払暁の魔獣使い フォルナ

小鳥葵

文字の大きさ
18 / 31
解読

2.遺跡の守り手

しおりを挟む

 ◆

 フォルナはグアナを全速力で走らせ、目的地の遺跡へ辿り着いた。

 リュキを乗せたオラムも火馬だ。グアナに負けるまいと、必死についてこれていた。


「グアナって本気を出すと、とっても速く走れるんだね!」

 ルルートが褒美の薬草をグアナにあげるとグアナは喜んだ。


(フォルナみたいに、がつがつ食べてる……)

 そう思ったのは、内緒だ。


「この遺跡ね」

 目の前には、古代のものであろう神殿の柱が崩れているのが見えていた。


「どこに、杖があるんだ?」

 リュキが進んでみると、深い湖の中に神殿が沈んでいることがわかった。


「杖も、あの中に沈んでいるのか?」

「まさかぁ……」


 ルルートが湖を覗き込む。

「おい、ルルート。ここには守り手もいるらしいから、安易に近づかないほうが……」


 リュキが言い終わる前に、ルルートは思わず水面に触れてしまっていた。

「まあ、水に触れたところで何も起きるはずない……ってうわっ?」


 不思議なことにルルートが触れた所から波紋が広がり、湖の隅々まで消えずに広がっていった。

 すると、何かの地響きのような音がして、水が引いていくのが見えた。


「階段ができてるわね」

 水が引いた後には長い階段がらせん状に積まれていた。


「水面に触れたら、階段があらわれる仕組みだなんて、ものすごい技術だね」

「ええ。慎重に降りましょう。杖はきっとこの先よ」


 三人は、階段を降り始めた。

 階段は見る限り永遠に続くかと思われたが、しばらく歩くと底が見え、神殿の入り口へとつながっていた。


 その神殿は新しいかと思えるほど綺麗で、三人は顔を合わせた後、そっと扉を開けた。

 中は、驚くほど広々としていた。

 水が引いたばかりだからか所々の隙間には水が溜まり、天井にはそれが光に反射した波の模様が、絶え間なく動いている。


「美しいわね……」

「ああ、そうだな……」


「っと、こうしちゃいられないよ! 二人とも!」

 二人はしばらく神殿内を眺めていたい気持ちになったがルルートの言葉で振り切り、杖を探した。


「奥の建物にあるかもしれないよ!」

 ルルートが指差す先には、つながる廊下の奥にまた別の建物があった。


「行ってみよう」

 三人は廊下を通り、別館の扉を開けた。


 そこに、杖はあった。

 町長が言っていた通り、杖は見事に美しかった。

 大小の宝玉が埋め込まれており、全体を見るとまるで、純白の生物のようでもある。


「本当にあったわ。これで苦しむ人々が、救える!」


 フォルナはすぐに、杖を手に取ろうとする。


「おい、フォルナ!! 気をつけろ! 周りに守り手がいるかもしれない」

 フォルナは触れる前に、慌てて周囲を見渡した。


「……いないよう、ね」


 フォルナは守り手らしきものが見当たらないことを確認すると、杖を手に取った。

 振り返り、フォルナが口を開きかけた次の瞬間だった。


「あぶない、フォルナ!」


 何かの影が視界の中で動くのが見え、リュキは反射的にフォルナを突き飛ばした。


「きゃっ!」


 フォルナは衝撃でよろめき、杖を取り落とす。

 次に瞬きをすると、杖はなくなっていた。


「杖が……! どこにいったの!?」


「上だ!」


 二人がリュキが指差した先を見ると、天井に杖を口にはさんだ魔獣らしきものがフォルナ達の様子を窺っていた。


「あれが、守り手……?」


 それは床に降り立ち、威嚇しながらフォルナ達に近づいてくる。

 守り手は金と黒の体毛が生えていて、今にも襲いかかってきそうな獰猛な顔つきをしていた。


「あれは、見るからに危険そうだ。フォルナ! 前に火狼にやったのは、出来ないか!?」

「『語りかけ』よね。……やってみるわ」


 フォルナは精神を研ぎ澄まし、守り手に向かって大きく波動を打ち出した。


「威嚇を、やめなさい!」


 フォルナの語りかけの力強さに、リュキとルルートまで力が抜けてしまうほどだった。


 しかし。


 相手に効果は現れず、一向に威嚇を止める素振りを見せなかった。


「おかしいわ。効かないなんてこと、今まで無かったのに!」


 守り手の杖を噛んでいる口の隙間から荒い息を吐いているのがわかる。


 リュキは、仕込んだ腰帯剣を出して構えた。


「リュキ、なにそれ! あなた剣なんて持っていたのっ?!」


「ああ。モランダさんに貰ったんだ。って前見て、フォルナ!」


 リュキは、剣でフォルナに急襲をかけた守り手の爪からフォルナを守った。


「フォルナ! 大丈夫?」

「大丈夫よ。ルルは下がっていて」


 フォルナはブーメランを手に取り、頭に向かって力強く放った。

 ブーメランは弧を描いて守り手の背後まで高速で廻った後、首筋に直撃しフォルナの手に舞い戻った。

 守り手の首の毛を切り裂いて、はらはらと落ちる。


「……? 妙ね、いつもと違う……」


 フォルナが再度放とうとした時。

 その次の瞬間には魔獣の姿は消えていた。


「えっ!?」

「フォルナ、危ないっ!」


 ルルートが叫んだ。

 だが、それも間に合わず別の角度からフォルナの体は鋭い爪で横殴りにされていた。


 フォルナの服が青黒く染まっていくのをリュキは見ていた。

「フォルナァーッ!!」

 リュキの悲痛な叫び声が、神殿に響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※基本週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...