ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第四章 怪奇!化け猫談義

幸せの怪猫

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 ぽん太の傍らにいた楓も、ゴロゴロいい出している。

 怪猫の機嫌も良くなってきたようである。滑らかに話出して、

(何しろ、オレは80年近く風呂に入ってなければ、歯も磨いてねえ。
 身体も口も、さぞや臭かったろうぜ。

 だが、佑夏はずっと笑顔のまま、
 オレを洗ってくれてる間、ニコニコ、まるで楽しいことでもしてるようだったな。

 んでな、風呂から上がったオレを、ドライヤーとかいうヤツで、ブラシを使って乾かしてくれたのさ。)

 佑夏ちゃん、ぽん太の巨体を抱いて家まで連れて来たのか?体力あるな~、いや、思いやりの力かな?

 ぽん太の口調も、さっきまでとは違ってきて、楽しげに、

 (引っ越してきたばかり、まだ荷解きしてねえ段ボール箱がたくさんある部屋で、何故か猫用のケージがあってよ。

「用意いいでしょ?こんなこともあるかと思って、持って来てたの。ゴメン、ちょっとこの中に入ってて。
 アパートここ、本当はペットはダメなのよ。」

 そう言って、あの娘は勉強を始めたんだ。
 ずいぶん遅くまでやってたっけな。

 深夜になって、やっと寝る時間になってよ。

 オレをケージから出しながら、佑夏は、

「キミ、全っ然、騒がないね。前の飼い主さんが、とっても優しい、いい人だったんだね。
 そうでなきゃ、こんなにお行儀良くなれないもの。」

 何ー!そこまで分かるのか?オレは本当におでれーたさ。

 そしてな、オレを「高い高い」のポーズで持ち上げてよ。

「すっごく優しい、カワイイ目だね。よっぽど大事に可愛がられてたんだね。
 愛情を、たくさんもらった顔だよ。こんな風に、かな?」

 今度は、佑夏はオレをギューっと抱きしめてくれたんだ。
 オレは空襲の朝、真白様に裏山で口付けしていただいた時のことを思い出したよ。

 んで、あの子は、またオレを見てな、

「でも、どうして、そんな優しい飼い主さんと離れちゃったんだろ?ご主人様は、きっと今でもキミのことを愛してくれてるよ。」

 うう、嬉しいこと言ってくれるぜ。

 ここで、佑夏は、今の名前を付けてくれるんだ。

「キミ、狸に似てるね?アハッ、カワイ~!名前、”ぽん太”にしよーか?
 今日から、あなたは、ぽん太よ!お~い!ぽん太~!!!前の名前の時のことは、もう忘れようね!!!」

 それからよ、オレをベッドまで運んでくれてよ。

「よし、一緒に寝よーね。ぽん太!」

 布団にオレを入れてくれてな、子守唄を歌って寝かしつけてくれたのさ。
 半端じゃねえくらい心地いい、綺麗な歌声だったよ。

 突然、降って湧いたような自分の幸せが信じられないまま、オレはあまりの心地よさに、気絶するように、眠りに落ちていったんだ。

 人間と一緒に寝たのは78年ぶりだ。
 もう、飼ってもらえることさえ諦めてたオレに、またこんな日が来るたぁ、本当に夢にも思わなかったさ。)

 佑夏ちゃん、君って子は..........。
 僕は感動で震えているのが、自分で分かる。
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