ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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最終章 湖面の誓い

発表

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 昨日の集合場所である、上諏訪駅の裏口に、マイクロバスは到着。
 全員、バスから降りた後、ディーンフジオカ添乗員が、解散を宣言する。

 感極まった理夢ちゃんが、とうとう泣き出してしまい、佑夏と水野さんに、両肩をポンポン叩かれている。

「アホ、何、泣いてるんや?また、いつだって会えるやんか。」

 そう言っているルミ子さんの瞳も、心なしか潤んでいるようだが?

 駅の改札口から消える彼らに手を振り、一先ず、お別れ。

 僕と佑夏は、また二人きりになり、上諏訪駅のコインロッカーに荷物を預けて、再び諏訪湖へと向かう。

 さすがのヤマネ姫も、ちょっと言葉少な、でも表情はいつも通りの微笑を湛えている。

 湖畔に辿り着いた僕達は、さらに、昨日見た二本組の鉄塔へと歩いて行く。

「アハハ、やっぱりドキドキしちゃうね♪」

 佑夏は、利き腕の左手で胸を抑える。

 小三になったばかりの春、震災の瓦礫の山で、真帆さんに誓った教師になる夢、今、ここで全てが決まるのだ、どれだけ緊張しようと無理もない。

 彼女は、真帆さんを失ってから、教職に就くことだけを考えて、これまでの人生の何もかもを、打ち込んで来たんだ。

 何か、励ましの言葉をかけたい、しかし、今は何を言うべきでもないよね。

 僕の手が勝手に動き、佑夏の空いている右手の甲を取る、出会いから三年半、初めて、この子の手を握っている。

「ん?仁助さん。ありがと♪」

 嫌がっていない、あ~良かった!って、こんな時に、よそう。

 そして、鋭角の鉄塔の前に立った二人、僕は、そっと握った手を離す。
 


 ヤマネ姫は、湖面の方向を向いてスマホを取り出し、画面操作を始める。

 そうだよ、佑夏ちゃん、もし不合格でも、大海に下るヤマメのように、サクラマスになればいい。
 新しいスタートと考えればいいんだ。

 だけど、やっぱり、合格して欲しいな.......。

 彼女の左手の人差し指の動きが止まった........、合格発表の画面に辿り着いたのか。

 合格ヤマメか?不合格サクラマスか........?思わず、僕は息を飲む。

 佑夏が、僕に振り向いて笑顔!合格したのか!?

 しかし、次に彼女の口から出た言葉は.......、

「♪ざんね~ん!不合格サクラマスで~す!先生になれませんでした~!」

 !!!!!佑夏ちゃん、そんな.......。

 津波で、真帆さんを失って、まだ幼い少女の頃から頑張って来た夢、それが、今、ここで潰えたのである。

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