異世界修行の旅

甲斐源氏

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ユリウスの秘密

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 僕が学校から戻るといつものように母上が迎えてくれた。


「ユーリちゃん。学校は楽しい?」

「はい。」

「友達出来たの?」

「ええ、まあ。」

「そうなのね。よかったわー。」

「母上。今度学校で校外学習があるんですけど、必要なものを買いに行きたいんですが。」


 本来、高位貴族の買い物は使用人の仕事なのだ。でも、僕は自分の物は自分で揃えたい。


「いいわよ。ユーリちゃんは優しいのね。」

「どうしてですか?」

「だって、みんなに迷惑をかけたくないんでしょ?」

「いいえ。違いますよ。自分で買いたいだけですから。」

「フッフッフッ いいわ。でも遅くならないようにね。」

「はい。」


 ソフィアとミーアも一緒に出掛けた。


「ユリウス様。何を買うんですか?」

「テントと寝袋かな。」

「では、サントス商会がよろしいかと思います。あの店は冒険者達がダンジョンに潜る時に利用しているようですから。」

「ダンジョンがあるの?」

「あるにゃ。郊外の西にあるにゃ。29階層まで踏破されているにゃ。」

「じゃあ、何階層まであるかわからないんだね。」

「はい。」


 そしてサントス商会に行くとマーガレットとサニーがいた。


「マーガレットもサニーも自分で買いに来たんだね。」

「当たり前じゃない。自分で使うんだから!」


  二人がソフィアとミーアをじろじろ見ている。


「ああ、うちのメイド達だよ。王都のことをまだよく知らないから案内してもらったんだ。」

「ふ~ん。辺境伯家ではエルフ族と獣人族をメイドにしているのね。」

「能力があれば人種は関係ないと思うよ。」

「そうなのね。私はてっきり美女をそばに置いているんだと思ったわ。」

「確かに彼女達は美人だけどさ。二人とも優しいんだよ。それに、美人って言うならマーガレットだってサニーだって美人だと思うよ。」


 二人とも真っ赤な顔でもじもじしている。


「バカ!な、なによ!私はそんなつもりで言ったんじゃないわよ!もういいわ!サニー!行きましょう!」


 この世界に来てからいつも思っていた。この世界では美男美女が多い。この僕だって前世とかなり違った容姿をしているのだから。

 二人と別れた後、僕達はテントを見に行った。するとソフィアが聞いてきた。


「さっきの方はマーガレット王女ですか?」

「そうだよ。隣にいたのがアストン公爵のご令嬢のサニーさ。」

「そうですか。やはりお二人とも気品がありますね。」

「そうかな~?あまり感じないけどね。」


 僕はテントと寝袋を購入して空間収納にしまった。


「これからどうします?」

「せっかくだから街を散策しようか。」

「はい!ぜひご案内します!」


 二人と一緒に中央広場まで行き、屋台で肉串や綿菓子を買って食べ歩いていると執事のヨハンがやってきた。


「ユリウス様。辺境伯様がお呼びです。屋敷にお戻りください。」

「わかったよ。」


 屋敷に戻ると父上と母上が居間で待っていた。


「ユリウス、そこに座れ。」

「はい。」


 僕は二人の前のソファーに腰かけた。すると、父上が言ってきた。


「今日、王城にこの国の貴族が全員呼ばれてな。アストン公爵の王族派とマーチン公爵の貴族派がそれぞれ解消されたんだ。」

「そうなんですか~。では、この国の貴族が一つにまとまったんですね。」

「ああ、これでもう他国からちょっかいを受けることもないだろうな。」

「他国というのは帝国のことですか?」

「ああ、そうだ。安心して帰ろうと思ったらマーチンに呼ばれてな。」

「マーチン公爵にですか?」

「ああ、そうだ。ゴジル伯爵を捕らえに行く前夜に、執務室に不審者が侵入したらしいんだ。」

「そうなんですか。」

「仮面をしていたが背丈から考えて少年ではないかと言っていたんだ。その少年のおかげで無事に済んだと感謝していたぞ。心当たりはないか?」


 僕は返事に困っていると、さらに父上が続けた。


「その少年には配下と思われる女性達が付き添っていたそうだ。どの女性も相当な手練れだったらしいんだがな。」


 どうやらもう誤魔化せそうにない。


「すみませんでした。」


 父上が頭を抱え込んだ。隣では母上がニコニコしてる。


「やはりな。あれほど言ったではないか。目立つことはするなと。どういうつもりだ?」

「街で見かけた男の人がスコーピオンに脅されて困っていたんです。その人を助けたくて。」

「お前というやつは・・・。まあ、お前のおかげでこの国の病魔を除去できたんだ。今回は不問に処すとしよう。だが、くれぐれも目立つことはするなよ。お前のためだ。よいな。」

「はい。」

「話は終わりね。ユーリちゃん。何を買ってきたか見せて頂戴。」

「はい。」


 僕は亜空間から買ってきたものを取り出した。それを見ていた父上と母上が驚いたようだ。


「ユリウス!お前、空間魔法が使えるのか?!」

“しまった!両親には見せてなかったんだ。”
 
「は、はい。」

「やっぱりユーリちゃんはすごいわ~!」

「このことを知ってるのは他に誰がいる?」

「ソフィアとミーアだけです。」

「そうか。それで、その空間収納には他に何が入っているんだ?」


 僕は空間収納から刀を取り出した。


「売り物にならないからと、武器屋の主人からこれをいただきました。刀という武器のようです。」

「そうか。」


 そして父上が真剣な顔で聞いてきた。


「私達はお前の父であり、母だ。私達はお前のことを誰よりも愛している。わかるな?」

「はい。僕も父上と母上を愛しています。この世の誰よりも。」

「ならばお互いに隠し事はやめようじゃないか。」


 父上が何を言いたいのかすぐにわかった。だが、僕にはすべてを話す勇気がない。すると母上が言ってきた。


「言いたくないことがあるのね。でも、安心して。私もアントニーもユーリちゃんのことを愛しているのよ。ユーリちゃんにどんな秘密があっても、私達がユーリちゃんを嫌うことなんかないわ。」


 母上の言葉を聞いて僕は覚悟を決めた。


「これから話すことが僕のすべてです。」


 父上も母上も真剣だ。


「以前話しましたけど、僕はこことは違う世界で何度も何度も転生したんです。僕はどうしようもない人間で、転生の度に神様にしっかり生きると約束したんですが、いつも悪事を見て見ぬふりしてしまったり、気力のない生き方を繰り返してきたんです。あきれてしまった『創造神様』が僕を奈落の底に落としたんです。そこでの修行は苦しくて、辛くて・・・修行については以前お話しした通りです。」


 母上は口元を抑えている。父上も体を前に乗り出して聞いていた。


「そうだったのね。」

「今回の生は僕にとっての修行なんです。先日、大聖堂で最高神アテナ様と創造神様にお会いしました。そこで言われたんです。アテナ様がこの世界を管理するのを手伝うようにと。」


 二人は大きく口を開け驚いていた。


「ユーリちゃんはアテナ様にお会いになったの?」

「はい。」

「先ほどからお前が言っている創造神様とはどういうことだ?神はアテナ様だけではないのか?」

「この世界以外にも世界はいくつも存在していて、そのすべての世界を創造神様がおつくりになったんです。その一つであるこの世界をアテナ様に委ねたんです。」

「私はアテナ様がこの世界の最高神だと思っていたが、まさかその上に創造神様がいるとは知らなかった。このことが世の中に知られれば、アリスト教の教義が誤りだったということになってしまうぞ。」

「父上。誤解しているようですが、創造神様はすべての世界を創造された神であり、この世界の最高神は管理を任されているアテナ様で間違いないんです。」

「そうか。だが、ユリウスは創造神様に会ったんだろ?一体、ユリウスは何者なんだ?」

「僕にもよくわかりません。でも、何度転生しても役に立てなかったダメな人間だと思います。」

 
 すると母上が隣に来て抱きしめてきた。


「今のユーリちゃんは優しくて立派よ。ねえ。あなた。」

「ああ、そうだな。」
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