異世界修行の旅

甲斐源氏

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エルフの里

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 エルフの里に向かい、魔物を討伐しながら原生林を進んでいると霧が出てきた。恐らく道を迷わせるための結界なのだろう。その霞んだ霧の中から突然矢が飛んできた。そして、エルフ族の兵士達が姿を見せた。


「お前達は何者だ?ここから先は我がエルフ族の領地だ!」

「オレ達はボルトン王国の冒険者だ。ここにいるソフィアに故郷を見せたくて来たんだ。」


 隊長らしき男がソフィアを見た。エルフ族のソフィアがいたので納得したのだろう。


「わかった。ついて来い。ただし、怪しい動きをしたら容赦しないぞ!」


 オレ達は兵士達の後ろをついていった。


「なんかやけに厳重ね。何かあるのかしら?」

「どうかな…。」


 森の中に複数の兵士達が隠れているのが分かった。何かあれば一斉に攻撃してくるつもりなのだろう。 


「ここで待っていろ!族長に話をしてくる。」


 隊長らしき男が数人を引き連れて走って行った。周りを見渡すとエルフの人々の家がある。表現は悪いがかなり原始的な生活をしているようだ。当然だが、街の中に店など見当たらない。恐らく貨幣制度などないのだろう。


「なんか別世界ね。」

「自然のままにゃ。」

「多分、自給自足できているんだろうさ。」


 しばらく待っていると、隊長が帰ってきた。


「族長がお会いになるということだ。ついてこい。」


 オレ達が後をついていくと少し大きめの建物があり、その中に入るように言われた。


「私が族長のフェリスよ。そこにいる娘に故郷を見せたいってどういうことかしら?」

「ソフィア。説明した方がいいわよ。」


 ソフィアが意を決したように説明し始めた。


「私は子どものころ人族に攫われて、奴隷として売られそうになったところを先代の辺境伯様に助けられたんです。ソフィアという名前もいただきました。子どもだったので両親の顔も覚えていませんが、いつか自分の先祖の生まれ育った場所を見てみたいと思っていたんです。」

「あなたが攫われたのはいつごろかしら?」

「はい。15年ほど前になるかと思います。」


 急にフェリスの顔がゆがみ始めた。


「ちょっとこっちに来て!あなたの左腕に星形の痣はないかしら?」

「えっ?!どうしてそれを?」


 フェリスが椅子から立ち上がってゆっくりとソフィアに向かって歩き始めた。そして、ソフィアの顔に手を当てた。


「よく生きていてくれましたね。ソフィア。」

「どういうことにゃ?」


 オレにも理解できない。でも、族長の涙からはソフィアが大切な存在だと分かる。


「ソフィア。あなたは私の孫なのよ。15年前、このエルフの里に人族達が侵入してきたの。その時、里の住人達は大森林の中に逃げたの。でも、あなたの父親と母親は他の人達を逃がすためにこの里に残って人族に殺されたのよ。そして、あなたは人族達に連れていかれたの。」

「おばあ様なんですか?」

「そうよ。あなたは私の孫よ。」

「おばあさ~ん。」


 ソフィアの目からも大粒の涙が流れ落ちた。サニーもミーアも隊長もその場の全員が泣いている。そして、オレは身体の中から湧き上がる怒りを抑えながら族長に聞いた。


「この街を襲った人々はどこの国の者達ですか?」

「帝国よ。彼らは私達の知らない武器を手にしていたわ。」


 帝国に行かなければいけない理由がもう一つできた。

 それからエルフの里でオレ達の歓迎会が開かれ、族長の屋敷に泊めてもらうことになった。


「ユリウス殿。そなたがソフィアの主なのか?」

「ええ、立場上そういうことになりますが、オレはソフィアやミーアを使用人と思ったことはありませんよ。二人はオレにとって大切な家族ですから。」

「そうか。ならば安心じゃな。」


 何故かソフィアとミーアが真っ赤になった。そして翌朝、オレ達が里を出ようと族長に挨拶していると、昨日の隊長が兵士達と青い顔をしてやってきた。


「族長!大変です!奴らが来ます!」

「まさか、帝国の者達ですか?」

「はい。15年前と同じように見たことのない武器を持っています。」

「結界はどうしました?」

「あいつら、キングボアを連れています。結界も役に立ちません。」

「街の人達をすぐに避難させなさい。私がここに残ります。」

「ダメです!族長!族長がいなくなれば里が崩壊します。族長は里の人々と一緒に逃げてください!」


 ソフィアを見ると拳を握りしめている。サニーもミーアも戦いたいようだ。


「フェリスさん。帝国の連中はオレ達に任せてもらえませんか?」

「あなた方にですか?」

「お前達に何ができるっていうんだ!それよりも早く!族長!」


 どうやら信用がない様だ。このままここで問答していても仕方がない。その間に帝国の兵士達がこの里までやってきてしまうかもしれないのだ。


「サニー!ソフィア!ミーア!遠慮はいらないよ!全力で構わないから!」

「はい!」

「了解よ。遠慮なんかしないから!」

「わかったにゃ!」


 彼らは明らかにこの里の人達を殺しに向かっているのだ。遠慮する必要などないのだ。サニー、ソフィア、ミーアの身体から闘気がオーラとなって現れた。そして、オレが闘気を解放すると辺り一帯に冷たい風が吹き込んできた。この冷たさは怒りの風だ。


「あなた達は一体何者ですか?」

「後で説明しますよ。行くよ!」


 オレ達は帝国兵に向かって走り始めた。どんな武器を使ってくるかわからないので、全員の身体の周りに結界を張った。これで相手の攻撃で怪我をすることもないだろう。


「いたよ!」


 目の前にキングボアが数匹いる。その後ろから帝国兵がやってきていた。サニーもソフィアもミーアも自分の武器に魔法を付与している。


「キングボアが邪魔ね。」

「オレがやるよ。」


 オレは走りながら背中の刀を抜いた。そして魔法をのせて刀を振った。


『疾風斬』


ビューン
バタン ドタッ


 すると、兵士達の前にいたキングボアの身体が上下二つに分かれた。


「敵襲だ~!構えろ!」


 オレは帝国兵達の武器を見て驚いた。明らかに鉄砲だ。前に盾を持った兵士達が並び、その後ろから鉄砲で攻撃してくるつもりのようだ。


「みんな!油断するな!あの武器からは鉄の球が飛んでくるんだ!」

「わかったわ!」

「了解にゃ!」

「承知しました!」


バン パン パン パン バン
カキン チャキン
ポト


 鉄砲の球がオレの結界にあたって地面に落ちる。焦ったのは帝国兵達だ。


「隊長!テップの攻撃が通じません!」

「奴らが来ます!」

「全員剣を抜いて構えろ!皆殺しにするんだ!」

「はっ」


 サニーの剣は光を放ち、ソフィアの剣からは炎が揺らめいでいる。そしてミーアは風魔法で自分の速度を上げた。


カキン ガキン
ズバッ シュパッ

ギャー
バタ ドサ


 50人ほどいた兵士達がみるみる減っていく。すると後ろにいた魔法兵らしき兵士達がファイアーボールを放ってきた。オレは水魔法を放ってそれを打ち消した。


「貴様らは何者だ!」

「エルフ族を守りに来たのさ。」

「ボルトン王国の者か!」

「そうさ。」

「ならば遠慮はしないぞ!」


 隊長らしき男が懐から赤い水晶玉を取り出した。そして何やらブツブツ言っている。すると、その赤い水晶が割れて中から真っ赤なドラゴンが姿を現した。


「これでこの里も終わりだ!赤竜よ!この者どもを皆殺しにしろ!」

ギュアー グワー


 赤竜が咆哮をあげ、オレ達に向けて炎のブレスを吐こうとしている。オレは迷わず赤竜のところまで転移して、アッパーを食らわせた。


バッコン
グホッ グワー ボー


 炎のブレスは上空に向けて放たれたが、怒り狂った赤竜がオレに向かって攻撃を仕掛けてくる。


ビュー バッコン
ドドドドーン


 オレは赤竜の素早い打撃に反応できずに正面から受けてしまった。地面に叩きつけられ、全身の骨が砕けたような痛みが走る。頭からは血が流れた。


「ユ———リ—————!!!!」

「ユリウス様————!!!」


 3人の大きな声が聞こえる。


“あ~。久しぶりの感覚だ~。この痛み。どうやらオレは自分が強くなったと慢心していた様だ。思い出させてくれてありがとうよ。赤竜。”


「ハッハッハッハッハッ たわいもない。赤竜に勝てるわけがなかろうが。愚か者が!」

ガタッ ガタガタ

「ま、まさか!あの攻撃を食らって生きているのか!一体何者なんだ!赤竜よ!殺せ!奴の息の根を止めるんだ!」

グォー


 奈落から逃れようともがいていた時と同じ感覚が戻ってきた。身体の震えが止まらない。全身にエネルギーがみなぎってくる。


バ——————ン!!!


 髪の毛が逆立ち、全身から溢れ出る真っ赤なオーラが辺り一帯を染め上げていく。青白く光る眼で睨みつけると、赤竜が後ずさりした。今にもその場から逃げ出しそうだ。


「感謝するよ。赤竜。」


 オレはゆっくりと赤竜に近づいていく。


「赤竜!何をしている!殺せ!そいつを殺せ!」


 隊長の声で赤竜がオレに攻撃を仕掛けてきた。だが、オレは背中の剣でその攻撃を弾き返した。そしてオレは黒龍と戦った時のことを思い出した。


『サンダーボルト』


 オレが魔法を放つと晴れ渡った空から赤竜に向かって巨大な稲妻が走った。


バリバリバリドッカーン


 爆音と同時にあたりの空気が揺れ、目の前の赤竜は口から煙を吐きだした。もはや赤竜は立っているのがやっとだ。


「終わりだ。楽にしてやろう。」

『ホーリーソード』


 刀から金色の光が溢れ出す。


スパッ
ポトッ バッタン


 赤竜の頭が胴体から切り離され、赤竜は地面に倒れた。


「ま、ま、まさか!赤竜が負けるなどありえるか————!!!」


 あたりを見ると帝国兵は全滅していた。オレの放った『サンダーボルト』で巻き添えを食らったようだ。残っていたのは指揮官ただ一人だ。


「た、た、助けてくれ!俺は命令されただけなんだ!見逃してくれ!」


 すると後ろからソフィアがやってきた。


「お前の顔は忘れないわ!15年前、私の父と母を殺した仇の顔は絶対に忘れない!」

「お前は、まさか、なぜここに・・・」

スパッ


 何の巡り合わせだろうか。帝国に行く途中に立ち寄ったソフィアの故郷で、まさか彼女が両親の敵と出会うとは。もしかしたらアテナ様がソフィアに仇を取らせるためにそうしたのかもしれない。そんなことを考えた。


「もどろうか。」

「そうね。」

「はい。」

「了解にゃ。」


 オレ達がエルフの里に戻ると、族長をはじめ全員で出迎えてくれた。


「ここからも見えました。赤色をしたドラゴンが森を焼こうとしていたのを。森を守ってくれてありがとうございます。感謝します。」

「さっきは悪かったな。それにしてもお前達、相当強いな。」


 隊長に褒められてサニーもソフィアもミーアも嬉しそうだ。


「お役に立てたようで良かったです。」

「ところでユリウス殿は何者ですか?赤竜を倒すなど、とても人族には思えないのですが。」

「オレは人族ですよ。ただ、ある方から修行するように言われてるんです。そのことをあの赤竜が思い出させてくれました。」
 
「そうなんですか~。」


 それから3日ほどエルフの里に滞在して獣人の里に向かった。
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