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バタフライエフェクト
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何故、前年の冬将軍とソ連赤軍の猛反攻にモスクワを目前として大敗北を喫した筈のナチスドイツ軍が、この1942年初夏を前にモスクワ陥落を成し得たのか!?
連合国中枢の情報部も混乱していた。
話は日米開戦時に遡る。
「12月7日の悪夢」以降、アメリカ国内では世論や議会、軍部の中ですら、足元、合衆国西海岸防衛を強化すべしとの声がそこかしこで上がり始めた。
まるで明日にも日本軍が大挙ハワイを抜き、アメリカ本土に上がり込んできかねない、そんな論調であった。
不可能と思われた真珠湾攻撃を成し遂げた日本人、軍に対する、過剰である種の迷信的恐怖が、軍民双方を支配していた。
それに、きちんと宣戦布告を受けたうえで、しかもみすみす敵艦隊接近を察知していながら結果的には奇襲を受けた軍、政府への世論の不信感が拍車をかける。
かくてルーズベルト大統領は、7割方政治的ポーズとして、西海岸への陸上兵力配備、及び沿岸防御体制の強化を要所に行わねばならなくなった。
これで、割りを喰ったのはソ連の絶対的指導者、スターリンであった。
約束を取り付けた筈のレンドリース、大規模なアメリカからの武器装備、資源等の支援が、大幅に目減りしてしまったのである。
正直、国力的に日本軍に対処しつつもフルに支援継続は出来たのだが、前述の理由に加え、どさくさに紛れて与党内の反共意識の強い議員の発言力が増してきた、と言うのも足を引っ張った…。
お陰で、昨年冬、モスクワ前で躓いたドイツ軍に対して、ソ連赤軍の方も戦力不足で今一つ止めを刺し切れなかったのである。
そして、回り回って4月末からの、条件も戦力も整ったドイツ軍の再度の大攻勢を許すこととなってしまう。
ソ連にとってはさらに致命的なことに、極東へ放ったスパイの元締め、リヒャルト・ゾルゲからの事前情報
「日本陸軍の動きが満州方面で活発化、ソビエト本土侵攻の前兆の可能性、なきにしもあらず。」
これにスターリンが疑心暗鬼となってしまい、極東、満ソ国境方面に張り付けた一大精鋭部隊をモスクワ方面に呼び出すことを躊躇ってしまった。
かくてドイツ第三帝国軍は、電撃戦再びとばかりに一転攻勢。
1942年5月22日にはモスクワを完全制圧し、世界に衝撃をもたらす。
スターリンと政府、軍事の各機構は、遥か西方クイビシェフにまで後退することとなる。
明らかに、これらの事実は赤軍将兵の士気を下げた。
6月月初、アメリカ ホワイトハウス。
ルーズベルト大統領は政府、軍部高官達に高らかに宣言した。
「今一度、我が国の国家総力戦体制突入の意志を全国民に知らしめねばならぬ。
私自らが全国民に明朝演説する。
この大戦は我が国一国の安全保障の問題にあらず!
ファシズムが世界を呑み込もうとしている現状への、ある意味では大いなる正義の戦い!
その事を国民に納得して頂かねばならん。
英国とソ連への支援に今一度テコ入れをする…。
そして眼前の敵、日本にも無論対処する。
反撃作戦の基幹となる新鋭正規空母、戦闘機の量産化を半年前倒しするつもりで、関係各位には臨んで頂きたい。
今次大戦は我が合衆国建国以来の危機と心得よ!」
「「御意!!」」
連合国中枢の情報部も混乱していた。
話は日米開戦時に遡る。
「12月7日の悪夢」以降、アメリカ国内では世論や議会、軍部の中ですら、足元、合衆国西海岸防衛を強化すべしとの声がそこかしこで上がり始めた。
まるで明日にも日本軍が大挙ハワイを抜き、アメリカ本土に上がり込んできかねない、そんな論調であった。
不可能と思われた真珠湾攻撃を成し遂げた日本人、軍に対する、過剰である種の迷信的恐怖が、軍民双方を支配していた。
それに、きちんと宣戦布告を受けたうえで、しかもみすみす敵艦隊接近を察知していながら結果的には奇襲を受けた軍、政府への世論の不信感が拍車をかける。
かくてルーズベルト大統領は、7割方政治的ポーズとして、西海岸への陸上兵力配備、及び沿岸防御体制の強化を要所に行わねばならなくなった。
これで、割りを喰ったのはソ連の絶対的指導者、スターリンであった。
約束を取り付けた筈のレンドリース、大規模なアメリカからの武器装備、資源等の支援が、大幅に目減りしてしまったのである。
正直、国力的に日本軍に対処しつつもフルに支援継続は出来たのだが、前述の理由に加え、どさくさに紛れて与党内の反共意識の強い議員の発言力が増してきた、と言うのも足を引っ張った…。
お陰で、昨年冬、モスクワ前で躓いたドイツ軍に対して、ソ連赤軍の方も戦力不足で今一つ止めを刺し切れなかったのである。
そして、回り回って4月末からの、条件も戦力も整ったドイツ軍の再度の大攻勢を許すこととなってしまう。
ソ連にとってはさらに致命的なことに、極東へ放ったスパイの元締め、リヒャルト・ゾルゲからの事前情報
「日本陸軍の動きが満州方面で活発化、ソビエト本土侵攻の前兆の可能性、なきにしもあらず。」
これにスターリンが疑心暗鬼となってしまい、極東、満ソ国境方面に張り付けた一大精鋭部隊をモスクワ方面に呼び出すことを躊躇ってしまった。
かくてドイツ第三帝国軍は、電撃戦再びとばかりに一転攻勢。
1942年5月22日にはモスクワを完全制圧し、世界に衝撃をもたらす。
スターリンと政府、軍事の各機構は、遥か西方クイビシェフにまで後退することとなる。
明らかに、これらの事実は赤軍将兵の士気を下げた。
6月月初、アメリカ ホワイトハウス。
ルーズベルト大統領は政府、軍部高官達に高らかに宣言した。
「今一度、我が国の国家総力戦体制突入の意志を全国民に知らしめねばならぬ。
私自らが全国民に明朝演説する。
この大戦は我が国一国の安全保障の問題にあらず!
ファシズムが世界を呑み込もうとしている現状への、ある意味では大いなる正義の戦い!
その事を国民に納得して頂かねばならん。
英国とソ連への支援に今一度テコ入れをする…。
そして眼前の敵、日本にも無論対処する。
反撃作戦の基幹となる新鋭正規空母、戦闘機の量産化を半年前倒しするつもりで、関係各位には臨んで頂きたい。
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「「御意!!」」
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