払暁の魔獣使い フォルナ

小鳥葵

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道中の邂逅

12.新しい人生

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 やがて、アジトにはフォルナとリュキの二人しかいなくなった。

 リュキは宝石箱の中身をきちんと確認してから袋に戻し、満足した顔だったがフォルナはブーメランを握りしめたまま茫然としたような顔をしていた。

「ブーメランを取り戻せて良かったじゃないか。町の人々も家族が帰ってきて喜ぶよ!……どうしたんだい、君は浮かない顔だね」

「あの子は、いなかったわね」

「そうだね。ブーメランと僕の宝石箱があったということは、絶対ここにも来ていたはずなんだけどな」


 自分の話をしていた二人にルルートはびくっと震えた。

(ウチを、罰する気なのかもしれない。どうしよう、ここにいるのが見つかったら……)


「クキュウ!」

「……あっ」

 ルルートの懐からトチが飛び出して二人へ向かっていき、フォルナの足に登って鞄にしがみついた。

(クーが……!)

「これは、あの子のトチ」


 やがて、足音が近づいてきてルルートは酒樽の中で必死に身を屈めた。

 酒樽のそばで音は途絶え、ルルートは見つかって剣が体に刺さり込むのを覚悟した。

(一旦死んだふりをして、反撃するか、逃げ出すか……)


 しかし、丸まったルルートの頭に触れたのは切っ先ではなく柔らかい指の感触だった。

「!?」

 ルルートは驚きに思わず動いて酒樽をひっくり返し、床に倒れた状態から、見下ろした二人の表情を窺った。

 肉をくれた少女は怒っている風でもなく手を差し伸べている。

 その行動が理解できず、ルルートは困惑した。


(なんで手を差し伸べているの? ウチはあなたの宝物を盗んだのに)

「ルルート、よね。大切な物を奪うのはとても悪いことだから、私も今怒るのが普通の反応でしょうね。……だけど、私は今怒ってはいないわ。なぜだかわからないけれど、私は昔の自分を見ているような気がするの」

 トチのクーが、フォルナの鞄から伸ばされた腕をつたってルルートの肩へしがみつく。


「あなたは、良い方向へやり直せる。だから…………

 私達と一緒に旅をしない?」

 ルルートの目が、見開かれた。

(フォッグスが解散した今、私にはもう、居る場所なんてなくなった。そんな私を思いやって、この人は言ってくれている)


 荒んだ心に何かが芽生え始めているのがわかった。

(こんな人達、今まで見たことなかった。こんな優しい人達に……)

 瞳からは、大粒の涙が零れ落ちる。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ……」

それしか、出る言葉がなかった。


「良いんだよ。君も生きるのに必死だったんだ。違う生き方が見つかれば、きっと本当に幸せになれる」

 ルルートは顔を上げて二人を見上げる。

「こんな、盗賊のウチが……本当に、いいの?」

「ええ」

 ルルートは立ち上がった。

「あなた達が良いなら、ウチは……ついていきます。違う人生を始めます!」


 フォルナから差し伸べられたその手をしっかり握って立ち上がった。





 町に戻ると、盗品が戻り、女性や子供が家族と再会できた喜びで賑わっていた。

 フォルナとリュキは門をくぐるなりモランダや町人達に英雄のように迎えられる。

「あなた達には何度感謝してもしきれません。妻と娘を返してくれて、本当にありがとうございます。これで町にはまた活気が戻るでしょう」

「それは良かった。あなた達の暮らしが平穏になり、なによりです」


「…………おや、その後ろの子供は……」

モランダが見つめた先には、フォルナと手を繋いだままのルルートが居場所がなさそうに佇んでいた。

 町人達はルルートに気づき、一斉に注目した。

 町人達に見つめられ、反省心が限界に達したのかルルートは、「……ごめんなさい!」と叫んだ。

 賑わいが静まり返る。


「あなた方の、大切な物を盗んで、ごめんなさい……!」

 ルルートは雰囲気に呑まれ、泣きそうな声だった。

 そんなルルートを見て、モランダが、しゃがんで目線を合わせた。

「……確かに俺達の大切な物がおまえに盗まれたが、おまえの立場を考えず、迎えずに追い出した俺らも俺らだ。……すまなかった」

 ルルートは謝られて困惑した顔をした。

「これからはフォルナさんとリュキさんと一緒にいるんだよな」

 ルルートは大きく頷く。

「だったら、もう人を困らせたりするようなことはしちゃいけんぞ」

「はい!」

「んじゃ、一件落着だ! この町の平和と一人の人生の始まりに、乾杯!」

 町は再度活気づき、終わりそうにないと判断した二人はルルートを連れて、特別に用意された大きな客室で休むことにした。
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