ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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最終章 湖面の誓い

山頂へ続く道

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 大げさに、ロープで引っ張られている山田さん。

 最初は、周囲の目を氣にしてか、恥ずかしそうにしていたが、僕と繋がっているロープを両手で握りしめ、だんだんと楽しそうな表情に変わってきている。

 彼女と腕を組んでいる佑夏は、もとより明るく面白い、あの性格である。家族連れの子供に指差されたりしても、返ってニコニコ顔。

 分かっていたことだが、車山の傾斜は極めて緩く、女性一人、引っ張ったところで、僕はなんともない。

 山田さんは太ってはいても、背も低いし、あまり体重は無いようだ、僕には軽いね。

 それにしても、外国人ハイカーの姿が、東北地方とは桁違いに多い。

 昨今の歴史的円安で、日本を訪れる外国人は急増していると聞いてはいた。
 英語、中国語が日本語に負けないくらい飛び交っている。

 車山駐車場にはバイオトイレがあったのを見た。

 円安だからというだけでなく、この国はトイレが清潔で、どこでも基本、無料なのも、海外から多くの観光客が訪れる要因のようだ。

 ただ、ここのバイオトイレは100円かかるらしい。維持費だって、必要だし、これは仕方ない。

 登り始めて20分くらいすると、椅子のある簡単な休憩所があり、ここで、一息つくことに。

 そして、東山さんから提案がある。

「下りの反対側のルートでね、アナグマが巣穴から出て来る所があるんですよ。
 アナグマは夜行性ですが、なぜか、ここは昼間に出たり入ったりします。

 100%見れる訳ではありませんが、そこで待って見てみますか?」

「ええですな~、アナグマ、見まひょ!」

 真っ先に反応するルミ子さんに、全員が同意する。アナグマ観察会、決定!

「アナグマって、アライグマとはちゃうの?」

 理夢ちゃんの台詞に、ルミ子さんはゲラゲラ笑う。

「全然ちゃうわ!理夢、お前、そんなん言うたら、おとんが泣くで!」

「吉岡さん、アライグマは本来は北米に生息する動物で、日本では特定外来生物に指定された、獰猛で危険な生物です。
 アナグマは日本古来の大人しい生き物ですよ。」

 小林さんが高校生に教えてくれる。

 こんな話をしている間にも、国籍、人種の異なる登山者達が、僕達の脇をすり抜けて登って行く。
 平和だね~。

 しかし、おそらく、ロシアとウクライナの戦争が終わるまで、円安は止まらないのだろう。

 この晴れた秋空の下、日本人だけでなく、様々な国の人々が登山を楽しみ、僕と佑夏は、仲間のサポートまでしてあげている。

 同じ空の下で、今日も戦火に焼かれている国があるなんて、信じられない。
 どうして、人間は常に破滅の道を選ぶのか?

 だけどよくある「神の失敗作は人間だけ」なんて言葉を真実にしたくない。
 少なくとも、佑夏は違う。

 僕自身はどうだ?
 特定の企業の利益の為に生き、自分の給料のことだけ考えるより、国際平和協力団体に就職しないか?今からでも、遅くは無い。

 貧しい家庭に生まれ育った僕は、出世欲など皆無。

 元はと言えば、自分が貧困の中に生まれ、何かと差別されて来たから、誰も分け隔て無く、笑顔になれる世界を作りたかったんじゃないか。

 あるいは、この後、佑夏と訪れることになっているパークロッヂのように、馬と自然で癒される場所に勤めるべきでは?

 こんなことを考えている内に出発の時間に。

 そして、再び歩き始め、山頂に到達するには、一時間もかからなかった。

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