現実放棄し異世界へ

井出 遥玖

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第一章

一ー三

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 ケイは真っ暗なのによく見える不思議な道を歩きながら、これまでの人生を振り返っていた。

ーーーーーー
 はて?思い出せないことがあるのは何故か?
 幼い頃はかなり活発だったからか様々な経験をした。
 小学校高学年の頃から大人しくなった。
 中学生でオタク気味になり、中二病にかかった。
 高校生になってからは、学校と関係ない勉強をし、中学生の頃よりもオタクに近くなり中二病が悪化した。
 うん。ここまでは覚えている。じゃあ、

 俺は何処に住んでいた?

 それだけじゃない。
 俺の親の名前と顔は?
 俺はどんな人たちと会った?その人たちの顔と名前は?
 ふっ、答えは簡単。

 わからない。

 それだけだ。
 それに、俺は何で自殺した?それもわからない。
 うーん……
 しばらく考えた末にケイは結論を出した。
 まあ、いっか。と。
 大事なのはこれからのことだ。これからをどう過ごすかだ。と開き直った。
 そして、ケイはこう考えた。
 自殺したってことは、俺は目標が無く、生き甲斐を感じることがなかったのだろう。
 だから今回は、自分の命を賭けたゲームをしよう。
 これから行くのはファンタジー世界だ。ゲームやアニメのキャラのように、モンスターを倒したり、人助けをしたり……人助けは、別にいいかな?
 とにかく、命がけのスリルを楽しもう‼︎それが俺の目標だ。
 そう考えているとケイの耳に先程の死神の声が聞こえてきた。
「ケイ~!!」
「ん?」
 さっきの死神か?ん、俺のナイフは特殊な魔法が使えるのか。よし、
 ストレージを開いてみる。
「なんか色々入ってるな…」
 ストレージには装備品だけでなく、リュックや水も入っていた。その中から目当ての魔石を見つけると掴んでみる。
 瞬間、フラッシュバックのようにその魔法の使い方がわかった。
「なるほど、こういう感じか…」


 道の先に光が見えてきた。そろそろ、到着のようだ。
 しばらく進むと、光と影の切り替わっているところで止まる。大きく深呼吸。フードを目深に被り、そして、小さく笑みを浮かべて…
人生開始ゲームスタート
 光の世界に足を踏み出した。
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