異世界修行の旅

甲斐源氏

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王都ビザンツの悪者退治

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 そしてその日の夜、僕達は仮面をつけてマーチン公爵の屋敷に忍び込んだ。マーチン公爵は執務室にいた。


「マーチン公爵様。お話があります。」


 さすがに公爵だ。一瞬驚きはしたが慌てる様子はない。かなり肝が据わった人物のようだ。


「そなた達は何者だ?」

「ゴッドマスクとでも呼んでください。」

「ほう。それで何用だ?」


 僕は懐からゴジル伯爵の屋敷から持ってきた約定書2通を見せた。これにはさすがに驚いたようだ。


「疑わしいとは思っていたが、まさかここまで話が進んでいようとはな。」

「スコーピオンとゴジル伯爵を処分したいのですが、公爵様にもお手伝いいただきたいのです。」


 マーチン公爵が目を細めて僕を見た。


「なるほどな。ゴジルは我が貴族派だ。このことが世に知られれば私の立場が悪くなる。そなたはそう考えたのだな。」

「その通りです。」

「私がゴジルをそそのかしたとは思わなかったのか?」

「公爵様の人柄は存じております。公爵様が貴族派を作っているのは、役職に就けない不満貴族達を集めて内乱を防ごうとしているのではないですか?」

「ハッハッハッハッ そなたは何者だ?」

「申し訳ありません。その問いにはお答えできません。公爵様!明日の夜、スコーピオンのアジトとゴジル伯爵の屋敷を急襲します。是非、兵を連れてゴジル伯爵の屋敷にお越しください。」

「わかった。そうしよう。」


 そして翌日の夜、僕達はスコーピオンのアジトに向かった。アジトの金貸しの店にはスコーピオンのメンバーが集まっていた。あらかじめゴジル伯爵の要件を伝えるので、全員集合しておくようにと偽情報を流しておいたのだ。


「ソフィア!ミーア!行くよ!」

「はい!」


 部屋が3つあり、手前の部屋には約10人ずつが待機している。それぞれの部屋をソフィアとミーアが急襲した。彼女達には事前に結界魔法を付与してある。これで大怪我をすることはないだろう。そして僕は一番奥の部屋に行った。そこにはマムシと人相の悪い男達が数人いた。恐らく幹部なのだろう。


「てめぇ!何者だ!」

「ゴッドマスクさ!」

「ゴッドマスク?ふざけた名前だ!殺せ!」

キエー
サッ


 男が剣に魔法を付与して斬りかかってきた。僕はそれを横に避けた。あまり時間をかけたくない。そこで空間魔法で刀を取り出した。


「なんだ?!お前、今どこから出したんだ?」

「もしや空間魔法?ありえん!」


 やはりこの世界で空間魔法を使える人間は少ないのかもしれない。

 
「こいつはただものじゃないぞ!気を付けろ!」


バシッ スパッ
ドタッ


 僕は一瞬でマムシ以外の男達の意識を刈り取った。峰打ちだ。


「ヒー!た、助けてくれ!金ならいくらでもやる!」

「お金はいらないさ。」

バシッ グハッ
バッタン 


 僕が部屋を出ると、男達の悲鳴が聞こえてきた。ソフィア達が男達を無力化しているのだろう。すると、公爵のところの兵士達が流れ込んできた。


「ソフィア!ミーア!時間だ!行くよ!」

「はい!」


 僕達は気付かれないようにアジトから出た。


「さあ、あとはゴジル伯爵の屋敷だ。行こうか。」

「はい。」


 ゴジル伯爵の屋敷に到着すると、すでにマーチン公爵が兵を連れてやってきていた。


「公爵様。怪我人は出したくありません。僕達が中に入って合図をします。それまで待機していてください。ただ、逃げ出そうとする者がいたらその時はお願いします。」

「わかった。言う通りにしよう。」


 僕達は伯爵の屋敷に侵入した。屋敷の中は静かなものだ。僕達に気が付いていない。僕はゴジルの部屋に行った。ソフィア達は部屋の前で待機している。


「起きろ!ゴジル!」


 目が覚めたゴジルは慌てて大声を上げた。


「侵入者だ———!誰か———!」


 屋敷の中にいた護衛の兵士達がやってくる足音が聞こえる。


「お前の悪だくみはすでに露見しているんだ。大人しく捕まれ!」

「何をふざけたことを!」

「嘘だと思うなら隠し部屋にある約定書を見てみろ!」


 ゴジルは慌てて本棚の本を動かし、隠し部屋に入っていった。


「ま、まさか!」

「だから言っただろ!帝国と交わした約定書もスコーピオンとの約定書もないだろ?」

「貴様は何者だ?」

「平和を愛するゴッドマスクだ。」


 ゴジルが魔道具を手にして攻撃してきた。ウォーターカッターだ。どうやらゴジルの使った魔道具は魔法の威力を上げるもののようだ。だが、僕には通用しない。手を前に出して魔法を打ち消した。


「なんだと~。」

バキッ ボコッ
バッタン


 隠し部屋にあったお金をすべて空間収納にしまってから公爵に合図を送った。すると公爵が兵士達を連れてなだれ込んできた。


「ソフィア!そっちは?」

「みんな気絶させました。」

「じゃあ、帰ろうか。」

「はい。」


 翌日、学校に行こうとすると街は大騒ぎになっていた。


「おはよう。」

「おはよう。ユリウス君。ユリウス君は知ってる?」

「何を?」

「なんかスコーピオンが全員捕まったんだってさ。」


 するとベガレット達もやってきた。


「なんかゴジル伯爵も捕まったようよ。」

「えっ?!じゃあ、ゴンザレス先輩はどうなるのよ。キオンは知ってる?」

「知るわけがないじゃない。ベテルの家は貴族派なんだから何か知ってるんじゃないの?」

「聞いてないわよ。お父様も朝からマーチン公爵様の家に行っちゃったし。」


 そして昼食の時間にいつものように一人で食べていると、マーガレットとサニーがやってきた。


「私の未来予知が当たったでしょ!」

「そうだね。」

「私の未来予知は当たるのよ。あなたのこともね。」

「前にも言ったけど、自分の未来は自分で決めるものだと思うよ。」


 すると今までしゃべらなかったサニーがボソッと言った。


「以前読んだ本に書いてあった。運命と宿命は違うって。」

「どういう意味?」

「宿命は変えられないけど、運命は変えられるって書いてあった。」

「宿命とか運命とかよくわからないけど、マーガレットの見た僕の未来が運命だったらやっぱり変えられるってことだよね。」


 そして午後の授業だ。今までと違ってみんな一生懸命取り組んでいる。気のせいかもしれないが、みんなの魔法の威力が上がっているような気がした。
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