払暁の魔獣使い フォルナ

小鳥葵

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6.無常の者

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「古代兵器、って……?」

 フォルナはわからず、呟いた。

「水の民に伝わる話です。私達人間ははるか昔とても文明が発展していました。ですがその力を悪用して各地で争いが繰り広げられるようになりました。その時、人を殺すために使われたのが、古代兵器です。古代兵器は大量に造られて、絶大な威力で王国一つ滅ぼしてしまったといいます……」

「一つ国を滅ぼした、だって……!?」

「そのあと、どうなったの?」

「神獣様は争う人間ににお怒りになりました。大いなる災いが世界の人々を襲い、高度な文明は全て途絶えてしまったそうです」


「大いなる災い……」

 フォルナは夜の国のこと、そして災厄のことを思い出した。

――おまえは災厄を呼ぶ子だ、悪魔め、殺せ、近寄るな………!

 フォルナが言われた言葉が脳裏で蘇った。


(文明が全て途絶えた)

 フォルナの額から、汗が一筋流れた。


「そして古代兵器は偶然にも杖が置かれた遺跡に一つ残ってしまった、って訳なんだ」

「やっと謎が解けた。あれは魔獣だと思っていたけど、水の中で生きられる訳がないもんな。フォルナの語りかけも、魔獣じゃなきゃ意味がない」

 リュキは納得したように言った。


「いえ、偶然かどうかはわかりません。古代の人が故意に、後世まで守るために置いたという可能性もあります」

 クレアが杖を見て言った。

「そうなのかも。と、するとそれはなんで守る必要があったのかな…………」

 ルルートが疑問を持ったように言ったがわかるはずもなく、諦めた様子で茶を啜った。


「あなた方は湿地の町の件以外でも、何か旅の目的がおありでしょう?」

「そうだわ! 見てほしい、本があるの」

 フォルナはクレアに父の形見の本を見せた。

「あなたはこれを読める?」


 クレアは表紙と、数ページをめくった。

 しかし、

「……読めません。お役に立てず、申し訳ないです」と言った。


「これは、プルシュカ語でもないのね。一体、何語で書かれているの?」

「サナー語でも、ナイーグ語でも、プルシュカ語でもない。僕でも知らない言葉ということか」

 リュキは虚を突かれたような顔をしていた。


「私はそれらの言語以外に、ザンダ語、という言語を知っています」

「ザンダ語?」

 クレアは頷く。


「歴史の影で傍観し生き抜いてきた者達、雷の一族の言語だと父から聞いたことがあります」

「その、雷の一族はどこにいるのですか? 聞いたことがありませんでした」

「雷の一族は、定まらない。一つの場所に留まらず、生き抜くためにどんな手段も問わない……と私も聞いたのみです」

「そうなのね……でも、ザンダ語ということがわかって、良かったわ」


 フォルナは茶を飲み干して立ち上がった。

 ルルートとリュキも、それに続いて席を立つ。

「クレア王女、色々とありがとう。在国中、お世話になるわ」

「いえいえ。水の国で、ゆっくりしていってくださいね。困ったことがあれば、いつでも私を頼ってください」


 クレアはにっこりと笑って、城の出口まで見送ってくれた。


 ◆


 水の国は不思議なもので空の青色は明るくなったり暗くなったり、時間によって変化していた。

 クレアと別れると、水の国に着いた頃は明るい水色だったが、今は紺色だ。

 フォルナは夜の地の空を思い出して、懐かしくなった。


「フォルナ……また、大変な旅になりそうだな」


 宿屋の客室へ帰るとリュキは顔を曇らせて言ったが、フォルナは違っていた。

「どんなに大変でも必ず、ザンダ語の話者を見つけ出して本を解読してみせるわ!」

 フォルナは意思に、満ち溢れていた。


「そうだな」

 リュキはフォルナの手に、自身の手を重ねた。

 ルルートもそれを見て、慌てて手を重ねる。

 三人は顔を見合わせ、微笑み合った。



「そうだ、ご飯食べよ!」

 ルルートが鞄から茶の大きな丸い実を3つ取り出して、フォルナとリュキに1つずつ渡した。

 宿屋に帰る途中で買い、持ち帰ってきた食事だった。


「水の国では実の中に食事を入れるとは、発想も面白いな」

「本当ね……あら、美味しそう!」

 フォルナの瞳が輝く。


「この肉は魚っていう海の魔獣、だったっけ」

 中身は、フォルナ達が見たこともないような生物の小切りの肉に果実の汁がかかっていた。


「いただきます」

 フォルナは祈りを捧げるとすぐにかぶりついた。

「おいひいわっ!! 果実の甘さも加わることによって、本来なら交わることのない肉のまろやかな美味しさが舌に伝わってくる…」

「フォルナ、もう食べたんだ!? はやいよっ」

「フォルナはものすごく食いしん坊だからな」

「だからリュキ、私は食いしん坊でも食い意地も張ってないってば…………」


「いやいや」


 二人は何回も首を横に大きく振った。
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