異世界修行の旅

甲斐源氏

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魔族

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 半魚人達を殲滅すると、海の中から巨大な蜘蛛の姿で頭に角の生えた生き物が現れた。どうやら半魚人達を従わせていた親玉のようだ。


「お前は悪魔王サティーニの仲間か?」

「悪魔だと?馬鹿を言え!あんな弱い連中と一緒にするな!そうだ。この前、四天王とか言った奴と戦ったが弱すぎて相手にならなかったな。」


 意外なことを聞いた。


「その悪魔はどうしたんだ?」

「食ったに決まってるだろ!俺は食った者の能力も魔力も奪えるのさ。お前の能力も魔力もな。」

“なるほどな。こいつから悪魔族の魔力を感じたが、そういうことだったのか。”

「俺はブルートだ。貴様の名を聞いておこうか。」

「ユリウスだ。」

「行くぞ!」


 ブルートが口から糸を吐きだした。粘着性が相当強そうだ。


「みんな、下がっていてくれ!こいつはオレが倒す!」

「ユーリ、気をつけて!」


 何度も何度も糸を吐き出す。近づこうにも近づけない。気づけば洞窟内が糸だらけになっていた。


「ハッハッハッハッ 逃げ場はないぞ!」


 ブルートが糸を伝いながら鋭い爪で攻撃してきた。避けた瞬間、足のかかと部分が糸に触れてしまった。もがけばもがくほど糸が絡みついてくる。


「ユーリー!」

 
 サニー達が心配そうに見ている。


“しょうがない。”


 オレは魔力を解放した。全身から神々しい光があふれ出て、洞窟内に張り巡らされていたブルートの糸がどんどん消えていく。


「貴様!何者だ!ただの人族ではあるまい!」

「そんなことはどうでもいいさ。今度はこちらから行くぞ!」


 オレは刀に魔力を込めてブルートの足を斬った。


グワッ


 8本ある足のうち2本を斬ったのだが、見る見るうちに再生していく。


「ハッハッハッハッ その程度の攻撃では俺は倒せんぞ!」

「再生能力があるのか!」


 逆にブルートが口から紫色の毒を吐いてきた。すかさず避けたが、毒が霧状になってオレに襲い掛かる。


“くそー!体が重い!毒の影響か!”

「どうやら限界のようだな。ならば苦しまないように殺してやろう!」

“あの再生能力さえ何とかなれば。何か方法は・・・・。”


 オレは奈落での修行を思い出していた。


“ああ、そうか!あの魔法なら!”


 オレは深く深呼吸し、魔力を集中させた。目の前にはブルートが鋭い爪で襲い掛かってきている。オレはそれを払いのけ、魔法を放った。


『奈落の業火』


 すると青白い炎がブルートの身体を覆い始めた。


「無駄だ!再生能力のある俺には意味がない!」


 だが、ブルートの身体が再生しても、また炎が焼いていく。ブルートが必死で炎を払いのけようとするが、炎が消える様子はない。


「なぜ消えぬ!グワッ」

「その炎は消えん!オレが消すまではな!その炎はすべてを焼き尽くす『奈落の業火』だ!」 
 
「奈落の?き、貴様は……なのか……」


 ブルートは完全に燃えて灰となって消えた。


「は~。終わった~。紙一重だったな。」


 するとそこにサニー達がやってきた。


「ユーリ!大丈夫?」

「ああ、大丈夫さ。」

「あの蜘蛛の魔物、強かったにゃ!」

「そうね。」


 すると、灰になった蜘蛛の中から強力な魔力が現れ、どんどん人型になっていく。


「さすがですね。アテナの使徒よ。」

「お前は何者だ?」

「私ですか?私は悪魔族四天王のドールです。以後お見知りおきを。」

「あいつ、あの蜘蛛に食われたくせに生意気にゃ!」

「ハッハッハッハッ そうですね。確かに食われましたね。ですが誤解しないでください。別に負けたわけではありませんから。あいつの身体に入り込んで操ろうとしただけですよ。まあ、その前に倒されてしまいましたけどね。」


 オレとサニー達が戦おうとすると、ドールが言った。


「私はこれで失礼しますよ。あなた方と戦うつもりはありませんから。今はですけどね。」


 ドールの姿が黒い靄となって消えた。

 それからオレ達は再び海岸へと戻った。すると、そこには人魚族のマーナ達がイカルドの船の周りにいた。なぜかイカルドの鼻の下が伸びていた。


「おお、帰って来たか。それでどうだったんだ?」

「大変でしたよ。」

「やはり使徒様でも大変でしたか。我々だったらどうなっていたことか。」

「半魚人達はあっという間に討伐したにゃ!」


 するとイカルドが自慢げに言った。


「そうだよな~。クラーケンやシーサーペントをあんなに簡単に退治できる連中だもんな。
半魚人程度に負けるわけがないよな。」


 人魚達がまじまじとオレ達を見た。


「クラーケンやシーサーペントを討伐したんですか?」

「まあね。」

「なら、どうして半魚人の討伐が大変だったんですか?数がそれほど多かったんですか?」


 するとサニーが言った。


「違うわよ!ブルートとかいうでっかい蜘蛛の化け物が現れたのよ。」

「もしかして、その蜘蛛の化け物って頭に角が出ていませんでしたか?」

「確かにあったよ。」


 すると、人魚達が青ざめた顔になった。


「ブルートはこの辺り一帯を支配下におさめる最強の魔族の一人です。それを倒したんですか?」

「まあね。ギリギリだったけどね。」


 その後、マーナや人魚達がお祝いの宴を開いてくれた。食材はもちろん海の幸だ。食事をしながらマーナが言ってきた。


「先ほど悪魔族の四天王が現れたと言っていましたが、悪魔族がこの魔大陸に帰ってきたんですか?」

「そうだけど、悪魔族達は元々この大陸にいたの?」

「ええ、かなり昔の話ですが。」

「詳しく教えてくれるかな?」

「はい。この魔大陸には様々な種族が暮らしていますが、昔は大きく4つの勢力に分かれていたんです。竜王を中心とした竜族が治める竜王国、巨人達を束ねるギガスが支配したタイタン王国、ダークエルフ族や堕天使族をバンパイア族のドラクが束ねたマジョリカ王国、そして悪魔族のサティーニが支配したヘル王国です。」

「そうなんだ~。」

「この大陸の王になろうと覇権を争っていたんですが、他の3種族が協力して悪魔族のサティーニを倒したんです。」

「だったらこの大陸は平和になったんでしょ?」

「サニー、そんな簡単な話じゃないと思うよ。」

「ユリウス様のおっしゃる通りです。それからも残った3つの種族が争いを続けているんです。ユリウス様が倒されたブルートはどの勢力にも属さず、自らの勢力の拡大を画策していました。」


 魔族を平和にするためにはどうしたらいいんだろう。戦闘を好む種族なのは想像していたが、数百年以上も戦い続けるのは異常だ。


“確か中国でも春秋戦国時代とかあったはずだよな。秦が中華を統一して戦争がなくなったんだっけかな。もっとちゃんと勉強しておけば良かったよ。”


 するとマーナがとんでもないことを言い出した。


「この大陸に絶対的な支配者がいれば戦争もなくなると思うんですけど。魔族は基本的に、力がすべてと考える種族が多いですから。」

「ユリウス様が魔王になるにゃ!そうすれば解決にゃ!」

「ミーア!ユリウス様が魔王なんてダメに決まってるでしょ!」

「そうよ。ミー。あなたはユーリと結婚したくないの!」

「結婚したいにゃ~。やっぱり魔王になるのはダメにゃ~。」


 その日はなかなか眠れなかった。船から降りて一人で浜辺に座って月を眺めていた。


「ユーリ、眠れないの?」

「ああ、サニーか。」

「そうよね。長年争い続けている魔族達を一つにまとめるのだけでも難しいのに、悪魔族達を討伐しなければならないんだものね。」

「どうしたものかな~。」


 すると、二人の前に眩しい光の球が現れた。オレもサニーもそれが最高神アテナだとすぐにわかった。


「久しぶりね。」

「はい。アテナ様。」

「あなた達に教えておきたいことがあるのよ。」

「なんでしょうか?」

「魔族についてなんだけどね。魔族には様々な種族がいるけど、理由は知ってる?」

「いいえ。」

「魔族の中にはトロール族や堕天使族のように天界にいた者達もいるのよ。他にダークエルフ族やバンパイア族、ほとんどの者達が魔素を取り込み過ぎて魔族になったの。でも、悪魔族だけは違うわ。彼らは人々の成長のために創造したの。」

「どういうことですか?」

「人は様々な経験を通して成長するの。悲しみ、怒り、憎しみ、喜び、楽しみ。様々な感情を経験するの。宝物だって簡単に手に入れば大切にしないでしょ。でも、苦労して努力してやっとの思いで手に入れた物は大切よね。」

「アテナ様のおっしゃる通りです。」

「だから、人々が成長するためには天使とは逆の存在である悪魔が必要だったの。でも、世界が乱れれば乱れるほど悪魔達は力を手にするわ。でも力を手に入れ過ぎた悪魔達は、この世界に悪影響を及ぼすようになるの。」

「はい。」


 アテナ様の言っていることがオレには痛いほどよくわかった。オレも努力せず、その日その日を楽しく暮らさればいいと思っていたのだから。でも、奈落での修行やこの世界に来てからの経験で、信じられないほどたくさんの宝物を手にしたと思える。辛い経験があったから今があるのだ。


「これからオレはどうすればいいんでしょう?」

「魔素を取り込み過ぎて進化してしまった者達から魔素を取り除くことはできないわ。」


 魔法か何かで魔素を取り除くことができればと思っていたが、どうやら無理のようだ。


「そうね~。彼らは戦闘を好むのは知っているわね。」

「はい。」

「どうして戦闘を好むのか知ってる?」

「いいえ。」

「自分が一番強いとアピールするためよ。だから自分よりも強いと思えるものには従うわよ。あなたが自分の力を示すことができれば、魔族達を従わせることは可能だと思うわ。」

「オレに魔王になれって言うことですか?」

「いいえ。あなたが力を示して、その上でリーダーを決めればいいんじゃないの。」


 納得だ。オレが彼らよりも強ければ彼らはオレに従う。ならば、オレの力を彼らに見せつければよいのだ。オレの気持ちは固まった。
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