異世界修行の旅

甲斐源氏

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学園長の試験

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 夜が来るまで古代魔法の本を読みながら待った。


コンコン

「準備はできたの?」

「はい。この仮面をどうぞ。」


 差し出された仮面は真っ白で、目の部分にだけ穴が開いていた。それをつけてゴジル伯爵の屋敷に向かった。気配を遮断するため二人に隠密魔法をかけた。


「凄いにゃ!ソフィアが見えないにゃ!」

「シッ!ダメでしょ!声を出したらバレるわ!」


 屋敷に潜入すると見たことのある人物がいた。


“彼は確かシューベルと一緒にいたゴンザレスじゃないか?まさかゴンザレスがゴジル伯爵家の者だったとはな~。”


 部屋の前でソフィアとミーアが見張りをしている。その間に伯爵の執務室の机を調べた。だが、証拠になりそうな書類らしきものはどこにも見当たらない。


“ユリウス様。だれか来ます。”


 ソフィアとミーアが慌てて僕のところに来た。僕達は急いでベランダに隠れた。するとやってきたゴジル伯爵が本棚の本を動かした。その本がスイッチになっていたのだろう。本棚が動いて隠し部屋が現れた。そこにはお金の山が見える。相当貯め込んでいるみたいだ。


「軍資金もかなりたまったな。これだけあれば貴族派の連中を動かしてマーチン公爵に反乱を起こさせることもできるだろう。ハッハッハッハッ ことが成就すればこの私が王だ。だが、デスロン皇帝は本当に私を王にしてくれるんだろうな。よもや裏切ることはないだろうな。まあ、もし裏切るようなことがあれば帝国と戦争するだけだ。」


 ゴジル伯爵が部屋の外に出て行った。そこで僕達は本を動かして隠し部屋に入った。そこにはスコーピオンとの約定書だけでなく、デスロン皇帝との約定書もあった。


「どうしますか?ユリウス様。」

「約定書だけ持っていくさ。」


 そして屋敷に戻った僕達はこれからのことを相談した。

 
「これからどうされますか?」

「スコーピオンとゴジル伯爵は害悪にゃ。」

「ミーアが言う通りだけど、ゴジル伯爵はマーチン公爵の貴族派よ。下手に動くとマーチン公爵が疑われるわ。」

「確かにな~。ソフィアの言う通りかもしれないな。マーチン公爵がもし疑われでもしたら、本当に内戦になるかもしれないな~。そんなことになればデスロン皇帝の思うつぼだ。」


 やはり父上に相談したほうがよいかもしれない。でも、それではかなり時間がかかってしまう。

 翌日学校に行ったが、昨日と何も変わらない。クラスの同級生達の目はやはり曇ったままだ。やる気が感じられない。担任のスミス先生もそれを感じ取っているのだろう。


「あなた達、今日の午後は全員で闘技場で訓練するわよ。わかりましたね。」

「・・・」


 誰も返事をしない。そして午前の授業が終わり昼食の時間だ。一人で食事をしているとマーガレットとサニーがプレートをもってやってきた。


「一緒に食べてあげるわ。」

「別にいいよ。」

「どうせ今日も一人なんでしょ?」

「・・・・」


 二人を無視して食べているとマーガレットが言ってきた。


「近いうちにこの王都に英雄が現れるわ。」

「なんのこと?」

「私にもわからないわ。全部が見えるわけじゃないもの。」


 どうやらマーガレットの未来予知は完璧なものではないようだ。


「でも、王都の悪党達が退治されるのは間違いないわ。」

「そうなんだ~。でも僕には関係ないけどね。」


 そして午後の授業だ。剣術コースの生徒も魔法コースの生徒も一緒に授業を受ける。どんな授業なんだろう。すると、そこに学園長と試験担当だったギルバード先生がやってきた。


「諸君。今日はこのギルバード君と戦ってもらおうかのう。ギルバード君に一太刀でも当てられればよし、それができないようなら全員退学してもらう。」


 さすがに全員驚いている。


「この学園は王族や貴族の出資で運営されておる。つまり国民の税金で賄われているってことじゃ。役に立たない者に使う金はないんじゃ。」


 学園長の言っていることもよくわかる。でも、力を見せるわけにはいかない。


“どうしようかな~。まあ、自分の力を見せずに指示を出せばいいか。”


 僕はみんなに声をかけた。


「ちょっとみんな集まってくれるかな~。」


 ぞろぞろと生徒達が集まってきた。


「みんな!退学になったら家名に傷がつくことになるよね?だったらここは協力して何とかするしかないよね。」


 するとみんなも同意してくれた。教室内でもほとんど話さなかったが、さすがに切羽詰まると話は別だ。


「ユリウス君。何か考えがあるの?」

「アルトとベテルは火魔法を使えるよね?一人でダメなら二人の力を合わせればいいんだよ。」

「もしかしてそれってベテルさんと同時に魔法を放てってこと?」

「そうさ。多分、ギルバード先生が魔法をよけて隙ができるから、キオンがギルバード先生の顔の周りに水を出してくれるかい?」

「どうして?」

「少ない水でもギルバード先生は苦しむと思うよ。みんなだって水の中では息ができないでしょ?」

「なるほど~。」


 すると剣術コースの生徒が聞いてきた。


「俺達は何をすればいいんだ?」

「ベガレットがみんなに風魔法をかけるから、すばやくギルバード先生に近づいて剣を打ち込んでほしいんだ。」

「大丈夫かな~。」

「大丈夫さ。僕を信じて!」

「わかったよ。」


 多分、彼らの剣は避けられるだろう。そうしたら僕がギルバード先生に打ち込むだけだ。とにかく目立たなければいいんだ。


「準備はできたか!」

「はい!」


 訓練場の中央にギルバード先生が立っている。僕達は先生の前まで行った。審判はスミス先生だ。


「始め!」


 計画通りアルトとベテルが同時に火魔法を放った。思った通り威力は2倍だ。ギルバード先生が慌ててそれを避けた。そこにキオンが水魔法を放つ。突然顔の周りに水が出て、ギルバード先生もかなり慌てていた。


「みんな!今だ!」


 剣術コースの生徒達が木剣で先生に斬りかかった。それをベガレットが風魔法で援護する。


バキッ ガキッ バン


 だが、さすがは王立学園の先生だ。生徒達の剣がギルバート先生に防がれた。それでも生徒達が必至に攻撃する。それを見ていた魔法コースの生徒達はギルバート先生に魔法を放った。耐えきれなくなったギルバート先生が奥の手に出た。大きくジャンプしたのだ。


バシッ


 先生の動きを予測していた僕は、先生がジャンプした瞬間に先生の背後から肩に木剣を当てた。


「見事じゃ。やればできるではないか!」


 みんなの顔から笑顔が漏れた。そしてお互いに称えあった。


「キオンさんの水魔法ってすごいね。」

「アルトの火魔法だってすごかったわ。」

「ありがとうな。ベガレット。君の魔法のおかげでいつもより速く動けたよ。」

「えへへ。またいつでも言って!支援するから。」


 かなりいい雰囲気だ。


「それにしてもユリウスはすごいな。ギルバード先生がジャンプするのを予測していたんだろ?」

「まあね。」

「ユリウス君の指示のおかげだよ。」

「みんなが協力したからじゃないかな~。」


 おそらく学園長先生はスミス先生からDクラスの報告を受けて、みんなを鼓舞するためにこんなことを考えたのだろう。


「ホッホッホッ どうやら合格のようじゃの。これからも頑張るんじゃぞ!」

「はい!」


 学園長先生とギルバード先生が戻っていった。


「学園長が言ったことが少しわかった気がします。彼の動きを注意していたはずなのに、最後は見失いました。」

「ホッホッホッ 彼のすごさは個人の能力の高さだけじゃないようじゃな。」

「そうですね。まさかあのような作戦で来るとは驚きました。」
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