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3話
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エイデンと私は花が咲き誇る庭のベンチに座って話している。
「私の本当の名前は嶋田亜希というんです」
「シマダアキ?変わった名前だね。どこまでが名字なの?」
「嶋田が名字です。あ、こちら風で言うとアキ・シマダですね」
「なるほど。こちら風ってことはアキは別の国から来たの?」
「別の国というか…そもそもこの世界ではないんですよ」
「この世界じゃない??なんだか難しいね」
エイデンは考え込むように座っている。
「まぁ別の国みたいなものですよ」
アキはこれ以上考えさせないように無理やり結論を出す。
「そうなの?…そうだ、アニタは自由になりたいと言ってたみたいだけど具体的には何がしたいの?」
アキは一瞬行っていいのか悩む。アニタの言う自由がエイデンを驚かせるものになるかもしれない。
「どうしたの?」
「えっと…アニタは…」
「うん」
「…士になりたいんです」
「ん?」
「騎士になりたいんです!」
「え、でも王家の騎士になったら今より自由なんてないよ??」
「いえ、王家の騎士ではなく魔物を狩る騎士?になりたいそうなんです」
「魔物を狩る騎士って…酷薄の騎士か!?」
彼はベンチから勢いよく立ち上がる。
「え?こくはくの騎士?」
キョトンと座っているアキは頭に告白という文字が浮かんだがエイデンの驚き方を見て違う意味だと確信した。
「アニタが酷薄の騎士に!?どうして!」
頭を抱えてブツブツつぶやいているエイデンを見て、内心しまったと思った。
「あの…酷薄の騎士ってなんですか?」
エイデンを少しでも落ち着かせるために座らせるため、隣をポンポンと叩く。
「うーん、これは二つ名なんだよ。酷薄っていうのはね残酷で薄情って意味なんだけど…本当の名前は魔物討伐騎士団っていうんだ」
「なるほど…その魔物討伐騎士団にアニタは入りたいってことですね」
「どうしてアニタは酷薄の騎士になりたいなんて…」
「きっかけは確か…アニタが8歳の頃に馬車で移動しているときに魔物が現れて…」
「え!そんな話聞いてないぞ!!」
エイデンはアキの肩をガシッと掴んで目を見開き前後に揺らす。中に健康な人が入っているとしても病み上がりをそんなふうに扱うのはどうかと思う。
「落ち着いてエイデン兄様。アニタは傷一つついてません!話はここからです!」
「あ、ごめん。ちゃんと聞くよ」
「それでアニタが乗った馬車に魔物が襲いかかったとき、その魔物討伐騎士団が倒してくれたそうなんです。その時の光景が頭から離れないって…」
「…本当はその中の誰かに惚れたんじゃないの?」
「いいえ。颯爽と魔物と戦う姿がかっこよかったと言っていましたよ。それに女性の騎士も居たから自分もなれるかもって」
「惚れたのならまだ良かったのに」と大きなため息をつくエイデンはこの少しの時間で何度も頭を抱えている。しかしハッと笑顔を浮かべた顔を上げる。
「アニタは体力がない!騎士は体力が第一だから…!」
「それが言いにくいのですが…アニタは基礎体力どころか闘い方すら身につけているんですよ」
そう…今17歳のアニタは8歳の時に魔物討伐騎士団に憧れた。その間の9年間ただ憧れていただけで留まるはずなく、家族に内緒で特訓をしていたそうだ。その上アニタを強くしたのは、それまで秘められていた才能が開花したためである。入れ替わった私が剣を持っただけでも、勝手に構えをとるくらい体に染み付いている。
「そっか…アニタは勉学だけでも他のご令嬢たちよりずば抜けていたからな、ハハ」
もうエイデンは乾いた笑いしか出ないようだ。
「まぁ…私はアニタの夢を叶えてみせますよ」
スクッと立ち上がりエイデンの目をしっかりと見る。
「…君は、アキはいいの?酷薄の騎士っていわれるくらい恐れられているし、魔物を狩らなければいけないんだよ?」
エイデンがここまで賛成しない理由は心配で仕方がないからだろう。
「大丈夫よエイデン兄様!だってアニタと私は二人で一つ。最強なのよ?」
アキはそう言ってニッと令嬢らしくないワンパクな笑みを浮かべる。
「……!そっか、そうだね!」
立ち上がったエイデンの背丈はアニタより高くたくましい。
「兄である僕を困らせるなんて困った妹達だよ」と、乾いた笑いとはまったく違う温かい笑顔に優しい手つきで頭をなでた。
「私の本当の名前は嶋田亜希というんです」
「シマダアキ?変わった名前だね。どこまでが名字なの?」
「嶋田が名字です。あ、こちら風で言うとアキ・シマダですね」
「なるほど。こちら風ってことはアキは別の国から来たの?」
「別の国というか…そもそもこの世界ではないんですよ」
「この世界じゃない??なんだか難しいね」
エイデンは考え込むように座っている。
「まぁ別の国みたいなものですよ」
アキはこれ以上考えさせないように無理やり結論を出す。
「そうなの?…そうだ、アニタは自由になりたいと言ってたみたいだけど具体的には何がしたいの?」
アキは一瞬行っていいのか悩む。アニタの言う自由がエイデンを驚かせるものになるかもしれない。
「どうしたの?」
「えっと…アニタは…」
「うん」
「…士になりたいんです」
「ん?」
「騎士になりたいんです!」
「え、でも王家の騎士になったら今より自由なんてないよ??」
「いえ、王家の騎士ではなく魔物を狩る騎士?になりたいそうなんです」
「魔物を狩る騎士って…酷薄の騎士か!?」
彼はベンチから勢いよく立ち上がる。
「え?こくはくの騎士?」
キョトンと座っているアキは頭に告白という文字が浮かんだがエイデンの驚き方を見て違う意味だと確信した。
「アニタが酷薄の騎士に!?どうして!」
頭を抱えてブツブツつぶやいているエイデンを見て、内心しまったと思った。
「あの…酷薄の騎士ってなんですか?」
エイデンを少しでも落ち着かせるために座らせるため、隣をポンポンと叩く。
「うーん、これは二つ名なんだよ。酷薄っていうのはね残酷で薄情って意味なんだけど…本当の名前は魔物討伐騎士団っていうんだ」
「なるほど…その魔物討伐騎士団にアニタは入りたいってことですね」
「どうしてアニタは酷薄の騎士になりたいなんて…」
「きっかけは確か…アニタが8歳の頃に馬車で移動しているときに魔物が現れて…」
「え!そんな話聞いてないぞ!!」
エイデンはアキの肩をガシッと掴んで目を見開き前後に揺らす。中に健康な人が入っているとしても病み上がりをそんなふうに扱うのはどうかと思う。
「落ち着いてエイデン兄様。アニタは傷一つついてません!話はここからです!」
「あ、ごめん。ちゃんと聞くよ」
「それでアニタが乗った馬車に魔物が襲いかかったとき、その魔物討伐騎士団が倒してくれたそうなんです。その時の光景が頭から離れないって…」
「…本当はその中の誰かに惚れたんじゃないの?」
「いいえ。颯爽と魔物と戦う姿がかっこよかったと言っていましたよ。それに女性の騎士も居たから自分もなれるかもって」
「惚れたのならまだ良かったのに」と大きなため息をつくエイデンはこの少しの時間で何度も頭を抱えている。しかしハッと笑顔を浮かべた顔を上げる。
「アニタは体力がない!騎士は体力が第一だから…!」
「それが言いにくいのですが…アニタは基礎体力どころか闘い方すら身につけているんですよ」
そう…今17歳のアニタは8歳の時に魔物討伐騎士団に憧れた。その間の9年間ただ憧れていただけで留まるはずなく、家族に内緒で特訓をしていたそうだ。その上アニタを強くしたのは、それまで秘められていた才能が開花したためである。入れ替わった私が剣を持っただけでも、勝手に構えをとるくらい体に染み付いている。
「そっか…アニタは勉学だけでも他のご令嬢たちよりずば抜けていたからな、ハハ」
もうエイデンは乾いた笑いしか出ないようだ。
「まぁ…私はアニタの夢を叶えてみせますよ」
スクッと立ち上がりエイデンの目をしっかりと見る。
「…君は、アキはいいの?酷薄の騎士っていわれるくらい恐れられているし、魔物を狩らなければいけないんだよ?」
エイデンがここまで賛成しない理由は心配で仕方がないからだろう。
「大丈夫よエイデン兄様!だってアニタと私は二人で一つ。最強なのよ?」
アキはそう言ってニッと令嬢らしくないワンパクな笑みを浮かべる。
「……!そっか、そうだね!」
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