クリスマスまでに帰らなきゃ! -トナカイの冒険-

藤井咲

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-12月19日- 昔の恋人とルー

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 次の日、潜水艦が街に到着しました。
青と白が目立つ街はとても綺麗で栄えているようです。
艦長にお礼を言って潜水艦を降りた二匹でしたが、ピピが何か言いたそうです。

「ピピ、どうしたの?」

「あのね、ルー。私、潜水艦に残ろうかと思うの。…ううん、残りたいの!
あなたの群れに行くって約束したけれど、私、恋をしてしまったの!!!」

ピピは頬をピンクに染めてルーに言います。
気持ちが高ぶっているのか顔から湯気が出ています。

「あの隊員さんに恋をしてしまったの、こんな気持ち初めてだわ。
群れを去った子たちの気持ちがようやく分かったの。」

ピピはおしゃべりをした隊員さんの柔らかい笑顔を浮かべて全身を熱くさせました。

「そうなんだね!一緒に群れにいけないのは寂しいけど、とっても嬉しいよ!
もう隊員さんには言ってるの?」

「ええ、いろんな海を一緒に見に行こうって言ってくれたわ。
ルー、短い間だったけど有難う。とっても楽しかったわ!
雪島には必ず行くから私のこと忘れないでね!」

「うん、待ってるよ!元気でね!」

ルーとピピは固く抱き合って、潜水艦の前で別れました。
ピピを乗せた潜水艦は音もなく海に潜っていきました。

潜水艦を見送ったルーに声をかけるトナカイがいました。

「ルー?」

ルーが後ろを振り向くと、ルーより一回り小さい美しいトナカイが立っています。

「わ、オペラ。凄い偶然だね。
久しぶり、元気だった?」

オペラと呼ばれたトナカイはにこやかにルーに近づきました。

「元気よ。この町にはどうして?バカンス?」

「いや、雪島に帰るところなんだ。あまり時間がないからすぐ出るよ。君は?」

「私はこの町に住んでいるの。もう五年になるかしら。」

「そうなんだ。知らなかったな。
じゃあ、僕はそろそろ行かなくちゃ。」

ルーがその場を離れようとすると、オペラが待って、と止めました。

「港まで送るわ。」

大きなトナカイと美しいトナカイが静かに海を眺めて港に向かいます。
ルーが静かに聞きました。

「ねえ、僕たちどうして別れたんだっけ?」

「さあ、そんなの忘れちゃったわ。
でも、思い出は全部楽しい物ばかりよ。悪くなかったわ。」

「僕もだ。」

丁度港につくとルーはさよならを告げて海に入っていきました。
また一人旅が始まりました。


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