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第三節 〜サガンの街〜
025 一面の秋植えの芽吹く麦畑
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~サガンの街~ 編 突入です。
でもまだ街には入りません。
その前に敵キャラとの遭遇です。すれ違うだけですが。
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
「アンタら何を言ってんだ?」
とサチ。
「え? いたいけな子供がただパンツを欲するのを貴様はそれさえも許さぬと? どんだけ狭量で非道なゲスヤローなんだ。いい加減オレは泣くぞ! 幼児虐待ネグレクトで通報してやるからな」
「何を言ってんだ? 小僧」
「それよりサッちゃん、あれはなに?」
と、視界には捉えることが出来るが、まだまだ遠い前方向を指し示し「森から抜け出て来た魔物から守る為の防波堤的なもの? それとも城壁? 市壁? 城郭? どちらにしても、すっごく高くてずっと向こうまで続いてるのね。街ならどれだけ大きいんでしょう。もしかして大都会?」
とちょっと嬉しそうにハナ。
サチは今さら気づいたらしく、身を乗り出し、眼鏡を外し目を細めて注視した。と、何か驚いたのか一瞬だけ固まり呟いた。
「あの街は……サガンか、でもどうして」と。
視界の端から端までほぼ一直線に城壁が連なっており、両端とも霞んで何処まで続いているのか見当もつかない。東京ドーム何個分だと、教えられても全く広さが把握できない単位を思い浮かべて頭を捻る。
あの城壁の向こう全体が街ならとんでも無い大きさだな。こちら側とは、まるで噂に聞く東京都と埼○県との国境のような隔絶と落差だ。
壁からそこだけ大きく迫り出た建物の正面に城門らしきものがある。そこまで丘を越え蛇行しながら僕らが立つ、足元の道は続いている。
「ハムくん、降ろして」
「大丈夫か?」
「ん、ちょっと歩いてみようかなって。太陽の下に出たからかな、ちょっと元気出てきた。
ちょっと冷たいけど、気持ちいい風だねハムくん」
と、鼻先を上に向け、空気を食べるようにパクパクさせ、
「うん、美味しい」
なによりです。
僕はすごくホッとしている自分を感じる。
ハナも少しホッとした顔で僕に微笑んでいるからかな。
それはここ数ヶ月は一切見せる事のなかった顔だったから。
かわってサチの顔色だけが悪く、足取りも重そうなのは何故? 如何でもいいんだけどさ。
じわじわと、やっと“忌溜まりの深森”を抜け出たんだと、今更ながらしみじみ染みてくる。願うは、ハナの内側にこびり着いた澱も少しずつでもいいから溶け出していくといいな。まだ無理かな? でも森を抜け出せたんだ。何ヶ月も掛かったけど。
ん? 冷たい風? 何ヶ月? 一面の秋植えの芽吹く麦畑?
確かこの国の落国の民の長の里に行くはずだったよな。僕はサチを見る。顔を逸らすなバカサチ、薄幸サチ。
まあいいや。僕は息を吐き、気持ちを新たにする。大事なこと、僕らは“忌溜まりの深森”を抜けた。でもまだ抜けたばかりだって事。
僕らが森で学んだもの、どんな細やかな異差も見逃さない。見なかった事にしない。危険はいつも細やかな異差から始まるものだから。
でも今回は細やかでは無いんだけどな、たぶん何時ものサチならとっくに気づいて目を細めるはずなのにな。彼女も森を抜けて気が緩んでいるのかも知れない。それはそれで危険な兆候だな。
遠足は家に帰る迄が遠足と言うからな。遠足じゃ無いけど。家にも着かないけど。
「そうだとしても、早めに此処を抜けて街に入った方がいいだろうな。せっかくの気分を台無しにするようで申し訳ないんなけどさ」
と僕。ごめんなハナ。もうちょっと今のハナの顔を見ていたかったんだけど。
指差す方向、高い丘の上から見下ろす事で見えてきた現況。
牧歌的な丘陵が連なる晩秋の麦畑のあちこちに“忌溜まりの深森”から続く幾重の新芽を踏み倒して進む黒い逕路と、その終わりの大きな踏みと荒あされた戦闘の跡。そしてその跡の幾つかの筋は、遠くに見える城壁近くまで届いているようで、戦闘の苛烈と逼迫感が伝わって来ていた。
その内の一つにはいまだ溶解中な象ほどの大きさの肉塊も横たわっている。
その肉塊に群がっているのも農夫ではなさそうだった。鎧を着込んでいる者もいるし、手にしているのは鍬ではなく大剣だったりする。
「有り得ない……あの逕路の全てが魔物の侵攻の跡だと言うのか? それも短期間に集中して“忌溜まの深森”を抜けて人の領域に襲いかかるなど……。“遷”の深度がそこまで濃くなっている? 不味いか?」
とサチ。
なんか、サチが酷く驚愕してる。普通は“忌溜まりの深森”から魔物は出てこないのかな? そしてまた固まって考え込んでいるサチ。そして出ました謎ワード“遷”って……?
と、鋭い汽笛の音が左より響き、三人の意識は音の発生源に向けられる。汽笛だって⁉
灰色で処所にリアルな濃度で黒が混じる蒸気の雲。甲高く特徴的な音が鋭く長く鳴る。城壁の上を汽車が走っている。
「エリエル様、先ほどの答えです。あれは防護堤でもあり、市街壁でもあります。でもそれは後付けで、本来の目的はあの上にレールを敷いた、蒸気機関列車が走る大陸周回高架軌道です」
とサチ。
見ていると五十の数を軽く超え、延々と連なる貨物を引っ張る蒸気機関が遅々として進んでくる。
本当に蒸気機関車なんだなと感心する三人。見ると貨物の屋根の上で動く人影がある。結構多い。一つの貨物車に四人は居そうだ。
「冒険者だ。対魔物や盗賊への護衛だ。大規模輸送団に特化した“丙一種”だな。高級取りのエリートだ」と、何故か悔しそうにサチ。
冒険者にも純然たる身分の上下があるらしい。そしてサチはたぶん下だ。決定的に。可哀想に。
「今何か私を見下したか? 殺すぞ」
首を竦めてみせる僕。なるほど速度が遅い、これなら高価な物資やら何やらを頂こうと、一丁襲ってみようかと考える強盗だの魔物が居ても可笑しくはないだろう。そうなったら多大な被害が懸念される。
それでも大陸間の大量運輸のメリットは大きく、利潤が桁違いだと容易に想像できる。襲撃防止、撃退するに値する費用が掛けられるって事だろう。そしてあの高さが決定的なアドバンテージとなっている。
あの高架は大陸を一周しているとサチがハナに説明している。ちょっと自慢げに。自慢してもいい凄い技術力だと心底思う。あの城壁、高架軌道の強度に。あの重そうな車列群を載せてもビクともしない。
スケール的に目算だが高さも二十メートルに届きそうだ。元世界の現代の技術でも容易には構築出来ないだろう技術が凝縮されている。
でもその割に機関車は……酷くくたびれている様が見て取れた。
駆動車輪の数も多く、ボイラーも大型だ。重機関車だろう。でも煙には煤が多く黒い。真っ当な汽車なら排気は全て真っ白な蒸気で煤など吐く事は無い。
煙が黒いのは燃料の石炭の純度が悪いのか、釜焚き練度が低いのか、汽車自体の性能が悪いのか? 魔法のある世界でまさか本当に石炭を燃料としているのだろうか?
歯車が噛み合わない雑音まじりの駆動音からして汽車の整備が相当に悪いと判断する。パワーも速度もお粗末。
近付いてきた事で見えてきたのは汽車の各部に施された修理の跡。それもやっつけ感が漂うお粗末感満載の技術の拙さ。
まあ、見た感じはゴッツくて野性味あふれたマニアック的にはかっこいいいと言えなくもないが。でも万里の長城型の高架と比べて酷くアンバランスだった。
そうなのだ。高架軌道に目立った補修の跡が皆無な事に改めて驚愕する。
「高架軌道は一千年以前からの“尊遺物”だ」
「おかしいな、駅に停まらない」
と、サチが視線を投げる方向には高架の壁から張り出した城門扉つきの建築物があるが、あれが駅なのだろうか。
まあ、停まらないのはアレだな、麦畑に刻まれた魔物が暴れたであろう跡を見て、さもありなんと思った。“君子危うきに近寄らず”だよね。
「あの高架軌道の向こう側が全て街と言う訳ではありません。駅を中心として軌道に寄生する形で反対側に新たな周回市外壁を形成して、街の形態を維持しています。“蜘蛛の糸”を生産する職人とその物流を担う商人街です。
この都市は唾棄小僧がダメにした“花魁蜘蛛の糸”の唯一の一大生産地です。花魁蜘蛛《クイーン》を飼いならす技術もその糸を人が利用できる生糸に加工する技術も、その全てが門外不出の秘匿された“尊遺物”であると聞いています。ですので他では産出することが出来ません。
流通が止まれば各所で支障が出るはず……、それだけあの糸は大陸全土で需要が高い。それを……やはり、“遷”か?」
最後は独り言のようなサチの街案内。またまたでました“遷”《うつり》。なんかトラブルの予感。
そんなこったと、思ってはいたけどね。
溜息しか出ないよ。
その時、右手後方の“忌溜まりの深森”の縁の一部が爆発するように小さく無い木々が弾け飛び、舞い上がる粉塵の中から大型の魔物が飛び出してきた。猪型だ。なんか某有名アニメ映画のワンシーを思い出す。
人の警戒心を刺激するブザーホーンが大音量で響く。
元世界でスマートフォンから勝手に大音量で鳴る緊急地震警報に似ていた。あれ、ちっとも役に立ってなかったよな。ただ怖いだけで。そんな警告ホーン。
丘陵に隠れてわからなかったが、突然といった感じで鎧に身を固め、得物を手にした兵隊たちの隊列が湧いて出て、魔物に向かっていく。まだ短い麦を踏み潰して。
例え真横だったとは言え、最初に気づいた時は既に僕らから十数メートルに迫っており、突然あらわれたように感じた。その数も三十名弱と数が多いというのに。マジか? 全然気づかなかった。索敵が効かなかった? 森を抜けて気が緩んだのか?
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告、
すいません、魔物に特化しすぎていました。対人対物に比重をシフトします。
と結論 ∮〉
そう言う事なの? 頼むよ“似非”さん。多分これからの“厄介”は人だからね。と、自分で言っておいて何だけど、萎える。
僕らの脇を駆け抜けていく戦闘集団。その最後尾のピカピカした目に刺さる系ソリッドレッドなフルプレートが、そのフルフェイスな兜のスリットから眼光鋭く僕をひと睨にらみして駆け抜けていく。
その前を先行する統一感のない装備を身につけた集団。金属鎧もいるが革鎧もいる。そしてどこか追い立てられるような悲壮感が漂っていた。
追い立ててるのは誰だって? 決まってるじゃん。ソリッドレッドだよ。だってヤツだけ笑ってたもん。目がさ。そしてお約束どおり赤いヤツは三倍早く動いていた。そうじゃなくちゃね。
「領兵でも冒険者でもない? あれは皆全て傭兵だ。それも驚くほど練度が低い。最後尾の者だけは領主所属の騎士だと思うが、どうなっている?」
と、ひとり呟くサチ。
傭兵団各員の皆様の装備は所々機能を失うほどボロボロで、包帯を巻いた箇所からまだ赤黒い血が滲んでいた。似非さんが索敵に失敗した訳は、ただみなさんが丘陵の影に隠れていた訳ではなく、ただ単に地面に倒れ込んでいたっぽい。疲れ切って? 例のソリッドレッド以外は、だろうけど。
なんかさ、奴ってさ、赤ヘルの中が“金髪フワフワで碧眼が涼しゲ”なら笑う草。
魔物の咆哮が響き渡る。
早くも魔物に到達した兵団が突貫中。マジ弩迫力っパない。そう言えば他人が魔物に挑んで戦うのは初めて見るな。
なんか、ほんと他人事な。感じるのは“まるで怪獣映画そのもの”。それも伝統の対自衛隊ではなく、マンモスに挑む石器槍装備の片肩掛け毛皮製胴巻きにヒゲモジャ原人達の絵を思い浮かべてしまったのはゴメンナサイ。
他人事と思えていない人が約一名。ハナが“火縄銃型の魔杖”を肩掛けから外し駆け出そうとした。それを細い腕を掴むことで止め、
「落ち着け、他人事だ」
ハナの険しく釣り上がった目が途端に緩む
「……そうだな、そうゆうことだな」
「な、何が起こっている」
と一人だけ興奮のサチ。
「どうなっているって。抜けてなかったって事だろ、まだ。“忌溜まりの深森”から」と僕。
「因果な事ね」とハナ。
「そう言う事ではありません。何故に“非合法傭兵共が此処にいるのかって事です。本来なら冒険者ギルドの専属対魔物部隊か冒険者チーム、街への襲撃であるならば魔物敵兵に拘らず領兵が事に当たるはずです。それでも手冒険者が一人もいないのは可笑しいです」
「それは、ヨンドコロ無い事情があるんじゃない?」とハナ。
後で判明したのだけど、正にそれだった。イタシカタない諸々。
「そうだな、取り合えずさ、逃げるか」と僕。
ハナを再びお姫様ダッコで抱え、街? 駅? まで続く小道を掛ける。
ハナは“僕の腕の中でアクビを一つして、瞳を瞑る。もう飽きたんだろう。“火縄銃型の魔杖”を腕に抱え。
今更だけど、この長いの、邪魔。
サチの眉間だけが強張っていた。
お腹減ったな。どうでもいいけど、街には美味しいものあるかな? 商人街って言ってたし、期待できる? もう魔物肉は拒否する。絶対。あとパンツは絶対買う。絶対だ。
「お風呂入りたい。あとビスケット」
とハナ。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
でもまだ街には入りません。
その前に敵キャラとの遭遇です。すれ違うだけですが。
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
黒い◆が人物の視点の変更の印です。
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
「アンタら何を言ってんだ?」
とサチ。
「え? いたいけな子供がただパンツを欲するのを貴様はそれさえも許さぬと? どんだけ狭量で非道なゲスヤローなんだ。いい加減オレは泣くぞ! 幼児虐待ネグレクトで通報してやるからな」
「何を言ってんだ? 小僧」
「それよりサッちゃん、あれはなに?」
と、視界には捉えることが出来るが、まだまだ遠い前方向を指し示し「森から抜け出て来た魔物から守る為の防波堤的なもの? それとも城壁? 市壁? 城郭? どちらにしても、すっごく高くてずっと向こうまで続いてるのね。街ならどれだけ大きいんでしょう。もしかして大都会?」
とちょっと嬉しそうにハナ。
サチは今さら気づいたらしく、身を乗り出し、眼鏡を外し目を細めて注視した。と、何か驚いたのか一瞬だけ固まり呟いた。
「あの街は……サガンか、でもどうして」と。
視界の端から端までほぼ一直線に城壁が連なっており、両端とも霞んで何処まで続いているのか見当もつかない。東京ドーム何個分だと、教えられても全く広さが把握できない単位を思い浮かべて頭を捻る。
あの城壁の向こう全体が街ならとんでも無い大きさだな。こちら側とは、まるで噂に聞く東京都と埼○県との国境のような隔絶と落差だ。
壁からそこだけ大きく迫り出た建物の正面に城門らしきものがある。そこまで丘を越え蛇行しながら僕らが立つ、足元の道は続いている。
「ハムくん、降ろして」
「大丈夫か?」
「ん、ちょっと歩いてみようかなって。太陽の下に出たからかな、ちょっと元気出てきた。
ちょっと冷たいけど、気持ちいい風だねハムくん」
と、鼻先を上に向け、空気を食べるようにパクパクさせ、
「うん、美味しい」
なによりです。
僕はすごくホッとしている自分を感じる。
ハナも少しホッとした顔で僕に微笑んでいるからかな。
それはここ数ヶ月は一切見せる事のなかった顔だったから。
かわってサチの顔色だけが悪く、足取りも重そうなのは何故? 如何でもいいんだけどさ。
じわじわと、やっと“忌溜まりの深森”を抜け出たんだと、今更ながらしみじみ染みてくる。願うは、ハナの内側にこびり着いた澱も少しずつでもいいから溶け出していくといいな。まだ無理かな? でも森を抜け出せたんだ。何ヶ月も掛かったけど。
ん? 冷たい風? 何ヶ月? 一面の秋植えの芽吹く麦畑?
確かこの国の落国の民の長の里に行くはずだったよな。僕はサチを見る。顔を逸らすなバカサチ、薄幸サチ。
まあいいや。僕は息を吐き、気持ちを新たにする。大事なこと、僕らは“忌溜まりの深森”を抜けた。でもまだ抜けたばかりだって事。
僕らが森で学んだもの、どんな細やかな異差も見逃さない。見なかった事にしない。危険はいつも細やかな異差から始まるものだから。
でも今回は細やかでは無いんだけどな、たぶん何時ものサチならとっくに気づいて目を細めるはずなのにな。彼女も森を抜けて気が緩んでいるのかも知れない。それはそれで危険な兆候だな。
遠足は家に帰る迄が遠足と言うからな。遠足じゃ無いけど。家にも着かないけど。
「そうだとしても、早めに此処を抜けて街に入った方がいいだろうな。せっかくの気分を台無しにするようで申し訳ないんなけどさ」
と僕。ごめんなハナ。もうちょっと今のハナの顔を見ていたかったんだけど。
指差す方向、高い丘の上から見下ろす事で見えてきた現況。
牧歌的な丘陵が連なる晩秋の麦畑のあちこちに“忌溜まりの深森”から続く幾重の新芽を踏み倒して進む黒い逕路と、その終わりの大きな踏みと荒あされた戦闘の跡。そしてその跡の幾つかの筋は、遠くに見える城壁近くまで届いているようで、戦闘の苛烈と逼迫感が伝わって来ていた。
その内の一つにはいまだ溶解中な象ほどの大きさの肉塊も横たわっている。
その肉塊に群がっているのも農夫ではなさそうだった。鎧を着込んでいる者もいるし、手にしているのは鍬ではなく大剣だったりする。
「有り得ない……あの逕路の全てが魔物の侵攻の跡だと言うのか? それも短期間に集中して“忌溜まの深森”を抜けて人の領域に襲いかかるなど……。“遷”の深度がそこまで濃くなっている? 不味いか?」
とサチ。
なんか、サチが酷く驚愕してる。普通は“忌溜まりの深森”から魔物は出てこないのかな? そしてまた固まって考え込んでいるサチ。そして出ました謎ワード“遷”って……?
と、鋭い汽笛の音が左より響き、三人の意識は音の発生源に向けられる。汽笛だって⁉
灰色で処所にリアルな濃度で黒が混じる蒸気の雲。甲高く特徴的な音が鋭く長く鳴る。城壁の上を汽車が走っている。
「エリエル様、先ほどの答えです。あれは防護堤でもあり、市街壁でもあります。でもそれは後付けで、本来の目的はあの上にレールを敷いた、蒸気機関列車が走る大陸周回高架軌道です」
とサチ。
見ていると五十の数を軽く超え、延々と連なる貨物を引っ張る蒸気機関が遅々として進んでくる。
本当に蒸気機関車なんだなと感心する三人。見ると貨物の屋根の上で動く人影がある。結構多い。一つの貨物車に四人は居そうだ。
「冒険者だ。対魔物や盗賊への護衛だ。大規模輸送団に特化した“丙一種”だな。高級取りのエリートだ」と、何故か悔しそうにサチ。
冒険者にも純然たる身分の上下があるらしい。そしてサチはたぶん下だ。決定的に。可哀想に。
「今何か私を見下したか? 殺すぞ」
首を竦めてみせる僕。なるほど速度が遅い、これなら高価な物資やら何やらを頂こうと、一丁襲ってみようかと考える強盗だの魔物が居ても可笑しくはないだろう。そうなったら多大な被害が懸念される。
それでも大陸間の大量運輸のメリットは大きく、利潤が桁違いだと容易に想像できる。襲撃防止、撃退するに値する費用が掛けられるって事だろう。そしてあの高さが決定的なアドバンテージとなっている。
あの高架は大陸を一周しているとサチがハナに説明している。ちょっと自慢げに。自慢してもいい凄い技術力だと心底思う。あの城壁、高架軌道の強度に。あの重そうな車列群を載せてもビクともしない。
スケール的に目算だが高さも二十メートルに届きそうだ。元世界の現代の技術でも容易には構築出来ないだろう技術が凝縮されている。
でもその割に機関車は……酷くくたびれている様が見て取れた。
駆動車輪の数も多く、ボイラーも大型だ。重機関車だろう。でも煙には煤が多く黒い。真っ当な汽車なら排気は全て真っ白な蒸気で煤など吐く事は無い。
煙が黒いのは燃料の石炭の純度が悪いのか、釜焚き練度が低いのか、汽車自体の性能が悪いのか? 魔法のある世界でまさか本当に石炭を燃料としているのだろうか?
歯車が噛み合わない雑音まじりの駆動音からして汽車の整備が相当に悪いと判断する。パワーも速度もお粗末。
近付いてきた事で見えてきたのは汽車の各部に施された修理の跡。それもやっつけ感が漂うお粗末感満載の技術の拙さ。
まあ、見た感じはゴッツくて野性味あふれたマニアック的にはかっこいいいと言えなくもないが。でも万里の長城型の高架と比べて酷くアンバランスだった。
そうなのだ。高架軌道に目立った補修の跡が皆無な事に改めて驚愕する。
「高架軌道は一千年以前からの“尊遺物”だ」
「おかしいな、駅に停まらない」
と、サチが視線を投げる方向には高架の壁から張り出した城門扉つきの建築物があるが、あれが駅なのだろうか。
まあ、停まらないのはアレだな、麦畑に刻まれた魔物が暴れたであろう跡を見て、さもありなんと思った。“君子危うきに近寄らず”だよね。
「あの高架軌道の向こう側が全て街と言う訳ではありません。駅を中心として軌道に寄生する形で反対側に新たな周回市外壁を形成して、街の形態を維持しています。“蜘蛛の糸”を生産する職人とその物流を担う商人街です。
この都市は唾棄小僧がダメにした“花魁蜘蛛の糸”の唯一の一大生産地です。花魁蜘蛛《クイーン》を飼いならす技術もその糸を人が利用できる生糸に加工する技術も、その全てが門外不出の秘匿された“尊遺物”であると聞いています。ですので他では産出することが出来ません。
流通が止まれば各所で支障が出るはず……、それだけあの糸は大陸全土で需要が高い。それを……やはり、“遷”か?」
最後は独り言のようなサチの街案内。またまたでました“遷”《うつり》。なんかトラブルの予感。
そんなこったと、思ってはいたけどね。
溜息しか出ないよ。
その時、右手後方の“忌溜まりの深森”の縁の一部が爆発するように小さく無い木々が弾け飛び、舞い上がる粉塵の中から大型の魔物が飛び出してきた。猪型だ。なんか某有名アニメ映画のワンシーを思い出す。
人の警戒心を刺激するブザーホーンが大音量で響く。
元世界でスマートフォンから勝手に大音量で鳴る緊急地震警報に似ていた。あれ、ちっとも役に立ってなかったよな。ただ怖いだけで。そんな警告ホーン。
丘陵に隠れてわからなかったが、突然といった感じで鎧に身を固め、得物を手にした兵隊たちの隊列が湧いて出て、魔物に向かっていく。まだ短い麦を踏み潰して。
例え真横だったとは言え、最初に気づいた時は既に僕らから十数メートルに迫っており、突然あらわれたように感じた。その数も三十名弱と数が多いというのに。マジか? 全然気づかなかった。索敵が効かなかった? 森を抜けて気が緩んだのか?
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告、
すいません、魔物に特化しすぎていました。対人対物に比重をシフトします。
と結論 ∮〉
そう言う事なの? 頼むよ“似非”さん。多分これからの“厄介”は人だからね。と、自分で言っておいて何だけど、萎える。
僕らの脇を駆け抜けていく戦闘集団。その最後尾のピカピカした目に刺さる系ソリッドレッドなフルプレートが、そのフルフェイスな兜のスリットから眼光鋭く僕をひと睨にらみして駆け抜けていく。
その前を先行する統一感のない装備を身につけた集団。金属鎧もいるが革鎧もいる。そしてどこか追い立てられるような悲壮感が漂っていた。
追い立ててるのは誰だって? 決まってるじゃん。ソリッドレッドだよ。だってヤツだけ笑ってたもん。目がさ。そしてお約束どおり赤いヤツは三倍早く動いていた。そうじゃなくちゃね。
「領兵でも冒険者でもない? あれは皆全て傭兵だ。それも驚くほど練度が低い。最後尾の者だけは領主所属の騎士だと思うが、どうなっている?」
と、ひとり呟くサチ。
傭兵団各員の皆様の装備は所々機能を失うほどボロボロで、包帯を巻いた箇所からまだ赤黒い血が滲んでいた。似非さんが索敵に失敗した訳は、ただみなさんが丘陵の影に隠れていた訳ではなく、ただ単に地面に倒れ込んでいたっぽい。疲れ切って? 例のソリッドレッド以外は、だろうけど。
なんかさ、奴ってさ、赤ヘルの中が“金髪フワフワで碧眼が涼しゲ”なら笑う草。
魔物の咆哮が響き渡る。
早くも魔物に到達した兵団が突貫中。マジ弩迫力っパない。そう言えば他人が魔物に挑んで戦うのは初めて見るな。
なんか、ほんと他人事な。感じるのは“まるで怪獣映画そのもの”。それも伝統の対自衛隊ではなく、マンモスに挑む石器槍装備の片肩掛け毛皮製胴巻きにヒゲモジャ原人達の絵を思い浮かべてしまったのはゴメンナサイ。
他人事と思えていない人が約一名。ハナが“火縄銃型の魔杖”を肩掛けから外し駆け出そうとした。それを細い腕を掴むことで止め、
「落ち着け、他人事だ」
ハナの険しく釣り上がった目が途端に緩む
「……そうだな、そうゆうことだな」
「な、何が起こっている」
と一人だけ興奮のサチ。
「どうなっているって。抜けてなかったって事だろ、まだ。“忌溜まりの深森”から」と僕。
「因果な事ね」とハナ。
「そう言う事ではありません。何故に“非合法傭兵共が此処にいるのかって事です。本来なら冒険者ギルドの専属対魔物部隊か冒険者チーム、街への襲撃であるならば魔物敵兵に拘らず領兵が事に当たるはずです。それでも手冒険者が一人もいないのは可笑しいです」
「それは、ヨンドコロ無い事情があるんじゃない?」とハナ。
後で判明したのだけど、正にそれだった。イタシカタない諸々。
「そうだな、取り合えずさ、逃げるか」と僕。
ハナを再びお姫様ダッコで抱え、街? 駅? まで続く小道を掛ける。
ハナは“僕の腕の中でアクビを一つして、瞳を瞑る。もう飽きたんだろう。“火縄銃型の魔杖”を腕に抱え。
今更だけど、この長いの、邪魔。
サチの眉間だけが強張っていた。
お腹減ったな。どうでもいいけど、街には美味しいものあるかな? 商人街って言ってたし、期待できる? もう魔物肉は拒否する。絶対。あとパンツは絶対買う。絶対だ。
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とハナ。
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弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
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第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
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