ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

文字の大きさ
79 / 305
第四章 怪奇!化け猫談義

怪猫、姫に出会う

しおりを挟む
 楓は、いよいよ二本の前足でぽん太を抱きしめ、ペロペロ顔をなめている。

 ぽん太も軽く、鼻先を、楓の鼻先に付けて、お礼の合図をしながら、

(時代は昭和から平成、令和とかになっていったな。

 ルメイも、戦争の時の大統領トルーマンも、とうにくたばったってのに、オレの身体には何の変化もねえ。
 相変わらず、不老のまま、苦しみ続けるだけだ。

 そして、去年の四月の夕方な。
 カラスがギャーギャー言ってる中、オレが公園のベンチの上で寝そべっていると、頭の上から女の声がするんだよ。

「もしも~し、そこの王子様~♪」

 とな。

 何のつもりだ?からかってんのか?
 どうせオレのブサイク面見たら、悲鳴上げて逃げ出すんだろう。

 そう思ったオレは、思いっ切り牙と目を剥き出して、「シャーーーーー!!!」
 っと唸ってやったんだがな。

 その女の口から出たのは
「キャー!!!カワイーーーーー!!!!!♡♡」

 という言葉だったのさ。両方の拳を、胸の前で握り締めて絶叫してよ。)

「それが、佑夏ちゃんだったんだな?」

(他に誰がいるってんだ?
 その女を一目見て、オレは最初、真白様があの世から、迎えに来てくれたんだと思ったんだ。

 そのくらいソックリだったのさ。

 夕陽を浴びた白い肌と、優し氣な瞳なんか、真白様そのものだったぜ。

 けどよ、彼女ソイツは肉体を持った生身の人間だった。
 髪に付いてる白い貝殻が、夕焼けにキラキラ光って、やたら、印象に残ってる。

 オレに引っ掻かれるのが怖くないのか、佑夏は両手でオレを抱き上げてくれてな。

「キミ、行くとこ無いんでしょ?ウチにおいでよ。」

 耳を疑ったぜ。
 だが、紛れもなく本当の言葉だった。

 佑夏は一目で、オレが丸っ切りの野良猫じゃねえと見抜いていたっけな。

 あの娘の思考が流れ込んで来ると、小さな頃から、猫と犬がたくさんいる家で生まれ育っていたと分かったよ。
 猫を見慣れていたんだろう。オレの素性も想像がついたようだ。

 なんせ、人間に抱かれたのは、真白様以来、78年ぶりだ。
 まだ、ジタイが信じれねえオレに、佑夏は歩きながら歌を歌って聞かせてくれたんだ。天使みてえな優しい美しい声だったぜ。
 歌の上手さは、真白様よりずっと上だな。

 そしてな、アパートの部屋に入るとよ。オレと一緒に風呂に入ってくれてな。
 オレの身体を丁寧に洗って、歯まで磨いてくれたんだぜ、信じられるか?

 ん?オイオイ、変な想像して興奮すんなよ、ジンスケ!)

「ハハハ!してないって。おかしなこと言うなよ。バ~カ!」

(イ~ヤ、興奮してるな。言ったはずだぜ。オレには隠し事はできねえとな。ニャハハハハ!)

 暗く凄惨な話が続いた中、ようやく僕達は笑顔になって笑い合う。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...