異世界修行の旅

甲斐源氏

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入学試験

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 試験を受けに学園に行くと、お披露目会にいた貴族の子ども達が集まっていた。先生方の誘導に従ってみんな教室に入っていく。すると、僕と同じ教室内に第1王女のマーガレットと公爵令嬢のサニーが一緒にいた。


「マーガレット様。サニー様。おはようございます。」

「ユリウス。ここは学園よ。学園では全員平等なのよ。『様』は不要よ。」

「すみません。知りませんでした。」


 するとサニーがクスクスと笑った。


「試験を始めます。席についてください。」


 最初に担当の先生から説明があった。試験の結果でクラス分けが行われるようだ。クラスはAからDの4クラスあり、10人ずつの少人数制だ。


“目立たないようにしないとな~。”


 最初の筆記試験では歴史・地理・算術が出題された。


“まいったな~。めちゃくちゃ簡単じゃないか。算術は小学生レベルの問題だぞ。”


 白紙で出すわけにはいかないので2割程度記入した。開始10分ほどで終了してしまった僕は、ペン回しをしながら暇をつぶして過ごした。その様子をサニーが見ていた。


「次は剣術試験だ。闘技場に集まるように。」

「はい!」


 全員がぞろぞろと闘技場に向かった。僕も一番後ろからついていく。闘技場には剣術の先生が待機していて、僕達は端に置かれた木剣をそれぞれ手にとった。


「これから剣術の試験を始める。遠慮はいらん。俺に打ち込んで来い!」


 受験番号順で打ち込んでいくが相手にならない。


バシッ ボコッ

「参りました。」

「次!」

「はい!」


 男子生徒はそれなりに訓練してきたのだろう。結構様になっている。逆に女子生徒はフラフラしながら剣を振っていた。


「次!」

「はい!」


 マーガレットの番が来た。マーガレットが僕を見た。何か薄ら笑いを浮かべたように見えた。


「いきます!えい!」


バシッ パン タン ビシッ


「そこまでだ!」

「ありがとうございました。」


 やはり王女だけのことはある。男子生徒にも負けないほどの剣筋をしていた。次のサニーはほかの女子生徒達と同じだった。そして僕の番が来た。


「お願いします。」

「えい!やー!」


 僕は体の力を抜いて、女子生徒達と同じように少しふらつきながら剣を振った。周りの生徒達は白い目で見ている。


「おい!たしか彼はスチュワート家の者だよな~。」

「情けねぇな~。フラフラしてるじゃねぇか。」

「スチュワート家も地に落ちたもんだ。」


 他の生徒達の嘲笑が聞こえてくる。本来なら腹が立つのだろうが、演技がうまくいっていることが嬉しかった。


「そこまでだ。」

「ありがとうございました。」


 マーガレットが僕を睨んでいる。


「次は魔法の試験よ。ついてきてください。」

「はい。」


 先生の後ろについて魔法の訓練場に向かった。


「皆さん。自分の得意な魔法をあの的に当ててください。」

 10mほど離れた場所の的に当てればいいようだ。4人が一緒に試験を受ける。最初の4人が前に出た。そして的に向かって魔法を放った。火球を放つ生徒もいれば、水の球を放った生徒、ストーンバレットを放つ生徒、ばらばらだ。どの生徒の魔法も的まで届くのがやっとの状況だ。


“そうだよな~。彼らの魔力じゃあの程度だよな~。”


 僕はマーガレットとサニーと一緒の組だ。マーガレットが僕を見てにやりとした。


「始め!」


 マーガレットは水の球を放った。


バーン

「おお!!!!」


 マーガレットの魔法は的を破壊した。かなりの威力だ。そしてサニーは光球を放った。マーガレットほどではないが、それなりに威力のある魔法だ。そして僕は、的に届くか届かない程度に威力を抑えて火球を放った。


ヒュー ストン


「以上で試験は終了だ。2日後に結果を発表する。結果を確認するように。」


 目立たないように力を抑えるのは結構疲れる。僕は安心して学園を出た。


“は~。疲れたな~。”


 そんな僕の様子を遠くから見ている人物が3人いた。マーガレットとサニー、そして学園長だ。

 翌日、試験担当の先生が結果をもって学園長室にやって来た。そこには各自の成績とクラスが書かれていた。


「学園長。試験の結果が出ました。見ていただいてよろしいでしょうか?」


 学園長が渡された紙を見て笑い始めた。


「ホッホッホッ ギルバード君。君もまだまだじゃな。」

「どういうことですか?」

「ユリウスの解答用紙をもってくるんじゃ。説明してやろう。」


 ギルバードが僕の解答用紙を持って戻ってきた。それを学園長に渡した。


「やはりじゃな。」

「何がでしょうか?」

「この解答用紙を見て君は何も思わないか?」


 ギルバードが用紙を見た。


「書いてあるものはすべて正解じゃ。しかも算術試験があったにもかかわらず、計算をした後がない。不思議じゃな~。」


 ギルバードも気が付いたようだ。


「もしかして、わざとこの点数にしたということですか?」

「そうじゃろうな。」

「ですが学園長!剣術試験では女子生徒のようにふらふらしてました!魔法試験では的に届くかどうかというレベルでした!」

「彼は相当強いようじゃ。あれだけの演技ができるんじゃからな。」

「演技ですか?」

「そうじゃ。すべて演技じゃ。演技してまで成績を下げたんじゃ。何か理由があるんじゃろうな。」

「どんな理由ですか?」

「恐らく能力がすごすぎるんじゃろうよ。だからわざと目立たないようにしたんじゃろうな。なんせ彼はスチュワート辺境伯家の者だからな。変な疑いをもたれないようにしたんじゃろうて。」

「申し訳ありません。私には学園長がおっしゃってる意味が分かりません。」

「辺境伯家は王族派にも貴族派にも属さないんじゃ。それは元々この国の貴族ではないからじゃ。そんな辺境伯家からとてつもなく有能な者が現れたらどうなると思う。」

「なるほど~。そういうことですか。」

「まあ、彼はDクラスでいいじゃろう。それが彼の希望じゃからな。ハッハッハッ」


 そしていよいよ発表の日が来た。学園に行くと予定通りDクラスになっていた。安心して帰ろうとすると、マーガレットが声をかけてきた。


「ユリウス!待ちなさい!」

「僕に何か?」

「私にはわかってるのよ。あなた、本気を出さなかったでしょ!」

「いいえ。あれが全力ですから。」

「うそおっしゃい!」

「ほんとうですから。」

「まあ、いいわ。そういうことにしておいてあげるわ。」


 そして学校から帰ると、両親が帰宅の準備をしていた。


「どうしたんですか?」

「我々は領地に帰るのさ。いつまでも留守にするわけにはいかないからな。」

「ユーリちゃん。一人で大丈夫?私だけでも残ったほうがいい?」

「母上。僕はもう13歳になったんですよ。大丈夫ですから。」

「本当に?」

「はい。」

「マリア!ユリウスもいつまでも子どもじゃないんだ。」

「そうね。」


 そしてその日は豪華な食事を一緒に食べた。部屋に戻って一人でいると、なんか寂しさがこみあげてきた。

 そして翌日、帰っていく前に父上に呼ばれた。そこにはソフィア達もいた。


「私がいない間は、ソフィア達の主はお前だ。彼女達の役目はこの王都での情報収集だ。わかっているな。」

「はい。」

「緊急の要件があればすぐに知らせるんだ。自分勝手な行動は慎むようにな。絶対に力のことは知られるなよ。」

「心得ています。」


 そして両親は領地へと帰っていった。
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