現実放棄し異世界へ

井出 遥玖

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第二章

二ー七

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「ケイ、居たぞ。オークだ」
「ん?どれどれ…」
 隠れている草木の隙間からエルナが指差した先を見ると三体のオークが居た。三角形を描くように座りこみ、何やら話をしているようで警戒が薄い。今なら奇襲出来そうだ。
「どうする。一体は奇襲で倒せると思うが?」
「じゃあ、まず一体は頼む。そっちに目が行ってる間にオレも一体倒す」
「了解。じゃあ三〇秒後に奇襲する」
「わかった」
 俺は返事を聞くと、隠蔽魔法の一つ潜伏を使う。
『ハイド』
 心の中で魔法を唱えると、俺の姿にノイズが入りぼんやりとしか見えなくなった。この魔法は暗い場所や人や物が多い場所ならほぼバレることはない。明るい場所でも相当影が薄くなる。
 この魔法を使いながら草木の陰を進み、三体いるオークの内一体の後ろを取る。
 時間だ。
 俺は後ろを取ったオークに素早く忍び寄ると、腰にあるナイフを逆手で抜きオークの首を切り裂いた。
 上手く血管を切れたのか傷口からはドクドクと血が流れ、切られたオークはバタッとうつ伏せに倒れた。
 他二体のオークは何が起きたのかわからなかったようだが、俺を敵と認識出来たようで武器を取り威嚇するような声を上げて来た。
 しかし、遅い。
 オークが攻撃に転じる前に、俺とちょうど反対側からエルナが飛び出してきた。
 本当に剣を持っているのか?と言いたい程のスピードでオークに近づくと、
「てあーーーッ!!」
 未だにエルナの接近に気付かないオークに対して棒きれでも振るかのように剣を振るい、オークの右肩から左脇までを切り分けた。
 残ったオークはようやくエルナもいることに気付く。オークは俺とエルナどちらを攻撃するか迷っているようだったので、こちらから攻撃する。
 オークは首に向かってくる俺のナイフを手に持っている巨大バットのような棍棒で受け止める。
 俺は攻撃後、無理に体勢を戻さず勢いのままにその場を離れる。どうせ俺は囮。隙を作るだけで充分だ。
「今だ!エルナ‼︎」
 その隙を逃さずエルナが再び剣を振るう。このオークもエルナの手によって綺麗な断面を付けられた。
 へー。骨の中ってあんな風になってるんだなぁ。じゃなくて、剥ぎ取りしないとな。売るために。
 討伐の証明はカードを専用の道具で調べると分かるため、一々気にしなくていい。
「うーん。オレの魔法を使うまでもなかったな」
「そう言えばエルナの魔法の名前は?」
「『強化』詳細な効果は、自分の全身体能力を向上、上げる身体能力の種類を減らすことで、より効果が得られる。だ」
 確かに今回は使う時がなかったな。まあ魔法は魔力を使うから無理に使用すべきではないからな。それならそれで問題ない。
 さて、そろそろ次を探しに行くかな?
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