間だが、寧ろここからが本番だと言うように、さらに話のテンポが数段速くなる。
ラウルもリチャードもいつもは温和で、ゆっくり丁寧に話すアイオライトが早口なのを、新鮮に感じていた。
「ねぇ、アオさんや」
「なんだい? リコさんや」
「運転、教えて」
「運転? 自分、馬車の手綱握ったことないけど、ラウルさんかリチャードさんに教えてもらう?」
この世界には飛行機のように空を飛ぶ乗り物もないし、移動は徒歩か馬車の二択である。
「車だよ。車。キャンピングカー作ったんだ~」
「リコは確かに自動車開発してたけど、一人で作れるもの?」
「魔法があるじゃん。結構それで解決しちゃうよね」
タイヤ、サスペンションは前世で使用していた仕組みを少し改良するだけで良かったが素材選びに難航したそうだ。燃料は魔力をガソリンのように貯めておき、それを動力にする。動力は電気自動車のエンジンを参考に作ったという。
「凄いね! 車があると移動が楽になるよね。ジーランでは一般的なの?」
「いや、全然。試作で作ったんだ~」
「国家予算を使ってね」
カリンが爆弾発言を投げ入れた。
「え! 二人とも国家予算使えるほど凄い人なの!?」
「いやそんなことないよ。この車は色々あって拝借してきちゃった」
てへっと可愛らしく笑うカリンだが、国家予算を使って作ったものを拝借とは、大丈夫なのだろうかと心配になる。
「運転は別にいいけど、明日はさ、王様と王妃様がこの街にに視察で来るから、あんまり目立つことはしたくないんだよな……」
「別にこの店に視察に来るわけではないから、その車というのに乗っても問題ないのでは?」
帰るタイミングを逃して部屋の隅にいたリチャードが急に興味を表したかのように会話に参加してきた。
馬のいない馬に乗りたいと全身が語り掛けているような顔である。
「そうだな。ただし俺たちが一緒でなければ怪しまれるかもしれないけどね。どうだろう。俺たちも一緒に乗ってもいい? アイオライト」
ちらりと見るとラウルも面白いものを見つけたようなキラキラした目でアイオライトを見ている。
「えっと……」
「いいんじゃない? どういうものか見てもらえれば、後の説明も楽だわ」
カリンは特段問題ないような顔で了承して、またレノワールと話をし始めた。
先ほどからカリンとレノワールで何かを話をしているが、アイオライトには何を話しているのか全く聞こえない。
自分の力が必要であればちゃんと話をしてくれるし、おかしな犯罪に手を染めるような人間ではないことは前世からわかっているので無理に聞かないことにした。
「車はどこに?」
この街で馬車も入れる入口は南門だけだ。
商店街と職人街に近い東門の外には、荷渡や荷下ろしのための一時停車場が出入口があるが、どちらにしてもキャンピングカーが駐車していたら悪目立ちするだろう。
「車はね、この街から十五分ほど歩いた辺りのオアシス近くの森に隠してあるよ」
「あぁ、あそこか。あの辺りはオアシスに目が行きがちだから、その近くの森には人は近づかない」
ラウルが隠し場所に感心してから、アイオライトに視線を移し、ダメかな?と少し腰を落として視線を合わせ、ふわりとした笑顔を浮かべた。
『ちっくしょう。その笑顔! 優勝!』
仕方ないよ。その笑顔向けられたら断り切れないよ!心の中で踊りだす。
すでに今日だが火の日は定休日。水の日は代休にしているので、店の心配はなし。
アイオライトは振り返ってリコに告げる。
「運転するならもう寝るけど、いい?」
「ほんと!やった!」
「やった! 馬のいない馬車に乗れるんだ! 楽しみ!」
リコの喜びの声と共に、ラウルも屈託のない笑顔をアイオライトに見せる。
「じゃぁ今日はお開きにします! 三人ともここに泊まる? ラウルさんとリチャードさんはどうされますか?」
レノワールとリコ、カリンの三人は金の林檎亭に泊まり、ラウルとリチャードは宿に戻ることになった。
アイオライトはみんなで泊まって貰えれば楽しいなと思ったのだが、ラウルはどうしても宿に戻ると言い張った。
再度の待ち合わせは、店の前で朝の九時とした。
少しだけ早起きしてお弁当も作ろうと考えながら、ラウルとリチャードの背中を見送った。
---------
宿への帰り道……
「泊まれば普段見れないようなアイオライトの顔も見れただろうに」
「馬鹿だな。冷静でいられる自信がないから宿に戻るんだよっ」
「あ、そ」
本人がはっきり自覚していることが分かってリチャードも一安心である。
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バーベキューからの三人との再会。まだ一人足りないが一気に三人に再会できて興奮していたのか、通常店を開ける時間に目が覚めてしまった。
夜のうちに入れなかったお風呂に入ってさっぱりした後、お弁当の為の準備を始めた。
三人ともきっと日本食は久しぶりのはずだ。
食べやすいようにおにぎりと簡単に摘まめるおかずを作ることにする。
おにぎりの具には以前ラウルに作ったお弁当にも入れた梅干しとツナマヨ。
おかずはソーセージと甘い卵焼き、アスパラのベーコン巻き、簡単ナポリタンを詰め込む。
朝ごはんは、あまり寝ていないお腹に負担をかけないように、鶏のささみの粥。
「おはよう。お風呂沸いているから入ってきちゃえば? 三人で入れるよ」
丁度粥を火にかけたところで、二階から三人が降りてきた。
みんなさっぱりしたいだろうとお風呂を勧めると、もともと泊まる気だったのだろうか、ちゃんと着替えをもってきていたようだ。
一度二階に戻って着替えを持ってから店の隣に建てたお風呂場に案内する。といっても全然距離は離れていないのだが。
二人なら湯船に十分浸かれる。洗い場もあるし、シャワーも付いているので順番に湯船に浸かって入れば問題ないだろう。
「お風呂あがったら朝ごはんにしようね」
「「「お風呂の後に朝ごはんまで!? 至れり尽くせりが過ぎる」」」
「そんな大げさだな。ほら、お風呂、いってらっしゃい」
コトコトと鍋から小気味いい音が聞こえてきた。
いったん火からおろして、三人がお風呂から出てくるのを店内で待つ。
信じていなかったわけではないが、信じ切れていない自分もいた。
異世界転生はしたけれど、その転生した先でさらに友達と再び出会えるなんてよっぽどの幸運だ。
運命の神様もようやく本腰を入れてその力を振るってくれたのだと思う。
あと一人足りてないけれど、きっと、いや、絶対に会えると思えてきた。
この世界で一人ぼっちでは決してなかったけれど、たまにくる一人ぼっちのような孤独感が何となく薄まったような気がして、自然と笑みが浮かんでしまう。
金の林檎亭は今日はお休みだ。
アイオライトは気持ちのいい風を入れたくて、窓を開け、扉を開ける。
カラン、カラン。
聞きなれたドアベルが鳴る。
風魔法で店内の空気を循環させながら、店の前の階段に腰を下ろして、ぐっと腕を上げ背伸びをする。
これから楽しい毎日が来るのだろうか、いや、でも自分仕事もあるから、遊んでばかりもいられないし、あの三人はどこに住むのかな、リコとカリンは国を出てきたっぽいことも言っていた。
あまり詳しく話を聞かなかったが、ちゃんと三人の話も聞かなくちゃ……。
「おはよう。アイオライト。どうしたの? 笑ったり困ったり色々な顔してたけれど」
「おはようございます。ラウルさん」
アイオライトはつい自分の思考に夢中になりすぎて、ラウルとリチャードが目の前にいたことに気が付かなかった。
お店が休みなのに今日も朝から会えるなんて嬉しい限りである。
「あ、いえ。昨日はあのあとすぐ寝てしまったので、三人からまだちゃんと話を聞けていないんです。三人ともこの町に住むのかな~とか考えてて」
「そっか。レノワールさんはオーリエ王国の人だからアルタジアに住むとなっても問題ないだろうけれど、ジーランから来た二人はちょっと難しいかもしれないよ」
「え? なんでですか?」
「アルタジアとジーランにはほとんど交流がないんだよ。国交がないわけではないんだけれど、部屋を貸す側としたら、知らない国の人間になるからね」
ラウル自身もジーランについてほとんど知らないという。
「ですが、私としてはこれはジーランを知るいい機会であると思っています。おはようございます。アイオライト」
「おはようございます。リチャードさん」
後ろにいたリチャードにも朝の挨拶を告げる。
「アオ~。お風呂あがったよ~。朝ごはん食べようよ~」
店内からリコの声が聞こえる。
どうやらお風呂を出たようだ。
「もしよければ、お二人も朝ごはんご一緒にいかがですか? お粥……、えっとご飯をさらに軟らかく煮たものなんですけれど、胃にも優しいですよ」
「休みの日にまで、アイオライトのご飯が食べられるなんて嬉しいな」
そう言って、階段に座っていたアイオライトに手を差し出して、優しく手を引き寄せて立たせてくれる。
少しよろけると、ラウルは前から肩に手を置くようにして倒れないように支えてくれた。
「ごめん、ちょっと強かった?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
自分の手よりもとても大きい。
支えてくれていた手が肩から離れていく。
「では、中へどうぞ」
ラウルの手が離れていってしまった事に、アイオライトは少しだけ寂しさを感じたが、その寂しさの正体がなんだか分からなかった。
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