ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第十章 幸せのキャンパスライフ

幸せの北海道

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「風薫る 蝦夷地に立ちて 桜舞う」

 と、詠んでいたのは、つい二日前。

 時に、大学三年生になったばかりのGW明け。

 僕と佑夏、翠に斎藤ミユちゃん、須藤と彼の彼女、そして、佑夏の弟、隼君。
 男女七人で、北海道に行ってきたのである。

 中学二年生なりたての隼君は、もう身長で、姉を追い越している。

 目的地は、札幌と函館の中間に位置する伊達市、そして、そこからほど近い洞爺湖。

 伊達市には、「シュタイナー教育」の教員を育成する、国内唯一の施設があり、勿論、隣接してシュタイナー学校がある。

 ここが、今回の宿泊地だ。

 佑夏は、海外のありとあらゆる教育・知育法を徹底的に研究している。

 シュタイナー教育の他にも、モンテッソーリ教育、イエナプラン教育、ピラミッドメソッド幼児教育など、興味の対象は実に多種多様である。

 どちらかというと、こういう教育法を批判的に教え込まれている県教大ケンキョーの同級生達とは、今一つソリが合わないのは、致し方無いのかも知れない。

 それでも、県教大ケンキョー生である佑夏と、斎藤ミユちゃんは、大学に教育施設の視察という名目で、短期の休学願いを出したところ、簡単に了承されたと言っている。

 僕と翠と須藤は、しょせんは十流学院大ジューガクなので、その辺りは適当である。

 飛行機で、千歳空港まで行って、現地でレンタカーを借りるのが、最も手っ取り早い。
 しかしながら、極度の高所恐怖症であられるのが、我が姫君だ。

 彼女の実家のワゴン車を、僕と、須藤の彼女を除く大学生が交代で運転し、青森県の八戸から苫小牧港まではフェリーに乗る。

 車の免許が無いのは、僕と隼君と、須藤の彼女。
 他の四人は、既に、取得済みだ。

 行きの車中、佑夏の弟はやとくんによる、姉についての「暴露話」は、僕達の爆笑を呼ぶ。

 姫が小六の時、近所の幼稚園児の子が、ジャングルジムのてっぺんに登って下りられなくなり、ジムの鉄棒にしがみついて泣きわめいたと。

 それを見た佑夏は、すぐにジャングルジムに駆け上がり、園児を抱き上げて、下の友達に手渡したまでは良かったのだそうだ。

 しかし、今度は彼女本人が下りられなくなり、園児の再現のように、ジャングルジムにしがみついて大声で泣きわめき、下ろすのに一苦労だったという。

 佑夏の泣き声があまりに大きかったもので、それを聞きつけた人々が、周囲の家からゾロゾロ出て来ると、
 口々に「お嬢ちゃん、大丈夫?」と声をかけて、寄ってたかって助けてくれた、と隼君が語ると、僕達の笑いは最高潮に達する。

「ちょっと!隼~!!!」

 姫は弟を止めようと叫ぶが、この時、ハンドルを握っていたのは彼女本人だったもので、どうしようもない。

 助手席の斎藤ミユちゃんは、「そんな白沢先輩もカワイイ!自分は高い所が怖いのに、子供は助けるのね、優しいわ。」と言いたげな目で、ウットリと佑夏を見つめている。



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