異世界修行の旅

甲斐源氏

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大司教ミカエリからの刺客

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 2回目のダンジョン探索から転移で屋敷に帰ると、そこに母上がいた。


「ユーリちゃん。どこに行ってたの?」

「ああ、母上。ちょっとダンジョンに。」

「そうなのね。でも、サニーちゃんやソフィーちゃんやミーちゃんに危なくないようにしないとダメよ。」


 3人は狐につままれたようにキョトンとしている。


「あらあら、3人とも何をボーとしてるの?」

「母上の言い方が普段と違っていたからですよ。」

「そう?だって3人は私の可愛い娘なんですから、当然でしょ。」

「マリア様~。」

「奥様~。」

「なんか嬉しいにゃ!」


 すると父上がやってきた。


「ダンジョンに行っていたのか。それで3人の力はついたのか?」

「はい。恐らくSランクの冒険者クラスにはなっていると思います。」

「それは凄いじゃないか!さすがはユリウスの嫁たちだな。」


 どうやら3人には父上の言葉がとどめになったようだ。頭から湯気が出ていた。
 

「ところで父上。グレゴリー大司教様の身辺に変わったことはなかったですか?」

「大丈夫だ。シューベルを中心に近衛騎士団が警護しているからな。」

「そうですか。出発は明日ですよね?」

「ああ、頼んだぞ。」

「はい。」


 そして翌朝、オレ達は屋敷の皆に見送られてグレゴリー大司教のもとに向かった。


「やあ、ユリウスじゃないか!」

「ご苦労様です。シューベル先輩。」

「こんなところで何してるんだ?」

「はい。グレゴリー大司教様の警護を依頼されたんですよ。」


 驚くと思っていたが、シューベルが意外なことを言ってきた。


「やっぱりな~。学生時代からユリウスはすごいと思っていたんだよ。お前、わざと力を隠してたんだろ?まあ、スチュワート辺境伯家が疑われても困るもんな。」

「すみませんでした。騙してたようで。」

「いいさ。それにしてもサニーも美人になったもんだ。それに隣にいる美人二人は誰なんだ?」

「オレの婚約者ですよ。」

「お、お、お前!まさか3人と婚約してるのか?!しかもこんな美人達と!羨ましい奴だ!」

「シューベル様!そんなこと言ってるとマーガレットに言いつけますよ!」

「サニー!それだけは勘弁してくれ!」

「ハッハッハッハッハッ」


 その後、オレ達はシューベルの紹介でグレゴリー大司教と面会することになった。


「陛下よりグレゴリー大司教様の警護を仰せつかったユリウスと申します。」


 すると、グレゴリー大司教が予想もしなかった行動に出た。オレに向かって拝み始めたのだ。


「最高神アテナ様。感謝します。この混沌とした世界を平和へと導くために、かような青年を使徒として遣わしていただいたことに深く感謝申し上げます。」


 シューベルも周りにいた兵士達や司教達も驚いた。


「大司教様。立ってください。オレはそんな大それたものではありませんから。」

「わかりました。使徒様のご指示であれば従いましょう。」


 グレゴリー大司教が立ち上がった。どうやら後でしっかりと説明する必要がありそうだ。

 いろいろとあったが大司教を乗せた馬車がゆっくりと動き始めた。シューベルは立場上王都に残り、大司教を乗せた馬車の周りを兵士達が囲んでいる。オレ達は大司教を乗せた馬車のすぐ前の馬車に乗ることにした。


「さっきの大司教様の様子からして、ユーリのことを何か知っていそうなんだけど。」

「オレも気になった。でも、陛下や公爵様が言ったとは思えないんだよね。」

「ユリウス様。もしかしたらアテナ様から天啓があったんではないでしょうか?」

「そうかもね。まあ、後で誤解を解く必要はありそうだけどさ。」


 ボルトン王国は大陸のほぼ中央に位置している。そのため、海がない。ボルトン王国の北側にゲルム帝国が存在し、そのゲルム帝国の東側に小国であるムサシン王国とエチガイ王国がある。アリスト聖教国はその南、つまりボルトン王国のすぐ東に位置しているのだ。


「聖教国には海があるのよね?」

「そうさ。」

「海の向こうには何があるんですか?」

「オレにもわからないよ。もしかしたら未知の大陸があるかもね。オレがいた世界は地球って言って球体だったんだ。この世界も同じ球体だとしたら、他にも未知の大陸があるかもよ。」

「行ってみたいにゃ!美味しいものがありそうにゃ!未知の食べ物なんて最高にゃ!」


 地球ではいくつも大陸があって、そこに様々な民族の人達が暮らしていた。もしかしたらこの世界も同じなんじゃないだろうか。


「そう言えばエルフ族の里や獣人族の里には行ったけど、まさかエルフ族や獣人族があの狭い地域に全員いるわけじゃないんだよね?」


 するとソフィアが説明してくれた。


「エルフ族も獣人族もドワーフ族も元々はフェアリー大陸にいたと言われています。そこには世界樹という大木があって、精霊達はその世界樹から生まれていると聞いています。」

「それは伝説にゃ!」

「なんか夢があるよね。いつかそのフェアリー大陸に行ってみたいな~。」

「その前に、私達との結婚が先でしょ!」

「ああ、そうだった!!!」

「ハッハッハッハッ」


 馬車は順調に進み国境を越えてアリスト聖教国の街までやって来た。さすがに巡礼者の数が多い。今回グレゴリー大司教がアリスト聖教国に行く目的は、教皇パウリ2世の後継者を決めるためだ。当然だが、各地域の司教達もアリスト聖教国の聖都に向かっているのだ。


「なにかしら?馬車が急に止まったんだけど。」

「ユリウス様。外が何か騒がしいようです。」


 馬車の窓から外を見てみると、武器を持った黒装束の者達が兵士達と対峙していた。


「オレ達も行こうか。」

「はい。」

「やっつけるにゃ!」


 ミーアが馬車から降りた。オレ達も続いて馬車から降りた。すると、50名ほどの敵がこちらを取り囲んでいる。オレは隊長のカーリーのところに行った。


「どういう状況ですか?」

「ユリウス様。見ての通り刺客です。どうやらグレゴリー大司教様を狙っているようです。」

「カーリーさん。兵士達を下がらせてくれますか。」

「えっ?!」

「大丈夫ですよ。オレ達で何とかしますから。皆さんはグレゴリー大司教様の馬車を守ってください。」

「わかりました。」


 カーリーの指示で兵士達がグレゴリー大司教の馬車の周りに集まった。オレは黒装束の者達の前に出た。


「降伏するなら殺さないけど。」


 するとリーダーらしき男が笑いながら言った。


「フッフッフッフッ この状況でよく冷静でいられるな。降伏するのはお前達のほうだろ。素直にグレゴリーを引き渡せば命だけは助けてやろう。」

「一応忠告はしたからね。」

「ほざけ!皆殺しにしろ!」


 リーダーの命令で黒装束の男達が一斉に攻撃してきた。


「サニー、ソフィア、ミーア!相手はプロの暗殺集団だ!遠慮はいらないよ!」

「わかったわ。」

「了解です。」

「始末するにゃ!」


 相手の動きは俊敏だ。さすがはプロの集団だ。よく訓練されている。ダンジョンに行く前の彼女達なら相当苦戦しただろう。だが、彼女達のレベルも相当上がっている。


カキン ガシッ スパッ
バタン ドタン


 部下がどんどんやられていく様子を見てリーダーの男は相当焦ったようだ。


「き、き、貴様らは何者だ!」

「オレ達は護衛だよ。」

「こんなに手ごわい護衛がいるとは・・・・」

「だから最初に言ったよね。」

「おのれ~!」


 リーダーの男が剣に魔法を付与して斬りかかってきた。それなりの強さだ。剣からはゆらゆらと炎が立ち上っている。


「それだけの強さを持ちながら悪に加担したの?なんかものすごくもったいないよ。その力を正義のために使えばアテナ様も喜んだのに。」

「ふざけるな!我らはアテナ様のために戦っているんだ!大司教ミカエリ様の言葉はアテナ様の言葉だ!」

「そうやって無実の人々をどれだけ殺してきたんだ。貴様からどす黒いオーラが出ているのを誰も教えてくれなかったのか!」

「ほざけ!死ね!」


 リーダーが素早い動きで斬りかかってきた。


バシッ

「な、なんだと~!」


 オレは指2本でリーダーの剣を受け止めた。そして、氷の魔法を剣に流し込むと見る見るうちに剣が凍り付いていく。そして剣を持つリーダーの手も凍り始めた。リーダーは慌てて剣を手放し、逆の手に持った短剣で突き刺そうとしてきた。


「デヤー!」

サッ グサッ

「な、何なんだ?お前は?」

ドサッ


 オレは一瞬で短剣を奪い取ってリーダーの腹に突き刺した。どうやら短剣には毒が塗られていたようだ。リーダーは口から血を流してその場に倒れた。


「哀れな連中だ。」

「終わったようね!ユーリ!」

「死体はどうしますか?ユリウス様。」

「このまま放っておくわけにもいかないしな~。どこか一か所に集めて燃やそうか。」

「了解にゃ!」


 グレゴリー大司教の馬車を警護していた兵士達もやってきた。


「ユリウス様。お手伝いさせてください。」

「お願いします。カーリーさん。」

「いや、俺達何もしてないんで、この程度のことは手伝わせてください。」


 流石に全員での作業は早かった。死体を燃やして再び馬車はアリスト聖教国の聖都カレットに向かって動き出した。俺達の戦いを見ていた兵士達は、サニー、ソフィア、ミーアに夢中になったようだ。まあ、美人なんだから仕方がないかもしれない。でも、3人ともオレの婚約者なんだけど。


「あとどれくらいかかるんだろう?サニーは聖都に行ったことあるんだろ?」

「あるわよ。ここからだと、あと3日ぐらいかな。」

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