ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第四章 怪奇!化け猫談義

怪猫、遠隔伝達する

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 霧ヶ峰の星空の下、僕は佑夏と二人きり。

 動物写真家、東山大悟氏、本人の案内で、ヤマネの棲みかを訪ねるツアー。

 一日目の探索は終わり、もうすぐ、夕食の時間である。

「お夕飯の後、理夢ちゃんに勉強教えることになってるの。」

 佑夏は星空を見ながら呟く。

 いつの間に、そんなに仲良くなったんだ?

 京都から来ている母子連れ、その娘の方の女子高生、吉岡理夢ちゃんとそんな約束をしていたとは。

 ふと、横浜市内の病院に勤務するナース、水野葵さんの奏でるアフリカの楽器、カリンバの音色はいつしか止んでいるのに氣づく。

 みんな、そろそろ、食堂に集まり始めているんだろう。

 大の字に仰向けになって寝ころび、星空を見ていた僕達二人も起き上がる。

 そして、宿に向かって一緒に歩き出しながら、星姫ゆうかがちょっと不思議そうな声を

「ねえ、中原くん。私、一つ氣になってることがあって。」

「何?」

「5月に教育実習に行く前、地震のあった日。王子様ぽんたが”フギャア!フギャア!”って、すっっごく鳴き喚いて私に甘えてきたでしょ?
 あれ、何だったのかな?ずっと考えてるのよ。あれから、なんにも、変わったとこ無いし。
 一回きりよね?」

「ああ、アレか。」

 佑夏から、白い貝殻の髪飾りの由来を聞いて、彼女に惚れ直、いや、感動した日の出来事だ。
 しかし、僕から、佑夏に、ぽん太が猫又であることを、教えていいものか?

 そう言えば、ぽん太はどうして、佑夏には思念を送らない?
 猫又は主人としか、対話できないのだろうか?

(いや、そんなことはねえぜ。その氣になりゃ、誰にだって思考は伝えられる。
 ただ、おいそれと主人以外に正体は明かせねえからな。)

(ぽん太!?)

(まあ、こうやって、遠距離で思念を伝達できたり、思考を共有できるのは飼い主だけだ。
 猫だけじゃねえ。犬や馬にも、そういう能力ちからを持つようになるのはいるな。
 今日、ジンスケが見たキリガミネの風景も、他の奴との会話も、全部オレに伝わったぜ。ニャハハハ!)

「中原くん、どうしたの?」

「い、いや。何でもないよ。」

(四六時中、見張ってる訳じゃねえから、安心しな。
 一日目は、なかなか成功だったみてえで、良かったな!さて、明日はいよいよ運命の告白だ。)

 不思議そうな顔をして、佑夏は僕を見続けている。参ったな。

 しかし、ぽん太は、まだまだ思念を送ってくる。

(前にも言ったが、猫又はその予知能力ちからで、佑夏の返事や、試験の結果が分かってたとしても、危険以外のことは主人に伝えることはできねぇ。
 全て、お前次第だ。頑張れよ!)

(ぽん太、お前、”佑夏のことは諦めろ”って言ってなかったか?)

(オレだって、本音言や、ジンスケと佑夏が結ばれて、オレとも一緒に暮らして欲しいと思ってるのさ。)

 星姫ゆうかは何かを感じた?「今、口を挟んではいけない」という表情になっている。
 本当に聡明な子だ。

(晴れて、お前たち二人が夫婦になった日にゃ、佑夏にも思念を送って”奥様”、”佑夏様”とお呼びするよ。)

(ぽん太、なんで俺のことは呼び捨てなんだ?主人なんだぞ。)

(ジンスケ。お前、オレに様付けして欲しいのか?)

 僕はプッと吹き出してしまう。
 自分が様付けされるなんて、考えただけでもゾッとする。

(いや、遠慮しておくよ。気色悪いって。)

(だろ?ニャハハハハハハハハハハハハハ!)

「ふふふ。中原くん、何、一人でニヤニヤしてるの?変なの。」

 満天の星空の瞬きの下、佑夏はクスクス笑っている。

 ここでも、アランの言うように、”笑顔は広がって”いく。



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