払暁の魔獣使い フォルナ

小鳥葵

文字の大きさ
10 / 31
道中の邂逅

8.霧隠し

しおりを挟む

「ねえ、リュキ。この世界にどんな言語があるか知ってる?」

 リュキの火馬、オラムに草を食べさせながら、フォルナは訪ねた。


「陽の国だからサナー語、夜の民のナイーグ語、それと、水の民のプルシュカ言語があるな」

「水の民……! 水の民かもしれない!」


 フォルナは突然ブーメランの切っ先を石で磨いているリュキを指差した。

「本には、『オリトスから託された』とあったのよ。私には全く手紙の文字が読めなかったけれど、プルシュカ語に違いないわ」

「オリトス……?」

「ええ、これから水の民にオリトスという人を聞いて、探しましょう」

「人探しか……大変そうだ」


 リュキは、持っていた簡易な地図を広げる。

「プルシュカ語を話す人となると水の国の領内になる。まずはここから近い霧の町を目指すべきだろうな」

「きり……の町?」

「そう。そこも、プルシュカ語を話していたはずだ」

 フォルナは、鞄に持ち物を詰め、旅の支度をした。


「さっそくそこへ行きましょう!」

「傷はどうしたんだい?」

「もう治ってるわよ」


 フォルナはマントをめくって肩を見せると、傷が見えなくなり黒ずみだけが残っていた。

「クイラタはすごいな」

「でしょう? まあ、他の人に塗ってもそこまで早く治らないのよ……だから、私と相性が良いのかもしれないわ」

「へえ。薬と人に相性ってものがあるのか」

「そうよ。それは生まれた時から定まっているの」

 グアナも、怪我した跡はほとんどわからなくなっていた。


 フォルナはそっとグアナに跨り、出発と命令をかけて走り出す。

 リュキも慌ててオラムに乗り、オラムの腹をつついた。

 オラムはくすぐったいらしく、少々スピードを出してグアナに追いついた。

 その様子に、フォルナは顔をほころばせた。


「それでは、霧の町へ!」





 二人は見晴らしの良い平野で盗賊に標的にされないよう、洞窟を出た後は林の中を通って行った。

 乗ってしばらくすると川に突き当たり、釣りをしている人に霧の町を訪ねると、川沿いに歩けば着くという情報をもらった。


 二人は川の流れに沿ってグアナとオラムを走らせ、時折トラモント村で買い溜めた食事をとった。

 そんなことを繰り返して旅を続けていると、常に燃えるように赤かった空がだんだんと薄くなり、白へと変わっていった。


「とても、おかしな空の色ね……」

「僕も、この世界に空が白の場所があるとは知らなかった」

 それでも、しばらく経てば二人は白色の空に慣れていった。


 しかし、白色に変わったのは空だけでなく、周りの景色も例外ではなかった。

 一寸先は白く濁り、手をかざせば指の先が白く見えなくなるほどの霧であった。


「町はこの辺りのはずなんだけどな」

「そうなの? でも一面が白くて何も見当たらないわよ」

 フォルナがリュキへ振り向くと、リュキの姿が見えなくなっていた。

「リュキ、リュキ! どこへ行ったの? グアナ、わかる?」

 グアナは鼻をひくつかせたが、ぶるんぶるんと首を振った。

(ティメールは鼻が良い方ではなかったわね……どうしよう)


 立往生していると、フォルナの前の霧が割れたように晴れ、その先にリュキとオラムが見えた。

「こっちだよ、フォルナ!」

「リュキ! ああ、いなくなっちゃったかと思った」

「大丈夫だよ。ほら、あった」


 リュキの指差す先には、『霧の町』と薄く書かれた看板があった。

「ここが、そうなのね」

「ああ。入ってみよう」

 グアナとオラムを門につなぎ、二人は、霧の町へ入っていった……。





「誰もいないわね」

 フォルナ達が町の中に入っても、町人達は一人も見当たらなかった。

 町の外ほどではないが薄く霧がかっており、タイルで積まれた家々の煙突まではよく見えない。

「今、寝てるってことはないかな? みんな食事しているとか」

「そうなのかな……あ、あの路地裏」


 フォルナは薄暗く細い路地裏の中に、一人の幼い子供が建物にもたれかかっているのを見つけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※基本週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...