194 / 228
Chap.17 ロックンキャロルでワルツを
Chap.17 Sec.5
しおりを挟む
時間にして、10分ほど。気づけば髪は纏めあげられ、テーブルの上の映像は、さらさらと崩れる砂のように消えていった。
「——はい、できあがり」
のぞきこむようにして顔を下げたティアを、彼女の黒い双眸が見上げる。わずかに開かれた唇が、「この、〈ものがたり〉は……」言葉の先を探していた。微笑を携えたティアは、憂いを帯びた瞳で、
「うん、じつはね……僕も、この物語の結末はまだ考えてないんだ」
「………………」
「お姫様は、どうするかな? もしかしたら、お姫様が残りの魔物をやっつけて、最後の魔王まで倒しちゃうかも?」
「………………」
「それとも、お姫様は、誰かの絶望の闇を祓おうとするのかな?」
「……てぃあ、」
「——アリスちゃんは、どう思う?」
「………………」
彼女の眉は、困惑に歪んでいる。そこから一度、目を離して、「あのね、アリスちゃん」ティアは姿勢を正した。
「……僕はね、正直、王子たちのことはどうでもいいんだ。僕がこの物語の聴き手だったら、巻き込まれたお姫様なんてどう考えても可哀想すぎるし、“そんなところ、早く逃げて!”って言ってあげたい」
「………………」
「……このままだと、この物語のなかの“魔法遣い”は、お姫様のことが大好きだから……お城で、ずっと一緒に暮らせますように——って、お姫様に魔法をかけてしまう気がするんだよ。まったく、この“魔法遣い”、とっても身勝手だね?」
勿忘草色の淡い眼が、いたわるように細められる。
「こんなめちゃくちゃな物語の舞台だから、“聴き手の僕”だけは、お姫様の一番の味方でありたい。……だからね、聞かせて? 僕は、物語の舞台に上がって、この“魔法遣い”を倒すべきかな? 不思議な物語に迷い込んだお姫様を、現実に連れ戻してあげるべき?」
優しい微笑みのうえで、ほんのすこし瞳に哀しみを浮かべ、——けれども、それよりもずっと強い意志を灯し、
「きみが望む結末を、僕に教えて。どんな願いであっても、きっと叶えてみせるから」
「——はい、できあがり」
のぞきこむようにして顔を下げたティアを、彼女の黒い双眸が見上げる。わずかに開かれた唇が、「この、〈ものがたり〉は……」言葉の先を探していた。微笑を携えたティアは、憂いを帯びた瞳で、
「うん、じつはね……僕も、この物語の結末はまだ考えてないんだ」
「………………」
「お姫様は、どうするかな? もしかしたら、お姫様が残りの魔物をやっつけて、最後の魔王まで倒しちゃうかも?」
「………………」
「それとも、お姫様は、誰かの絶望の闇を祓おうとするのかな?」
「……てぃあ、」
「——アリスちゃんは、どう思う?」
「………………」
彼女の眉は、困惑に歪んでいる。そこから一度、目を離して、「あのね、アリスちゃん」ティアは姿勢を正した。
「……僕はね、正直、王子たちのことはどうでもいいんだ。僕がこの物語の聴き手だったら、巻き込まれたお姫様なんてどう考えても可哀想すぎるし、“そんなところ、早く逃げて!”って言ってあげたい」
「………………」
「……このままだと、この物語のなかの“魔法遣い”は、お姫様のことが大好きだから……お城で、ずっと一緒に暮らせますように——って、お姫様に魔法をかけてしまう気がするんだよ。まったく、この“魔法遣い”、とっても身勝手だね?」
勿忘草色の淡い眼が、いたわるように細められる。
「こんなめちゃくちゃな物語の舞台だから、“聴き手の僕”だけは、お姫様の一番の味方でありたい。……だからね、聞かせて? 僕は、物語の舞台に上がって、この“魔法遣い”を倒すべきかな? 不思議な物語に迷い込んだお姫様を、現実に連れ戻してあげるべき?」
優しい微笑みのうえで、ほんのすこし瞳に哀しみを浮かべ、——けれども、それよりもずっと強い意志を灯し、
「きみが望む結末を、僕に教えて。どんな願いであっても、きっと叶えてみせるから」
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる