異世界修行の旅

甲斐源氏

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カナディアンシティの攻防

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 カナディアンシティに行く途中で畑に現れたキングホーネットの群れを討伐したオレ達は、次の街に向かおうと馬車に戻ったが、すでに日が傾いていた。


「今日はここで宿をとろうか。」

「魔法を使って疲れたにゃ!お腹もすいたにゃ!」

「ミーはいつでもお腹が空いてるのね。ソフィーを見習った方がいいわ。」

「『ミー?』『ソフィー?』」


 二人ともキョトンとしている。どうやらサニーが二人との距離を縮めたかったようだ。そして近くで宿を見つけた。


「4部屋必要かい?」

「できればそうしたいんですけど。」

「そうかい。3部屋しか空いてないんだ。3部屋じゃダメかい?」

「ユリウス様。私とミーアは同じ部屋で構いません。」


 すると女将の顔が変化した。


「『様?』」

「彼女はオレの父親の店で働いていたからですよ。ハッハッハッハッ」


 なんとか必死に惚けた。そして、オレとサニーが個室、ミーアとソフィアが2人部屋に泊まることになった。


「ミーア。ソフィア。外にいる時はオレのことはユリウス、サニーのこともサニーと呼んでくれ。」


 なんだか二人が気まずそうだ。するとサニーが提案した。


「呼び捨てが難しいなら、『さん』を付けたらどうかな?それならいいでしょ?」

「わかったにゃ!ユリウスさんとサニーさんなら言いやすいにゃ!」

「わかりました。抵抗感はありますが仕方ありませんね。」


 そして夕食を食べてその日は部屋で休んだ。翌日、出発して街を一つ越えてカナディアンシティまでやってきた。街の中は思ったよりも静かだ。ただ、南の城門には冒険者達と兵士達が集まっていた。警戒にあたっているようだ。


「ユーリ、ジェミー子爵に状況を聞きに行く?」

「いいや。そんなことをしたら、ワイバーンを討伐した後にオレ達のことがばれるんじゃないか?」

「そうね。」

「私とミーアで冒険者達に聞いてみましょうか?」

「ああ、頼むよ。ソフィア。」

「お任せください。」


 ソフィアとミーアが冒険者達のところに向かった。


「あの~。ちょっといいですか?」

「なんだ!エルフと獣人のお嬢ちゃん達がなんのようだ?」

「ワイバーンについて教えて欲しいにゃ。」

「知ってどうするんだ?」

「討伐するにゃ!」

「ハッハッハッハッ! お前さん達がか?できるわけないだろう!ワイバーンは12体もいるんだぞ!逆に食われてお終いだ!やめとけ!やめとけ!」

「そのワイバーンって、もしかしてあの山にいるんですか?」

「ああそうさ。あそこからいつここに来てもおかしくねぇんだよ。」

「ありがとうにゃ!おっちゃん!」

「俺はまだ25歳だ!おっちゃんじゃねぇぞ!」


 ソフィアとミーアが戻ってきた。ソフィアから説明を聞いて、ワイバーンが12体いることが分かった。


「どうしますか?」

「これから討伐に向かうさ。」


 オレ達はワイバーンがいる山に向かった。


「ユーリ。どうしてワイバーン達はここに移動してきたのかな~?」


 サニーに聞かれるまで考えていなかった。


「ワイバーンって世界中にいるのか?ミーアは知ってる?」

「知らないにゃ。」

「ソフィアは知ってる?」

「はっきりとは言えませんが、世界中にいると思います。確か~、アルペン山脈にたくさん生息していると思いますよ。」

「ソフィー!アルペン山脈って世界で一番高い山脈よね?確か、帝国じゃなかったっけ!」


 何が理由かわからないが、もしかしたらアルペン山脈からここに来たのかもしれない。

感知魔法でワイバーンを探しながら山を登り始めると、オレの感知に反応があった。


「見つけたよ。」

「本当ですか?」

「どこにいるにゃ?」

「あの山の中腹さ。」


 ワイバーンのいる場所に向かおうとすると、怪しい男達が現れた。


「お前達!どこに行くつもりだ!」

「この先にワイバーンがいるって聞いたから一目見てみようと思ったんです。」


 すると、髭を生やした男がリーダーらしき男に何やらボソボソと耳打ちした。オレは意識を集中させた。


“大尉。こいつらワイバーン達のいい餌になるんじゃないですか。”

“そうだな。男はすぐに食わせるとして、女どもはじっくり遊んでから食わせるか。”

“なら決まりですね。”


「おい!お前達!こいつらを捕らえろ!女どもは殺すなよ!」

「はっ!」


 どうやら救いようのない連中のようだ。もしかしたら彼らは帝国の兵士なのだろうか。ワイバーンを操って何かを企んでいるのだろう。


「サニー!ソフィア!ミーア!こいつらは帝国の兵士だ!遠慮はいらないよ!」

「き、貴様!どうしてそれを!」

「どうせ、ワイバーンを使ってこの国に攻め込むつもりなんだろ?大尉殿。」


 リーダーの顔色が変わった。


「知られたところで、もう手遅れだ!今更どうにもできないさ!こいつらを皆殺しにしろ!」


 男達が剣を抜いて斬りかかってくる。そして次の瞬間、山の中腹からワイバーンが一斉に飛び立った。その数、なんと30匹以上いる。


「ユーリ!あのワイバーンが街を襲ったらまずいわ!」

「ああ、わかってる!こいつらに時間はかけられないな。」


 サニー、ソフィア、ミーアが本気モードになった。サニーとソフィアが剣に魔法を付与したようだ。一方の兵士達は素早く2部隊に分かれた。前衛が剣での攻撃、後衛が魔法での攻撃を仕掛けてくる。


「魔法が厄介にゃ!」

「ユーリ!何とかならないの?」

「わかったよ。」


 確かに魔法の攻撃が厄介だ。炎の矢、水の刃などで攻撃してくるだけでなく、土壁でこちらの攻撃を防いでいるのだ。殺生はしたくない。でも、このままだとワイバーンが街の人達を大勢殺すことになる。オレは心を決めた。


「お前達に告げる。逆らうものは最高神アテナ様の名においてオレが処分する。道をあけろ!」

「何をふざけたことを抜かす!お前達はここで皆殺しなんだよ!」

「そうか。わかった。サニー!ソフィア!ミーア!後ろに下がってくれ!」


 オレの身体からゆらゆらとオーラが溢れ出していく。オレが本気だと分かったのか、慌ててサニー達が後ろに下がった。帝国の兵士達は構わず攻撃を仕掛けてきた。


『サンダー』


 オレが魔法を唱えると晴れ渡った空から巨大な稲妻が落ちた。


ドッドッドッドーン


 煙が立ち上がり、生き物が焼ける臭いが充満した。そして煙がおさまると、目の前にいた兵士達の姿はなく、辺り一帯が黒く焼け焦げ、地面に大きな穴が開いていた。


「みんな!オレの近くに来てくれ!」


 オレは3人を連れてカナディアンシティに転移した。どうやらワイバーンはまだ来ていないようだ。仮面を被って城門のところまで来ると、遠くにワイバーンの群れが見えてきた。


「ワイバーンが来たぞ!急いで準備しろ!」


 兵士達も冒険者達も慌てて準備を始めた。どうやら魔法部隊も待機しているようだ。


「ユーリ。どうするの?彼らにワイバーンの討伐は難しいわよ。」

「ユリウス様。ワイバーンは30匹以上いました。このままでは相当の犠牲者が出ると思います。」

「でもにゃ~。ワイバーンは空にいるにゃ!私にはどうにもできないにゃ!」


 確かにミーアが言う通りワイバーンは空からやってくる。空中から炎のブレスを吐かれたら防ぎ切れない。

 
「おい!ワイバーンの上に誰かいるぞ!」

「どういうことだ?」


 城門に上がっている兵士達が騒ぎ始めている。どうやら帝国兵がワイバーンに騎乗しているようだ。ワイバーンで打撃を与えてから攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろう。


「ミーア!風魔法でつむじ風を起こしてくれ!」

「了解にゃ!」

「ソフィアはそのつむじ風に炎の魔法を放つんだ!」

「わかりました!」

「私は何をすればいいの?」

「恐らく怪我人が相当出るだろうから、サニーは光魔法で怪我人の治療にあたってくれ!」

「わかったわ。」


 恐らく大半のワイバーンは地面に落ちるだろう。そうなると、帝国兵と地面に落ちたワイバーンを処理していく必要がある。


“あ~あ。オレがやるしかないんだよな~。気が重いな~。”
 

 ワイバーンが城門の近くまでやってきた。口元には炎が見える。炎のブレスを吐くつもりなのだろう。すると、予定通りミーアが風魔法でつむじ風を起こした。ワイバーンはそれを避けるように旋回し始める。


「ソフィア!今だ!」


 ソフィアがつむじ風に向かって炎の魔法を放つと、つむじ風が巨大な炎の柱となり、ワイバーン達を飲み込んでいった。


「おい!何なんだ!あれは!」

「知らねぇよ!魔法部隊の連中じゃねぇのか!」

「バカいえ!魔法部隊の連中にあんな魔法が使えるわけねぇだろう!」

「見ろ!ワイバーンが地面に落ちていくぞ!上に乗っていた奴らもだ!」


 すると、防衛部隊を率いる隊長が大きな声で命令した。


「全軍!突撃!ワイバーンをすべて打ち取れ!落ちた者達も敵だ!捕らえろー!」


 全員が一斉に城門から飛び出した。だが、地面に落ちてもワイバーンだ。炎のブレスで攻撃してきた。


「うわー!」

「怯むなー!進めー!」


 ワイバーンの攻撃で怪我人が出始めている。


「サニー!ここは頼んだよ!」

「気を付けてね。ユーリ。」


 オレは空間収納から刀を取り出して素早い動きでワイバーンの首を次々とはねていった。


「おい!あいつは何者だ?」

「もしかして、王都に現れたって言う噂の仮面の男じゃねぇのか?」

「間違いねえな。それにしてもすげぇな。一人でワイバーンを全部片づけるつもりだぜ。」

「なら、俺達は落ちてきた奴らを捕まえようぜ。」

「おお!」


 王国の兵士と冒険者達が30数名の帝国兵達を取り囲んだ。


「お前らは何者だ?」

「・・・・」

「武器を捨てろ!さもなければ殺すぞ!」


 帝国兵の隊長らしき男が周りを見渡した。彼らの周りを数百人の兵士と冒険者達が取り囲んでいる。もう逃げ場はない。


「1人でも多く道連れにしろ!かかれー!」


 帝国兵達が剣を手に斬りこんでいく。


「弓部隊!矢を放て!」

ヒュー ヒュー
ブス ブス
グワー 
ドタン バタン


 帝国兵達が次々と地面に倒れていく。そして帝国兵達の体を起こすと、全員が口から血を吐いて絶命した。


「毒だな。奥歯に隠していたんだろう。」


 辺りを確認したが、ワイバーンも帝国兵も生存者はいなかった。


「ユーリ。終わったのよね。」

「ああ。」

「ワイバーンの肉を食べたいにゃ!」

「ミーア!ダメに決まってるでしょ!」

「王都に戻ったらミリューでご馳走するって約束しただろ。それまで我慢してくれ。」

「わかったにゃ。」


王国の隊長が辺りをキョロキョロしている。オレ達を探しているのだろう。


「あの仮面の者達はどこに?」

「隊長!もしやあの者達は王都で噂の者達ではないんですか?」

「そうだろうな。それにしても信じられないほどの強さだったな。」

「神様の使いか何かじゃないんですか?」

「そうかもな。」
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