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昼、映画監督北浜のりぞう
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北浜のりぞうは肩身の狭い思いをしていた。彼は映画監督だ。困ったことにホラー映画の監督をしていた。しかし、ゾンビの映画を撮ったことはない。どちらかというと、超自然的な話や、SFの話が多かった。特に"まだ左手が残っている"は日本でもヒットし、後に海外でリメイクされヒットした。その際にメディアの露出が増え、多くの人に顔を覚えられた。
全身を病に冒された大金持ちが、まだ病に冒されていない脳と左手を機械に移植するという話だ。身分証明のために残された左手にも徐々に病が進行していき、唯一残った己を社会的に証明できる左手を失う恐怖に、機械に閉じこめられた脳が、暴走を始めるという、身分証明を題材としたSF色の強い話なのだが、それがなぜか、ゾンビ映画を撮っていた不謹慎な監督として、避難所で知られていた。おそらく、映画の宣伝パンフレットに使われている"腐りゆく肉体に残された脳が暴走する"この宣伝文句が原因ではないかと北浜は分析していた。
何度も誤解を解こうとしたが無理だった。自分が撮った映画を見せればすむ話だが、こんな時に貴重な電気を使って、しかも、ホラー映画を避難所の人間に見せるのはまずいし、逆効果だと、あきらめた。三年ほど、市の避難所に暮らしているが、いまだに誤解が解けずにいる。
そんな北浜に話しかけてきた男がいた。
「ゾンビ映画の監督の君に頼みたいことがあるんだ」
六十代ぐらいの中肉中背の男だ。男は志賀山と名乗った。
「いや、私はゾンビ映画は撮ったこと無いですから」
北浜はうんざりした。こいつも間違えている。
「私は、ゾンビの保護を目的とした組織を運営している」
「なにいってるんですか。ゾンビの保護なんてしてどうする気ですか」
「直るかもしれんじゃないか。ゾンビだなんて、人間が勝手に言っているだけだ。殺すしかない。治ることのない病だと、人間がそう思いこんでいるだけだ。いや、思いこまされていると言っても良い。誰が思いこましたか、犯人はフィクションだ。あなたたちゾンビ映画を作った映画監督に、皆だまされているのだ」
志賀山は北浜を指さした。だから俺はゾンビ映画を撮ったことが無いって。北浜は心の中で否定した。
「それで、それがなんなんですか。私に何をしろと」
「映画を撮ってもらいたい」
「はぁ?」
「記録映画だ」
「なんのです。まさか、今の現状を撮れって」
「その通り。東京オリンピックを撮った市川混監督のように、今の絶望的現状から、人々が立ち上がる様を、君が撮るのだ」
志賀山は北浜の肩をがっちり掴んだ。
「いやですよ。そんな危ないこと、だいたい機材もないしスタッフもいない、電気もないでしょう」
「そんなものなんとでもなる。昔、教団のイメージビデオを作ったときに使った機材があるし、電気も自家発電があるから問題ない。スタッフは君の方で何とかなるだろう。役者は、腐るほどいるしな」
ひっひっひと志賀山は笑った。
教団? 変な宗教団体の人みたいだな。
「俺にゾンビ映画の監督になれって言うのか」
「慣れてるだろ」
だから無いって!
全身を病に冒された大金持ちが、まだ病に冒されていない脳と左手を機械に移植するという話だ。身分証明のために残された左手にも徐々に病が進行していき、唯一残った己を社会的に証明できる左手を失う恐怖に、機械に閉じこめられた脳が、暴走を始めるという、身分証明を題材としたSF色の強い話なのだが、それがなぜか、ゾンビ映画を撮っていた不謹慎な監督として、避難所で知られていた。おそらく、映画の宣伝パンフレットに使われている"腐りゆく肉体に残された脳が暴走する"この宣伝文句が原因ではないかと北浜は分析していた。
何度も誤解を解こうとしたが無理だった。自分が撮った映画を見せればすむ話だが、こんな時に貴重な電気を使って、しかも、ホラー映画を避難所の人間に見せるのはまずいし、逆効果だと、あきらめた。三年ほど、市の避難所に暮らしているが、いまだに誤解が解けずにいる。
そんな北浜に話しかけてきた男がいた。
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「なにいってるんですか。ゾンビの保護なんてしてどうする気ですか」
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志賀山は北浜を指さした。だから俺はゾンビ映画を撮ったことが無いって。北浜は心の中で否定した。
「それで、それがなんなんですか。私に何をしろと」
「映画を撮ってもらいたい」
「はぁ?」
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「なんのです。まさか、今の現状を撮れって」
「その通り。東京オリンピックを撮った市川混監督のように、今の絶望的現状から、人々が立ち上がる様を、君が撮るのだ」
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「そんなものなんとでもなる。昔、教団のイメージビデオを作ったときに使った機材があるし、電気も自家発電があるから問題ない。スタッフは君の方で何とかなるだろう。役者は、腐るほどいるしな」
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