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絶望を拓くため
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「申し訳ございません。遅れました。」
久保は翌朝0710、葛城の戦闘指揮所に入る。
「別に構わん。とは言わんが…。一晩で少しやつれたのでは無いか?」
「いえ、ご心配には…。」
「とにかくお前さんになんかあったら困る。
戦は時の運。今から脳髄絞って様々な想定をするのは良いが、あまり自分を酷使するな。」
「はっ。山口閣下。お気遣い痛みいります。」
確かに絞ったり絞られたり、都合7回戦くらいは…。
「5分後!」
山口の声に思わずびくりとなる。
「大和より、小沢GF司令長官の訓示がある。全員傾注!」
「ようそろ!」
加来艦長が艦内無線で復唱する。
そして…。
『諸君、手を止めずに聞いて欲しい、連合艦隊司令長官、小沢治三郎である。』
しんと静まりかえる葛城戦闘指揮所。
『我が連合艦隊、泊地内全艦はこれより、マリアナ方面東方に進出。
来寇する敵太平洋艦隊主力を完全に殲滅。
米軍のマリアナおよび以西の侵攻を不可逆的に阻止する為、
あ号作戦
を決行する。
全艦、抜錨!!主機を起動せよ!』
うおおおおーっ!!
声にはならねど、全艦隊の気魄が轟く。
「よし、葛城も行くぞ!
錨を上げい!
機関室、行けるか!」
「バリバリ全開でっせ艦長!」
「よし、両舷第三戦速!他艦との輪形陣を順次形成。」
よーそろー!
12万馬力の葛城主機が唸る。
なんやかやで、俺もいきり立つぞ。
思いながら、久保はメモを取り出す。
「本官のルートより入手した情報です。
敵ハワイ各島の基地は、飛行場を更に増設。
かなりの確度でBー29を増派したかと。」
「やはりか…。」
「はっ。少なくとも決戦時投入されるは、500から600機にはなるかと。」
周囲は軽くどよめく。
「うーむ、これでは基地航空隊は忙殺されるどころか、事実上壊滅…。」
山口はそう言って腕を組む。
「非情ではありますが、本作戦は最終的にマリアナ死守と敵艦隊殲滅が成れば成功と考えます。」
「う、うむ。」
周囲の空気も固まる。
そう。
国力控えめに見ても30倍の敵。
その無尽蔵の戦力の治癒力をも上回る一撃を与えるには、それ程の覚悟が必要なのだ。
(この男、まさか今回死ぬつもりではなかろうな。)
何かを悟りきったような表情で佇む久保を見て、山口多聞は一抹の危惧を抱く。
(やばいな…)
久保は内心後悔していた。
朝4時の7回目が余分だった。
ここまで足に来るとは…。
久保拓也は手を挙げる。
「少し、『連中』の情報を整理してきます。」
そう何とか口実を作り、指揮所を出て私室に篭り仮眠する久保であった。
「間違いないか?」
ハワイ西方沖、遊弋中のアメリカ第三艦隊。
「はっ、哨戒中の潜水艦複数から同様の報告が。」
「よし、戦るか。」
口元の両端を吊り上げるハルゼー。
同時に、スプルーアンスの言葉が思い出される。
「重々、気をつけろよ。
最新、最速、最強の兵力を整えても、なお安心できない何かが彼ら日本にはある。
あるいは誰かがいる
君も承知だろうが、細かい何事も見逃すなよ…。」
ああ、そうだなレイよ。
しかし我々合衆国軍人。命令が下ったからには引けぬ!
マイクを貸せ。
『野郎ども!猿狩りの時間だ!所定の位置に着き、32分後に出撃する!
あきらめの悪さと悪運だけが取り柄のジャップに、今度は手加減無しで教えてやれ!
誰が世界最強か!太平洋の覇者か!?
お前らの力を見せつけろ!!
オーバー!!』
こちらも、大小1000を超える艦艇から咆哮。
やがて…他の艦に守られつつ、「もう一つの超弩級戦艦」
旗艦モンタナは起動した。
久保は翌朝0710、葛城の戦闘指揮所に入る。
「別に構わん。とは言わんが…。一晩で少しやつれたのでは無いか?」
「いえ、ご心配には…。」
「とにかくお前さんになんかあったら困る。
戦は時の運。今から脳髄絞って様々な想定をするのは良いが、あまり自分を酷使するな。」
「はっ。山口閣下。お気遣い痛みいります。」
確かに絞ったり絞られたり、都合7回戦くらいは…。
「5分後!」
山口の声に思わずびくりとなる。
「大和より、小沢GF司令長官の訓示がある。全員傾注!」
「ようそろ!」
加来艦長が艦内無線で復唱する。
そして…。
『諸君、手を止めずに聞いて欲しい、連合艦隊司令長官、小沢治三郎である。』
しんと静まりかえる葛城戦闘指揮所。
『我が連合艦隊、泊地内全艦はこれより、マリアナ方面東方に進出。
来寇する敵太平洋艦隊主力を完全に殲滅。
米軍のマリアナおよび以西の侵攻を不可逆的に阻止する為、
あ号作戦
を決行する。
全艦、抜錨!!主機を起動せよ!』
うおおおおーっ!!
声にはならねど、全艦隊の気魄が轟く。
「よし、葛城も行くぞ!
錨を上げい!
機関室、行けるか!」
「バリバリ全開でっせ艦長!」
「よし、両舷第三戦速!他艦との輪形陣を順次形成。」
よーそろー!
12万馬力の葛城主機が唸る。
なんやかやで、俺もいきり立つぞ。
思いながら、久保はメモを取り出す。
「本官のルートより入手した情報です。
敵ハワイ各島の基地は、飛行場を更に増設。
かなりの確度でBー29を増派したかと。」
「やはりか…。」
「はっ。少なくとも決戦時投入されるは、500から600機にはなるかと。」
周囲は軽くどよめく。
「うーむ、これでは基地航空隊は忙殺されるどころか、事実上壊滅…。」
山口はそう言って腕を組む。
「非情ではありますが、本作戦は最終的にマリアナ死守と敵艦隊殲滅が成れば成功と考えます。」
「う、うむ。」
周囲の空気も固まる。
そう。
国力控えめに見ても30倍の敵。
その無尽蔵の戦力の治癒力をも上回る一撃を与えるには、それ程の覚悟が必要なのだ。
(この男、まさか今回死ぬつもりではなかろうな。)
何かを悟りきったような表情で佇む久保を見て、山口多聞は一抹の危惧を抱く。
(やばいな…)
久保は内心後悔していた。
朝4時の7回目が余分だった。
ここまで足に来るとは…。
久保拓也は手を挙げる。
「少し、『連中』の情報を整理してきます。」
そう何とか口実を作り、指揮所を出て私室に篭り仮眠する久保であった。
「間違いないか?」
ハワイ西方沖、遊弋中のアメリカ第三艦隊。
「はっ、哨戒中の潜水艦複数から同様の報告が。」
「よし、戦るか。」
口元の両端を吊り上げるハルゼー。
同時に、スプルーアンスの言葉が思い出される。
「重々、気をつけろよ。
最新、最速、最強の兵力を整えても、なお安心できない何かが彼ら日本にはある。
あるいは誰かがいる
君も承知だろうが、細かい何事も見逃すなよ…。」
ああ、そうだなレイよ。
しかし我々合衆国軍人。命令が下ったからには引けぬ!
マイクを貸せ。
『野郎ども!猿狩りの時間だ!所定の位置に着き、32分後に出撃する!
あきらめの悪さと悪運だけが取り柄のジャップに、今度は手加減無しで教えてやれ!
誰が世界最強か!太平洋の覇者か!?
お前らの力を見せつけろ!!
オーバー!!』
こちらも、大小1000を超える艦艇から咆哮。
やがて…他の艦に守られつつ、「もう一つの超弩級戦艦」
旗艦モンタナは起動した。
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