新訳 零戦戦記 選ばれしセカイ

俊也

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宣戦布告

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ハワイ時間12月7日 午前5時 
オアフ島 アメリカ太平洋艦隊司令部。

「閣下!失礼致します!」
荒々しいノックの音。
なんらかの異変を察知したハズバンド・キンメル太平洋艦隊司令長官。
まだまどろんでいる妻を尻目にベッドから起き出し、寝室のドアを開けた。
当直士官が緊急電文をキンメルに手渡す。
平文のそれを読み、眠気が遥か彼方に吹き飛ぶ。
「全軍に非常呼集!参謀スタッフも全員だ!」
「アイ・サー!!」
日本人どもが…遂に宣戦布告をかましてきおった!

司令部大会議室。
参謀達が意見を戦わせる。
「やはり、我々が真っ先に把握すべきは、日本海軍の艦隊動向だ。」
皆が頷く。
「やはり、彼らからすれば、インドシナ等の資源地帯からのシーレーン防衛の関連上、フィリピンは真っ先に…。」
「ですな、攻略の航空支援として、主力戦艦に加えて、空母の大半もそちらに…。」
「妥当な線だ。」
「ただ、ここにいる我が主力艦隊への牽制として、ウェーキ島あたりへの支援攻撃が…。」
「そちらはキンメル閣下が配慮なされて、ハルゼー提督の第8任務部隊を派遣されている。」
「と、なると、現状動かせる主力をフィリピン方面に…。」
「まだ動向が掴めぬうちにそれは危険だ。」
「うむ、たとえばアリューシャンに分派してくる危険も…。」
「ここ…と言う可能性もあるぞ。」
全員がキンメルの方を向く。

ないないそれはない。

…などとは無論言わないが、皆の空気は…。
一人の参謀が発言した。
「理論上は可能ですが…。
日本の基本的な艦隊運用能力、艦載機の技術レベルを思いますと…。
そもそも情報部の通信傍受では、むしろフィリピン近傍での日本艦船の動きを…。」
「それ自体が偽電という可能性も…。
いや、うむ。こう言った私自身、どう見積もっても可能性5%もないとは思うが、ここ周辺の哨戒を強化するにしくはない。」
「畏まりました。では急ぎ哨戒飛行艇の増派を…。」
…とは言え参謀達の主な関心事は、フィリピンもしくはアリューシャン方面であった。
キンメル自身も含めて。

しかし、午前6時過ぎ、驚愕の一報がもたらされる。

「潜水艦レフティーフィッシュより入電!
日本の一大艦隊と思しき船影確認!
ここより西方640カイリ!
少なくとも戦艦2、正規空母4は下らぬものと!」
がばと立ち上がるキンメル。
驚愕はしつつも、内心でほくそ笑む。

ジャップ…上手いことここまで隠密で忍びよったことは誉めてやる。
だが…惜しかったな。
貴様らの奇襲は失敗だ。





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