異世界修行の旅

甲斐源氏

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ボルトン王国の平和

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 それから1週間が過ぎ、スコーピオンとゴジル伯爵の事件の詳細が街の人々にも知らされた。そしてスコーピオンとゴジル伯爵が捕らえられても、マーチン公爵に疑いがかけられることはなかった。逆に悪者を退治したことからマーチン公爵が人々から英雄視されることになった。


「ユリウス様。辺境伯様と奥様が王都に来られるようです。」

「えっ?!父上と母上が?」

「はい。」


 王都で大きな事件があったのだから当たり前かもしれない。恐らくブルート国王がすべての貴族を招集したのだろう。僕はソフィア達にしっかりと口止めをした。


「今回の件に関しては父上と母上には絶対秘密だからね!」

「わかりました。」

「わかったにゃ。絶対に言わないにゃ!」


 なんかミーアは口が軽そうだ。まあ、ミーアは少し天然なところがあるから仕方がないかもしれない。学校でも事件のことが話題になった。スコーピオンの首領と幹部は死刑となり、他のメンバーは奴隷となって魔石鉱山で働くようだ。ゴジル伯爵も死刑となった。家族は国外追放だ。


「ゴンザレス先輩は国外追放ね。」

「何か不満そうね。キオン。」

「ベガレットは不満じゃないの?だって父親の権力を傘にすごく横柄だったじゃない。私、結構嫌がらせされたのよね。」


 ベテルは少し気まずそうにしている。親が同じ貴族派だったからだろう。


「ユリウス君はどう思う?」

「アルトはどうなんだ?」

「国外追放で済んでよかったかなって。」

「アルトは優しいね。僕もそう思うよ。命は一つだからね。」


 そして昼食の時間、シューベル先輩が他の先輩と一緒にやってきた。


「ユリウス。明日は学校が休みだ。私の家に招待したいのだが。」

「わかりました。何時ごろお伺いすればいいですか?」

「そうだな~。11時ごろ来てくれるか?」

「わかりました。」


 そして翌日、ソフィアに手土産を用意してもらって公爵屋敷に行った。以前も来たことがあるが初めてのふりをした。


「よく来てくれたな。ユリウス。」

「お招きいただきありがとうございます。これ、召し上がってください。」

「ありがとう。俺の部屋に行こう。」


 シューベル先輩の部屋に行くとかなり広い。そして部屋の中がきちんと整理されていた。シューベル先輩の性格がわかったような気がする。


「ユリウスと俺とマーガレット、サニーはみんないとこだよな。」

「はい。そうですが。」

「親同士が喧嘩していても俺達が喧嘩する必要はないと思うんだ。」

「そうですね。」

「俺達が仲良くなることでこの国は安泰になると思うんだ。今のまま王族派とか貴族派とか言っていたら、今回のようにゲルム帝国に狙われるだろ?国民が不幸になってしまうよ。」


 なんかシューベル先輩は僕が思っていたような人物ではなさそうだ。この国のことを、そして国民のことを真剣に考えている。それから僕は先輩といろんな話をした。まあ、話をしたというよりは、先輩の考えを一方的に聞いていたというほうがいいだろう。


「じゃあ、また学校でな。今日は楽しかったよ。」

「僕もです。勉強になりました。」


 そして数日が過ぎ、屋敷に父上と母上がやってきた。


「ユーリちゃん!寂しかったでしょ?しばらく王都にいるから甘えていいのよ。」

「母上!苦しいです!」


 まだまだ僕の体は小さい。母上に抱きしめられて息が出来なくて苦しかったのだ。


「それでユリウス。今回の事件にお前は関与してないんだろうな?」

「もちろんです。父上。」


 父上の目つきが鋭い。話題を変えたほうがいいだろう。


「それよりも父上に話したいことがあります。」

「なんだ?」

「先日、シューベル先輩に呼ばれて公爵家の屋敷に行ってきたのですが、シューベル先輩がいろんな話をしてくれました。」


 僕は両親にシューベル先輩が言っていた話をした。


「そうか。シューベルがそのようなことをな。」

「あなた、やはりマーチン公爵殿も同じ考えではないでしょうか。」

「そうだろうな。あいつは若いころから思慮深かったからな。」


 翌日、父上は王城に登城した。やはり貴族達が全員集められたようだ。そして、僕はいつものように学校に行った。


「皆さん。来週はいよいよ校外学習です。東の山で一泊しますので、今のうちに必要なものを買いそろえておくように。」

「はい。」


 校外学習は個人の能力を高めることを目的にするため、グループでなく個々で参加するようだ。学校から東の山に登って目標地点に到達した後、そこで一泊して再び学校に戻ってくるのだ。

 するとベガレットが聞いた。


「校外学習は学園の生徒全員が参加するんですか?」

「そうよ。学年に関係ないわ。」


 今度はベテルが聞いた。


「魔物とかいないですよね?」

「あらかじめ冒険者達が討伐してくれるから大丈夫よ。それに要所に学園の先生が待機しているから大丈夫。魔物と遭遇したら先生のところまで逃げて来なさい。」


 そのころ王城では、謁見の間にすべての貴族が集められていた。


「皆の者よく集まってくれた。すでにゴジル伯爵の件は知っているだろう。奴の後ろにはゲルム帝国のデスロン皇帝がいたのだ。」

「おお———————」


 ブルート国王の言葉にマーチン公爵以外が驚きの声を上げた。
 

「そなた達が王族派と貴族派とに分かれているのは知っている。そなた達がそのように分かれて争っていれば、再びゲルム帝国が魔の手を伸ばしてくることだろう。それでよいのか!この国が2つに割れて争うようなことがあれば、犠牲になるのは国民達だ。そう思わんか!」


 するとアストン公爵とマーチン公爵がブルート国王の前に出た。


「我らは陛下に忠誠を誓います。ここにいるすべての貴族も同じです。そうだな!皆の者!」

「おお—————!!!」


 前日の夜に、ブルート国王とアストン公爵、マーチン公爵、それに父上が王城の国王の執務室で話をしていたのだ。


「マーチンよ。今までは我が兄弟だから見て見ぬふりをしてきたが、もうこれ以上容赦はできん。これ以上兄上に逆らうようならば、たとえそなたでも処罰せねばならん。」


 マーチン公爵は黙ったままだ。そして父上が二人に話し始めた。


「陛下!兄上!待ってください。マーチンは決して兄上達に反意があるわけではありません。そうだな?マーチン。」

「アントニー!どういう意味だ?」

「貴族の中には役職に就く者と就かない者がいます。役職に就けない者達の中には陛下に反意を持っている連中もいます。マーチンは彼らの旗印となり、彼らが反乱を起こすのを抑えていたんです。」

「そうなのか?マーチン。」


 ずっと黙っていたマーチン公爵が口を開いた。


「勝手なことをしました。申し訳ありませんでした。兄上の言った通りです。反乱が起きれば犠牲になるのは国民です。私にはそれが許せなかったんです。兄上。陛下。お許しください。」

「そうだったのか。何も知らなかったとはいえ、申し訳なかった。私は国王として無能なのかもしれないな。」

「何をおっしゃるんですか。兄上。」

「兄上は父上が突然崩御した際、この国に混乱が起きないように尽力したではありませんか。だれも兄上が無能だなんて思っていませんよ。」

「ありがとうな。マーチン。」


 そして、今、王城で全貴族の心が一つになったのである。
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