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【回避】
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目を開けた。
息が、止まった。
天井。
見慣れた家の天井。
朱音は瞬きもせず、そこを見つめた。
——また、戻っている。
胸の奥に、冷たいものが沈む。
布団を握りしめる手が震えている。
「朱音、早く起きなさい」
台所から母の声がする。
「今日、卒業式なんだから」
壁に掛かった制服。
見ないように、布団を頭まで被った。
行けば、また始まる。
「ちょっと、朱音。何してるの」
「お腹痛い。……休む」
「卒業式を休むなんて——」
母の小言が止まらない。
朱音は目をつむったまま耐えた。
スマホを手に、時間が過ぎるのを待つ。
夕方。
窓の外から、祭りの音が流れてくる。
わっしょい、と。
神輿を担ぐ掛け声に混じって、
「押さないでくださいねー」
拡声器の声が響いた。
すぐそばの、神社が頭に浮かんだ。
行かない。
今日は何も起こさせない。
約束の夜になってから、キャリーケースを引き出した。
裏口から外へ出る。
鍵を回す。
金属音が、いやに大きく感じた。
外は静かだった。
足音を忍ばせ、道を下る。
街灯の光が、行く先を照らしている。
大丈夫だ。
何も起きない。
神社の石階段。
村を出るには、この道しかない。
通り過ぎようとした、そのときだった。
「朱音」
呼ばれて、足が止まった。
すぐ後ろではない。
でも、遠くもない。
振り向かない。
それでも、気配が近づくのが分かる。
「体調、悪いんじゃなかったのか」
一歩。
さらに、もう一歩。
振り返った先で、目が合う。
弾けるように踵を返した。
「待てよ」
腕を掴まれる。
振り解こうとした。
腕の力が強まる。
鈍い衝撃が、後頭部に落ちた。
体の感覚が、ぶつりと切れる。
息が、うまく入らない。
——違う。
きっかけは、ない。
約束でも、祭りでも、告白でもない。
すべて、なくしても。
彼は来る。
息が、止まった。
天井。
見慣れた家の天井。
朱音は瞬きもせず、そこを見つめた。
——また、戻っている。
胸の奥に、冷たいものが沈む。
布団を握りしめる手が震えている。
「朱音、早く起きなさい」
台所から母の声がする。
「今日、卒業式なんだから」
壁に掛かった制服。
見ないように、布団を頭まで被った。
行けば、また始まる。
「ちょっと、朱音。何してるの」
「お腹痛い。……休む」
「卒業式を休むなんて——」
母の小言が止まらない。
朱音は目をつむったまま耐えた。
スマホを手に、時間が過ぎるのを待つ。
夕方。
窓の外から、祭りの音が流れてくる。
わっしょい、と。
神輿を担ぐ掛け声に混じって、
「押さないでくださいねー」
拡声器の声が響いた。
すぐそばの、神社が頭に浮かんだ。
行かない。
今日は何も起こさせない。
約束の夜になってから、キャリーケースを引き出した。
裏口から外へ出る。
鍵を回す。
金属音が、いやに大きく感じた。
外は静かだった。
足音を忍ばせ、道を下る。
街灯の光が、行く先を照らしている。
大丈夫だ。
何も起きない。
神社の石階段。
村を出るには、この道しかない。
通り過ぎようとした、そのときだった。
「朱音」
呼ばれて、足が止まった。
すぐ後ろではない。
でも、遠くもない。
振り向かない。
それでも、気配が近づくのが分かる。
「体調、悪いんじゃなかったのか」
一歩。
さらに、もう一歩。
振り返った先で、目が合う。
弾けるように踵を返した。
「待てよ」
腕を掴まれる。
振り解こうとした。
腕の力が強まる。
鈍い衝撃が、後頭部に落ちた。
体の感覚が、ぶつりと切れる。
息が、うまく入らない。
——違う。
きっかけは、ない。
約束でも、祭りでも、告白でもない。
すべて、なくしても。
彼は来る。
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