異世界修行の旅

甲斐源氏

文字の大きさ
19 / 55

サニーを救出

しおりを挟む
 サニーが出発直後に攫われたとしてもまだ半日もたっていない。そう遠くまではいけないはずだ。僕は他の生徒に聞こえないようにギルバード先生に言った。


「先生。サニーは帝国の冒険者に攫われたようです。僕が助けに行きます。」

「わかった。学園長には俺から報告しておく。頼んだぞ!ユリウス!」

「はい!」


 僕は急いで山を下り、城壁の北門までやってきた。そこでソフィアとミーアと合流した。


「ソフィア達がここにいるってことは、王都の中にサニーはいなかったんだね?」

「はい。恐らくすでにこの門を出たんだと思います。」

「すぐに追いかけるにゃ!」


 その頃、連れ去られたサニーとエンペラーのメンバー達は北門を出て、街道から外れた少し先の森の中にいた。


「おい!エース!こんなところで休んでていいのか?」

「クローバー!ここまでくれば安心よ。それに暗くて歩きづらいわ!」

「斥候のダイヤが言うなら間違いないわね。それにしても王女1人を攫うのに時間がかかり過ぎたわ。帰ったら文句言われるわよ。」


 彼らの会話をサニーが聞いていた。サニーは猿ぐつわをされ、しかも両手両足を縛られている。


“この人達、もしかしたらマーガレットと私を間違えているの?本当の狙いはマーガレット?でもどうして?”


「でもよ~!宰相のビスマンのおっさんもどうしてこんな小娘を拐かす必要があるんだ?あのおやじ、そういう趣味なのか?」

「違うわよ。エース!あなたリーダーなんだからもっと頭を働かせなさいよ。考えればわかるじゃない。」

「ハートの言う通りだ。マーガレットはブルート国王の一人娘だ。つまりこの国の次期王女ってことだな。彼女を人質にしておけば、ブルート国王は帝国の言うなりになるだろ。」

「もしかしたら、帝国は何もしないでボルトン王国に命令して他国を侵略させようとしているのか?」

「もうおしゃべりはそのくらいにしたほうがいいわよ!」

「悪かったな。ダイヤ。ちょっとしゃべり過ぎたようだ。」

“助けて!助けて~!ユリウス様~!”


 その頃僕達は北門から出て街道を歩いていた。


「ソフィアの感知にはかからないにゃ?」

「無理ね。」


 初めて聞く言葉だ。


「感知って何?」

「感知魔法のことです。相手のことを強く考えて魔力を広げていくと、どこにいるのかわかるんですけど、私の魔力だと半径1kmが限界なんです。」

「そんな魔法があるんだ~。」


 僕は頭の中にある魔法知識を探した。そして魔法感知と魔力感知の両方を見つけた。魔法感知は特定の人物の捜索に使え、魔力感知は魔物のような不特定の存在の探索に使えるようだ。僕はサニーのことを考えながら魔力を広げていった。


「いた!」

「本当ですか?」

「うん。10km先の森の中にいるよ。」

「そんなに遠くまで分かるにゃ?やっぱりユリウス様はすごいにゃ!」


 僕達は急いでサニーのもとに向かった。

 一方のサニーは、見張りをしているエース以外の全員が寝静まったのを見はからって、必死に手と足の縄を外そうとしていた。すると、エースがニヤニヤと笑いながら近づいてきた。


「王女様か~。どうせ帝国に連れていけば誰かのおもちゃにされるんだろうから、その前に俺がここで遊んでも文句は言われねぇよな。」


 エースの手がサニーの足に触れた。サニーは猿轡をされているため声は出せなかったが、泣きながら必死に抵抗している。


「おいおい!暴れるなよ。足の縄が邪魔だな~。」


 エースがサニーの足の縄をほどいた。そして顔に手を当てて言った。


「俺は抵抗されるほど燃えるんだよ。もっと抵抗して見せろよ!」


 サニーは心の中で叫んだ。


“イヤー!助けて!助けて!助けて!お願い!助けて———!!!ユリウス様————!!!”


「おい!その子から離れろ!」

「貴様らは何者だ?」

「俺達はゴッドマスクだ!貴様は絶対に許さん!」


 少し離れた場所にいた他のメンバー達も騒ぎを聞きつけたようだ。


「こいつらは王国の者だ。王女を取り返しに来たようだ」

「エース!相手は3人よ!」

「しかも女とガキだぜ。」


 相手は4人。全員がAランクの冒険者だ。だが、4人を目の前にしても恐怖を感じない。奈落で戦ってきた魔物の方がはるかに強いからだ。


「ミーアはサニーを解放してくれ!ソフィアはミーアの援護を頼む。こいつらは僕一人で十分だ」

「はい。」

「了解にゃ。」

「ハッハッハッハッ この俺達をお前一人で相手にするってことか?どうやら死にたいらしいな」

「油断しない方がいいぞ!エース!」


 エースが僕に斬りかかってきた。あまりにも遅い。ギルバード先生の方が断然早いくらいだ。僕は刀を取りだして受け止めた。


カキン

「貴様!その武器をどこから出した!」

「お前が知る必要はないさ」


 今度は僕が瞬時にエースの前に行って斬りつけた。


ガン


 クローバーが盾で受け止める。


「エース!こいつ、強いぞ!なめたらやられるぞ!」

「ああ、そうだな。じゃあ、俺達の本気を見せてやろうじゃねぇか」


 目の前にいたダイヤの姿が消えた。どうやら隠密の魔法が使えるようだ。そして後ろにいたハートが巨大な火球を放ってきた。それを避けようとすると足に痛みが走った。どうやら足をダイヤに斬りつけられたようだ。見ると血が出ている。


「まだまだだぜ!クローバー!」

「おお!」


 今度はクローバーが盾を前にして突進してきた。それを剣で受け止めようとしたが、後ろに大きく弾き飛ばされた。


グハッ


 さらにそこにエースが大きくジャンプして上段から斬りつけてきた。


ガキッン


 何とか受け止めたが足の痛みから踏ん張りがきかない。僕は後ろに転んだ。


ドテッ

「なかなかやるじゃないか!口だけのことはあるな。だが、所詮俺達の敵じゃねぇ。」


 ここまで戦って彼らの力の底が見えた。確かに連携の取れたいいパーティーだが、やはり物足りない。本気を出す前に彼らに確認した。
 

「聞きたいんだけど、何のために彼女をさらったんだ?それだけの強さがあれば十分稼げるだろ。」


 するとエースが答えた。


「ああ、そうだな。ギルドで稼ぐ金じゃ物足りねぇんだよ。王女を連れて帰れば一人白金貨10枚だぜ!一生遊んで暮らせる金額だ。」


 するとクローバーも言った。


「俺達はその女を連れて行けば貴族になれるんだ。伯爵だぞ!誰もが平伏するだろうさ!」

「そっちのお前達も同じか!」


 僕はダイヤとハートに聞いた。


「正直気乗りはしないさ。でも、仕方ないじゃないか!引き受けなければ私達が殺されるかもしれないんだから!」

「そうよ。」


 どうやら4人の中でも意見が分かれているようだ。ただ一つ言えることはエースという人間だけは許さないってことだ。


「わかった。お前達に一つ言っておくが、彼女は王女マーガレットじゃないぞ。彼女はアストン公爵の娘のサニーだ。」

「なんだって?!」

「エース!どういうことよ?」

「どっちでも同じだろ?あのビスマンの爺さんにはわかりゃしねえよ!」


 最後通告をすることにした。正直、どんな悪党でも人を殺すことに抵抗があるのだ。


「最後に確認するが、死にたくなければ降伏しろ!命までは取らん!」

「何を寝ぼけたことを言ってやがる!貴様は自分の立場がわかっていないようだな!」


 僕は内側に留めておいた魔力を解放した。すると、足の傷が跡形もなく消え、体中から眩しいオーラがあふれ出した。僕の魔力を感知できるハートは戦意を失い、ぶるぶる震えながらその場に座り込んでしまった。


「どうしたんだ!ハート!貴様、裏切るつもりか!」

「勝てない!絶対に勝てないわ!」


 僕は素早い動きでエースの首をはねた。恐らくその場の誰も僕の動きが見えなかっただろう。


「き、貴様!今まで力を隠していたのか!」

「だから言ったよな。死にたくなければ降伏しろと。」

「わかったわ!私は降伏するわ!だから殺さないで!」


 ダイヤも完全に戦意を失ったようだ。だがクローバーは違ったようだ。


「俺は諦めないぞ!絶対に伯爵になってやるんだ!」

「デヤー!」


 クローバーが盾を持って突進してきた。


『ホーリースピア』


 僕の手から放たれた眩しく光る槍が盾ごとクローバーを貫いた。


グハッ
バッタン

「お前達には王国まで一緒に来てもらうぞ!そこで罪を償え!」


 僕はダイヤとハートのところに行って二人の肩に手を置くと二人の肩が光って口を開けた蛇の紋章が現れた。


「何をしたの?」

「再び悪さをしたら、その紋章がお前達を飲み込んで地獄まで連れて行くのさ。」


 二人は力なくうなだれた。


「やはり来てくれたんですね。ユリウス様。」

「大変だったね。サニー。」

「信じてましたから。」


 サニーが僕に抱き着いてきた。そして大粒の涙を流して泣き始めた。緊張の糸が切れたのだろう。


「帰ろうか。」

「はい。」

「あのさ。今見たことは秘密ね。」

「わかってます。誰にもいいません。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

処理中です...