18 / 32
【18】足枷に繋がれる(アリシア視点)
しおりを挟むマイラ様と何か飲みものを売っている店を探していると、カップに入れたお茶を持って通行人に声を掛けている女性がいた。
「カップごと持ち帰れるお茶はいかがですかー。お店の中でも飲めまーす」
面白い抑揚をつけたシャーリドの言葉だ。
「そのお店はどこにあるのかしら」
アリシアはシャーリドの言葉で話し掛けた。
「ありがとうございまーす。この道をまっすぐ行くと左か右にしか行けなくなるので、そこを左に折れてすぐのところにあるオレンジ色の壁の店でーす」
「ありがとう。ところでそのお茶はおいしい?」
「もちろん! シャーリドで一番おいしいですー」
笑顔でそう答える女性に、思わずこちらも笑ってしまった。
店の宣伝をしているのだから、シャーリドで一番美味しいと答えるに決まっている。
「アリシア様、いいお話を聞けましたわね。もう喉がカラカラですわ」
「ええ、行ってみましょう」
シャーリドは乾燥している地域であるからか、街には飲み物を売る店がヴェルーデよりも多い印象がある。
先ほどの女性が言ったとおりに歩いていく。向かう途中も、店頭に並んでいるものを見ながら進んだ。
オレンジ色の壁の店が見えた。
ミルクと香辛料の入ったお茶で、飲み終わったカップはそのまま貰えるらしく、店内で飲んでも持ち帰ってどこかで飲んでもいいと店頭に説明がある。
カップの焼き色にほんの少しのムラがあったりお茶を入れるのに問題はない小さな傷があったりするなど、売り物にはならないカップを安く買い取りお茶を入れてカップごと売っているようだ。
店の前には、持ち帰り用のカップに土が入れられ小さな花が植えてあるものがいくつか置いてある。
お茶を飲んで持ち帰った後はこんな使い方もできるのね。
店先でカップのお茶を買い店に入った。持ち帰る客のほうが多いのか店内に客がいなかった。
敢えて温かいお茶を飲み、喉の渇きが癒されてほっと一息つく。
店の奥には地下へと続く階段があった。
「地下にも席があるのかしら。きっと地下が涼しくて席はそちらから埋まるのかもしれないわね」
マイラ様の言葉に私は大きく頷く。この店内は窓の位置が悪くて風が抜けないようだ。
シャーリドを旅して分かったことだが、窓が対角線に開いていないとこの国の暑さはいっそう酷く感じる。
地下ならば窓がなくとも太陽の熱が届かなくて涼しいのではないかしら。
マイラ様が階段をいくつか降りて地下の様子を伺っているとき、誰かに腕を引っ張られて階段を転がるように降りて行った。
「マイラ様!」
「お嬢様いけません!」
立ち上がって階段のほうに行こうとすると、メリッサに止められた。
メリッサが店を出ようとすると、さっきにこやかにお茶を売ってくれた男性が入り口を塞ぐように立っている。
メリッサはすぐに私のところに戻り、男から守るように私の前に立っている。
じりじりとそのまま時間が過ぎていく。
そして階段から、男が一人上がってきた。
「またお会いしましたね」
下卑ているのに高貴にも見える不快な笑みを浮かべているのは、先ほどのデーツの店の店主だった。
「彼女をどうしたの!?」
「下でお座りいただいている。まあ寛いではいないだろうが。さあ、あなたもどうぞ」
入口に立っていた男とデーツの店主によって、私とメリッサは地下に連れて行かれた。
地下は思ったよりも広く、奥の網格子の向こうに後ろ手に縛られているマイラ様がいた。私たちの後に上から女が降りてきた。
「マイラ様!」
そう声を上げた瞬間、誰かに背を押された。バランスを崩して床に膝をつく。
顔を上げると、先ほど私がお茶を売る店を尋ねた女性だ。
そして女は素早い手付きで私の手をマイラ様と同じように後ろで縛り、メリッサはデーツ店主に縛られた。
「目的はなんなの。どうしてこんなことをするのかしら」
デーツ店主の男が私たちを捕える理由が思い浮かばなかった。
私たちがこの国の人間でないことは先ほどの店頭でのやりとりで分かっているはずで、私たちの解放条件に金を要求しようとしても、シャーリドの外の国を相手にしていては時間がかかる。金のためなら他国の貴族の女をターゲットにするメリットがない。
シャーリドにだっていくらでも貴族はいるのだから。
私たちと引き換えに金を手に入れるまで、時間がかかればそれだけ男の側が不利になるのだ。人を生きたまま監禁するのは手間も人手もかかる。
ということは、身代金目的ではない?
外国の女を攫ってどこかに売り飛ばすつもりなの……?
誘拐して身代金を要求するよりも、売り飛ばすほうが金にはならないだろうけど、そちらのほうが手っ取り早いということなのかしら。
「おまえみたいな、自分は賢いと思っている女を見ると虫唾が走る。そっちの女も泣きもしなかったな。目的だと? そうじゃない、ごめんなさい許してくださいだろう」
何を言っているの……気持ち悪い。
それにしてもこの男、どこかで見覚えがあるような気がするのに……思い出せない。
デーツの店以外にどこかで会ったことがあるような気がする。
少し挑発してしゃべらせれば何か分かるかしら……。
「身に覚えのないことで、あなたに許しを乞う意味が分からないわ」
「……すごいな、まさに俺の嫌いな女の見本みたいなことを言いやがる」
「まあ、それならあなたは世の女性全員が嫌いなのね。別に要らない情報ですけど」
「……おい、おまえあれを持ってこい。俺に対して口の利き方がなってないことを後悔させてやる」
さっき私をこの場に押し込んだ女に顎をしゃくって何かを命じた、女は奥へ向かった。
「おまえらもあの女と同じところへ入れ」
私とメリッサはマイラ様の居る鉄網の向こうへ追い立てられた。
近くでマイラ様を見ると、壁につけられた鎖で足を拘束されている。
すぐに男によって同じように鎖に繋がれた足枷をつけられてしまった。
冷たい足枷に鳥肌が立つ。
思ったより鎖は長く、片足だけなので動こうと思えばこの中を動くことはできそうね。
足枷の鎖の先は壁に固定されているのでそれ以上はどうにもならないけれど。
「マイラ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですわ、アリシア様も?」
「ええ」
「ベスがきっと助けを呼んでくると信じましょう」
メリッサは壁に取り付けられている鎖の真ん中に繋がれていた。私の背後に回って跪き、口で手を縛っている布を外している。
しばらくすると、手首が動き拘束が解けた。私はそのタイのような長い布を片方の手首に巻きつける。
「手を後ろに回したままで様子を見ましょう」
次にメリッサはマイラ様の手首の布を同じように緩め、私がメリッサの布を解いた。
それにしてもずいぶんと杜撰でいい加減ではないかしら。
私たちの手首を縛っていたのは、シルクの手触りのスカーフくらいの大きさの布で、それを細く折り畳んで使われていた。木綿の布ならもっときつく縛れただろうに、シルクだからかするりと解けた。
そもそも普通はロープを使って縛るのではないの?
誘拐における『普通』なんて変な言い方だけど。
まあ、貴族の女たちの手を拘束するならこれで十分だと思ったのでしょうね。
壁に固定した鎖の足枷をつけたから、手の拘束はおまけみたいなものと思っているとか?
まあいい加減な仕事のおかげで両手の自由を取り戻せたけれど、しばらく後ろで縛られているようにしていよう。
奥からデーツ店主が大きな甕を足で押して運んで来た。甕の口は油紙のようなもので塞がれている。
「……ふざけやがって……あいつら、これだけはできませんなどと言って震えて使い物にならない。蛇は神だなんて、それこそ神の冒涜じゃないか」
デーツ店主はぶつぶつ文句を言いながら、鉄網の鍵を開けると甕を足で押し入れ油紙を剣で破き、力いっぱい甕を蹴り倒した。
その中から無数の蛇が出てきてメリッサが甲高い悲鳴を上げ、マイラ様は言葉もなく目を見開いている。
「さすがにこれには驚いたか。まあ、いつまでもつかな。
蛇の毒が回るまでどれくらいかかるのだろうか。ここは地下だから、大声を上げたって誰にも聞こえない。それにしても生臭くてかなわぬ……」
デーツ店主は袖で鼻を覆い、私たちが驚いた顔をしたことに満足したのか階段を上がって行った。
「……私、蛇だけはどうしてもダメで……」
メリッサが壁に張り付くように少しでも蠢く蛇から距離を取ってそうつぶやく。マイラ様も同じように壁まで下がっていた。
「こんな大量の蛇が大丈夫なんて人は居ないですわね……」
「マイラ様のおっしゃるとおりですね、でもなんとかしなくては」
甕から這い出てくる蛇の多さにたじろいだが、お妃教育のシャーリドの回で習ったことを思い出す。
蛇を見ると、これは『アスクーの祝福』のモチーフにされている蛇ではないだろうか。毒が無く穏やかな性質を持つ白蛇で、頭部に一つ丸い模様があるという。
丸い模様の形によってとても尊いとされる白蛇もいて、一家で大切にするらしい。
そうした白蛇を求める高位貴族がいて、高額で取引されることもあると学んだわ。
『アスクーの祝福』モチーフの白蛇に害を加えると、罰が当たると神格化もされている。
まさに今放たれた蛇たちすべてにその特徴がある。
どの蛇も頭部に丸模様があるわ。
あのデーツ店主を店で見た時に、なんとなく商人には見えなかった。もしかしたらシャーリドの人間ではないのかもしれない。
蛇をこのように乱暴に扱うのは、毒が無くシャーリド人にとって大切な白蛇だと知らないのではないかしら。
噛まれればその歯による物理的な痛みはあるだろうけど、そこから毒を取り込むことがないのであれば、どんどん掴んで甕に戻していけばいいのでは?
「マイラ様、メリッサ、この蛇はたぶん毒を持っていないわ。白くて頭に丸い模様があるでしょう? あれはこの国で大切にされている蛇の特徴よ。噛まれれば普通に痛いだろうけど、うまく頭の少し下を掴んで甕に入れていけばいいと思うの」
「アリシア様……私も蛇はダメですが、毒が無いのなら頑張れそうですわ!」
「もちろん私もお二人を護るためなら!」
「三人で頑張りましょう! なるべく蛇を傷つけないように甕に戻していきたいわ。マイラ様とメリッサでなんとか甕を起こしてもらえませんか? 私からは遠くて届かないの」
三人とも壁に繋がれた鎖を足枷として付けられている。
鎖はそれなりの長さはあるけれど、私がいちばん甕から遠いところにいるから、どうしても甕に手が届かない。甕は蹴り倒されたままだった。
マイラ様とメリッサが甕の口に手を伸ばす。ただ、甕が大きくて重たそうで、中からまだ蛇が出てきている。
甕に一番近いマイラ様は、甕の口を掴もうとするけれど、中から出てくる蛇にどうしても手を離してしまう。
「マイラ様、なんとか甕の口を掴んで手前に引っ張ってください!」
「こ、こうかしら……」
少し甕がこちら側に動いた。
マイラ様の頑張りで、また少し甕がこちらに近づく。
「あとは私が!」
メリッサが少し近づいた甕の口に、繋がれていないほうの足をひっかけ手前に引く。
甕が手前に動き、体勢を変えたメリッサは手で引っ張った。その動きでさらに中から蛇が出てくるがメリッサは怯まずにぐっと甕を引く。
「メリッサ、甕を起こせる? もう少しこちらに寄せてくれれば私の手も届くわ!」
大きな甕はどれくらいの重さがあるのか、メリッサがさらに引っぱり私にも届くようになった。
「起こすわよ、メリッサ」
まだ蛇がいくらか入ったままの甕をどうにか起こすことができた。
「どんどん蛇をこの中に入れていきましょう! 尻尾のほうではなく、なるべく頭の近くを掴めば噛まれにくいかもしれないわ」
近くを這う蛇を掴んで甕に投げ入れる。私だって蛇は苦手だけど得意な人なんてヴェルーデにはきっといないわ。
でもシャーリドの人たちにとって大切な存在の蛇を傷つけないようにしたい。こう言うと聞こえがいいけど、もし傷つけたりしたら呪いのようなものがあったときに怖いという気持ちが大きい。
「アリシア様、私ずっと考えていましたが、あの店主に見覚えがあるような気がするのです」
マイラ様が蛇を甕に投げ入れならがそう言った。
「私もですわ。ここではなくデーツの店でそう感じたのですが……」
「でも、私はシャーリドの方々とお会いしたのは今回の視察と、帝国のパーティに出席した時だけですわ。その時にご挨拶をしたシャーリドの王族や貴族の方々の中に、あの店主はいなかったと思います」
「……あのデーツ店主、シャーリドの人ではないような気がしているのよ……」
私がそう言うと、マイラ様は何か考えるような顔つきになる。
「マイラ様、考え事をしながら蛇を掴むのは危ないですわ。毒はないだろうと言いましたが、噛まれたら痛みはありますもの」
「そうね、ごめんなさい。デーツ店主についてこの辺まで出かかっているのになかなか出てこないものですから」
「私もさっきから落ち着かない気持ちです。でも今はとにかくこの蛇たちをすべて甕に戻すことを優先しましょう」
「お嬢様、あの男を思い出すことから離れて楽しいことでも思い出してはどうですか。美味しかったお菓子とか楽しかったパーティとか」
メリッサが両手それぞれ一匹ずつ蛇を投げ込みながらそう言った。
「そうね、シャーリドのお菓子はどれも美味しかったわね! デーツの入ったクッキーとか……あら、またあの店主に戻ってしまうわ」
マイラ様もメリッサも声に出して笑った。足元に蠢く多くの蛇に対峙しているとは思えないくらい、場違いに明るい空気になった。
「ではパーティのお話しにしましょう。私が目を奪われた豪華なパーティ会場と言えば……パーティ……」
マイラ様が途中で黙り込んだ。
「マイラ様、どうかなさった?」
「……そうよ、パーティよ! アリシア様もいらしたはずですわ、皇帝陛下の在位記念パーティに!」
「ええ、一年ほど前の皇帝陛下の在位記念パーティでしたら……ノックスビル公爵家として両親と弟と一緒に出席しましたけど……」
「私もハワード公爵家の養父母と義兄たちと出席していました。そこで、その席でご挨拶をした方々の中にあの店主がいましたわ、シャーリドの王族の方々の中ではなく!」
一年ほど前に、帝国を統べる皇帝陛下の在位記念パーティがあった。
ヴェルーデからは王家と公爵家が参加していて、私も連れていかれた。
お母様が張り切って、いつもの数倍もの値段のドレスを作ってくれた。帝国内の王国が集まるのだからそれに恥じない品格をと、途中からはお母様よりお父様のほうが前のめりになって詳しくもないドレスについていろいろ言ってくださったことを思い出す。
そのパーティにあのデーツ店主がいたのかしら……。
皇太子様とそのご兄弟の方々、各王国の王族の方々や公爵家の皆さまには一通りご挨拶をしたけれど……。
先ほどのデーツ店主が言った『口の利き方がなってない』という言葉を思い出す。
「マイラ様、あのパーティ会場で、ちょっとしたざわつきが起きましたよね?」
「……そう、そうなのです……何かここまで出かかっているのですけれど……」
帝国の巨大なお城の大きなホールでは、あちこちで挨拶を交わす小さな人の輪ができていた。その輪が大きくなったり、小さな輪に分裂したりを繰り返していた中で、異質な声が私の耳に届いた。
『失礼じゃないか! 女のくせに口の利き方がなってない!』
どこかの女性にそんな無礼な言葉を投げた王子がいた。あれはたしか……。
「フォートナム王国の王太子殿下!」
マイラ様と声がかぶった。
その声が大きかったせいでメリッサに『お静かに……』と叱られるように言われてしまったわ。
それから私たちはしばらく話すこともせずに、ひたすら床を這う蛇たちを甕に入れていった。三人で話さなくてはならないことがたくさんあったが、まずは目の前の……いや目の下の蛇たちを片付けなくてはならない。
私たちには確認し合わなければならないことがたくさんあった。
蛇を甕に投げ入れながら、頭の中のノートにもどんどん言葉を投げていく。
『フォートナム王国の王太子殿下とは』
『シャーリドでデーツ店主』
『シャーリドの内情』
うまく言葉が繋がっていかない苛立ちをシャーリド王国民の大切な蛇にぶつけないよう丁寧に、でも素早く片付けていった。
194
あなたにおすすめの小説
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲
恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。
完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。
婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。
家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、
家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。
理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇!
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました
ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、
ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。
理由はただ一つ――
「平民出身の聖女と婚約するため」。
だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。
シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。
ただ静かに席を立っただけ。
それだけで――
王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、
王国最大の商会は資金提供を打ち切り、
王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。
一方シャウラは、何もしていない。
復讐もしない。断罪もしない。
平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。
そして王国は、
“王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、
聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。
誰かを裁くことなく、
誰かを蹴落とすことなく、
ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。
これは、
婚約破棄から始まる――
静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。
「私は何もしていませんわ」
それが、最強の勝利だった。
クリスティーヌの本当の幸せ
宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした
みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。
会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。
そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる