29 / 31
解読
13.祈り
しおりを挟むフォルナが部屋を飛び出すと、すぐに人々が武器を手にフォルナの周りに立ちはだかっていた。
「傷つきたくなければ、私に攻撃しないで!」
フォルナがブーメランを手に鋭い目で人々を睨むと、実戦経験のない村の人々は思わず剣を取り落として両手を上げた。
フォルナは人を避けて、今まで通ってきた通路を必死で走った。
途中で背後から怒号が聞こえ、金属でできた武器が重なり合う音と数人のずっしりとした人の足音が聞こえてくる。体格の良い男が追ってきているのだろうか。
「もう少しよ、クー!」
フォルナは通路を抜け、暖かい光が差す拠点の入り口へ戻った。
しかし入り口にも武装した兵に囲まれ、後ろから迫る者達と挟み撃ちになってしまった。
「……馬!」
フォルナは今まで乗ってきた馬が繋がれた木へ向かう。
フォルナはブーメランと、もう一つ服に忍ばせた短剣を両手に持って構えた。
フォルナを馬まで行かせぬと、前には男達がいて立ち塞がっていた。
「くっ!」
フォルナは目を細め、器用な刀さばきで両手を速く動かした。
刀はうなりをあげて、男達の肩の肉を引き裂き、貫通する。
彼らは夜の民だったようだ。
二箇所から、空中に向かって青い噴水が立ち上った。
フォルナは一瞬悲しく苦しい顔をして、馬の繋いだ鎖をブーメランの一斬りで断ち切った。
「水の国へ」
フォルナがそう言って飛び乗ると、馬はすぐに全速力で走り出した。
拠点の人々は混乱しており、肩を負傷した者に駆け寄る者、泣きだす者、フォルナを追う者もいた。
しかし彼らもフォルナの馬には追いつくことができず、重い足取りで拠点へと戻って行った。
◆
ルルートはブルゾイが去ってから、想像をしていた。
それは、自分が真っ暗な世界でただ一人、どこかにある出口を探す夢のようなものでもあった。
その夢はいつまでも終わらず、出ることのできない空間で一人寂しさを感じている。
そして自分が寂しさに苦しんでいると、これではどうかというように、何か得体の知れないとても恐ろしいものが追いかけてきた。
「おい、顔が真っ青だぞ」
リュキがルルートの顔を見て驚いていた。
「だ、大丈夫。さっき見た悪夢を思い出しただけなの」
ルルートはひきつった顔で、傍の寝巻に横たわっているリュキを見た。
「まあ、そういうこともある。今はこんな状況だし、フォルナもいないんだから仕方がない」
リュキは腕を伸ばし、ルルートの頭を撫でた。
「ルルート。一人じゃないから、大丈夫だ。怖いものも、僕やフォルナが倒す。…さ、疲れが溜まってるしすることもないから僕はもう一眠りするよ」
そう言うと、リュキはルルートに背を向けた。
暗闇の中で、リュキも考えていた。
(ルルート……僕だって、今とても怖い。フォルナが今、陽の国の追っ手の迫る水の国にいて僕達を探しているかもしれない。僕は自分の正体をずっと君に隠していた。……君に知られるのも、追っ手が君に迫ることも両方、怖い)
リュキは拳を握った。
(とにかくクノッタさんがフォルナをいち早くここへ連れてくるのを祈るばかりだ)
リュキは手の甲を見た。
そこには、神獣の守護する証と呼ばれるものがあった。
リュキはフォルナが食事の前後で祈りを捧げていたのを思い出し、それを真似て神獣に祈った。
(どうか、神獣よ。もしいるのならば、幸運を運んできてくれ)
リュキは帽子を握り一心に、祈り続けた。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※基本週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる