異世界修行の旅

甲斐源氏

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ゲルム帝国に向けて出発

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 オレはサニーと相談して、戦争を回避するためにゲルム帝国に調査に行くことを決めた。その翌日、オレとサニーはソフィアとミーアにゲルム帝国に調査に行く話をした。


「やったにゃー!旅ができるにゃー!旅先で美味しいものをいっぱい食べるにゃー!」

「ミーア!遊びじゃないのよ!」

「いいさ。せっかく旅するんだからオレもいろいろ楽しみたいしね。」

「ところでユリウス様。一つお願いがあるんですけど。」

「何?」

「旅の途中でエルフの里に寄っていただけませんか?」

「いいけど。どうして?」

「自分の故郷を見てみたいんです。」

「わかったよ。ミーアは獣人族の里にはいかなくていいのか?」

「もうアニム王国はないにゃ。」

「国がなくなったって獣人族の皆は暮らしているんだろ?」

「うん。元の王族達もいるらしいにゃ。」

「だったらついでなんだから寄っていこうよ。」

「わかったにゃ。」


 それから数日後、オレとサニーは父上と一緒に王城に行った。会議室にはアストン公爵とマーチン公爵がいた。マーチン公爵がオレを見ると近くにやってきた。


「君がユリウスか。ありがとうな。」


 恐らくゴジル伯爵の反乱未遂の件を言っているのだろう。どうやら仮面の男がオレだということも知っているようだ。


「いいえ。マーチン公爵の人柄は父上から聞いていましたので。それにシューベル先輩を見れば、マーチン公爵がこの国をどれだけ愛しているのかわかりますから。」

「そうか~。」


 マーチン公爵が父上を見た。


「兄上!やはりユリウスは兄上の子ですね。しっかりしています。」


 そこにブルート国王がやってきた。全員が席を立った。


「座ってくれ。」


 国王を中心に右にアストン公爵とマーチン公爵が座り、左に父上、オレ、サニーが座った。


「では、早速だが。ユリウスに確認したいことがある。」

「なんでしょう?」

「そなたは神の使徒なのか?」


 やはりそのことだ。この際だからすべての誤解を解くために、オレはすべてを正直に話すことにした。


「これからすべてを話します。父上にも話していなかったことも。本当のオレのことを知って欲しいんです。」


 流石にオレの言葉に父上も反応した。


「私はこことは違う世界で何度も転生を繰り返しました。理由は簡単です。私がどうしようもない人間だったからです。困っている人がいてもそれを無視したり、殺されそうな人がいても助けることもせず、飢え死にしそうな人がいても食べ物を与えることもしませんでした。オレは面倒なことから目を背けて生きていたんです。」


 オレの告白に父上もサニーも驚いていた。


「死んだあと、今度こそは人のために生きるからと創造神様に約束して転生させてもらったんですけど、結果はいつも同じだったんです。そしてとうとう創造神様の怒りが爆発して、私は奈落に落とされたんです。」

「奈落?奈落とは地獄のことか?」

「わかりません。でも、そこは真っ暗で悪臭が漂っていました。その中で何度も何度も怪物に襲われて殺され続けたんです。痛くても苦しくてもそこから逃れることはできませんでした。自殺することすらできないのです。」


全員が身体を乗り出して聞いていた。


「そこから逃れるためにオレは必死にもがき、少しずつ力を身につけていったんです。それでも腕や足を喰いちぎられたり、時には内臓をえぐり取られたりしました。そして、私はとうとう黒龍を倒して何とか奈落から抜け出すことができたのです。人間の時間に直して500年以上が経過していたようです。」


 サニーが震えながらハンカチを顔にあてていた。


「この世界に転生する際に創造神様から修行の続きをせよと言われました。つまり、今回の私の人生は奈落の時と同じ修行なんです。」

「まさかそなたの力はその時の力をそのまま引き継いでいるのか?」

「はい。その通りです。この力を使って、世のため人のために尽くせということだと思います。大聖堂で最高神アテナ様と創造神様にお会いした時も、アテナ様のお手伝いをするように言われましたから。」

「そうなのか~。」

「創造神様はたくさんの世界を創造されています。ですが、この世界はかなり遅れた世界だと言われました。だからこそ最高神アテナ様を手伝う必要があるのだと思います。」

「ユリウスよ。教えてくれ。そなたがいた別の世界はどんなところだったんだ?」

「はい。空を飛ぶ飛行機、大勢を一度に運べる電車、一瞬で人の街を破壊できる兵器、遠くの人と話せる携帯電話・・・・・・」


 オレは地球のことを説明した。


「そうか。分かった。ユリウスよ。この世界とは全く違う世界なんだな。」

「はい。ですが、この世界の人達の中にも、父上や母上のように他人思いの優しい心を持った人は大勢います。確かに罪を犯すものもいますが、それは地球にいた時も同じです。文明が進んでいる分、戦争になれば大勢の人達が死ぬことになるのです。私にはそれが許せないんです。」


 その場の全員が優しい目でオレを見た。


「ユリウスよ。私も戦争などしたくはない。だがな、このまま帝国を放置すればわが国だけでなく、世界中の国に被害が及ぶことになりかねないのだ。そうなれば、どれほどの人々が苦しむことになるだろうか。私はそれが心配なんだ。」


 するとアストン公爵がサニーを見た。


「サニー。アテナ様から何かお告げはないのか?」

「はい。何もありません。もしかしたら今回の件はユーリや私達が試されているのではないでしょうか?」


 ブルート国王が聞いた。


「どういうことだ?」

「はい。戦争をせずにこの問題を解決することをアテナ様は望んでいるんだと思います。ユーリや私達がどこまでできるのか見ていらっしゃるんだと思います。」

「なるほどな。サニーの申す通りかもしれんな。」

「国王陛下。私は仲間と一緒に帝国に行こうと思います。帝国の現状を調査してみたいんです。帝国への対策を決めるのはそれからでも遅くはないと思いますが。」

「よかろう。ユリウスよ。そなたに任せよう。」

「ありがとうございます。」


 隣に座っている父上が安堵したのか胸をなでおろしていた。オレが家を飛び出し、この国からいなくなることを心配していたのだろう。そう思うと嬉しくなった。


「父上。屋敷に戻ったら久しぶりに母上と一緒に外に食事に行きませんか?サニーも一緒に。」

「急にどうしたんだ?」

「なんか久しぶりに家族で食事をしたいと思ったんです。」

「そうか。」


 それから3日後、父上と母上を領地の屋敷まで送っていった後、オレ達は帝国に向けて出発した。


「ユリウス様。ダンジョンはいいんですか?」

「帰ってきてから行くさ。先に帝国の問題を片付けなきゃ。」

「ダンジョンには美味しいものがないにゃ!やっぱりユリウス様は最高にゃ!」


 王都を歩く際には、目立たないようにと彼女達の武器もオレの空間収納に仕舞っているが、旅の途中では何があるかわからない。そこで、彼女達に武器を渡しておいた。ソフィアとサニーは剣を腰にぶら下げ、オレとミーアは背中に背負っている。そして、何の問題もなく王国内の街をいくつか超えると分かれ道が現れた。右に行けば帝国だが、左に行けばエルフの里だ。オレ達は左の道を行くことにした。


「ユリウス様。わがまま言って申し訳ありません。」

「ついでだし、別に構わないさ。」

「ソフィー。もしかしてエルフの里って帝国との国境なの?」

「ええ、そうです。ただ、エルフの里の周りには原生林が広がっていますし、族長が強力な結界を張っていますから帝国側からも王国側からも簡単には入れないと聞いています。」

「そうなんだ~。獣人族の里はどうなんだ?ミーア。」

「獣人族の里の周りにも原生林があるにゃ。でも、結界を張ってるって話は聞いたことがないにゃ。」

「じゃあ、帝国から侵入される可能性があるってことだよな~?」

「その可能性はあるにゃ。」


 話しながら歩いていると目の前に森が広がっていた。


「いよいよだな。」

「そうね。」

「魔力感知で索敵しながら進むけど油断しないようにな。」

「はい。」

「了解にゃ。」


 森の中を歩いて行くとだんだん木々が太く大きくなっていく。


「レッドボアだ。」

「ミーアがやるにゃ。」


 ミーアが背中から2本の短剣を抜いてレッドボアに斬りかかる。風魔法の使い方がうまくなったせいか、以前よりも速くなっている。レッドボアは動くことすらできずにその場に倒れた。


「ミーア。大分力が付いたな。」

「ユリウス様の訓練のお陰にゃ。」

「違うでしょ?美味しそうな獲物だからでしょ。」

「違うにゃ!」

ハッハッハッハッハッ


 そして、その後も小さな魔物が現れたがその都度討伐していった。すると目の前に霧が現れて景色がぼやけ始めた。どうやら結界の中に入ったようだ。するといきなり矢が飛んできた。


ピュッ ピュ ピュッ
バシ バキ ポト

「誰だ!姿を見せろ!」
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