ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第02話 世界一平和な逆襲(後)

08.第七夫人・エルリア

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 ***

 首都を攻撃して軍に防御させるという作戦は無事成功に至る。画面の中でドレイク大将が苦虫を噛み潰したような顔で原稿を読まされていた。

『ヴァン・スナキア特務顧問の力を頼らずとも、我々は極めて大規模の攻撃に対応できることが証明された。この先も訓練を積み、人員を拡大していけば、また、市民の努力により他国との関係を改善し攻撃自体を減らすことができれば、十数年以内に軍のみで国防に当たることも可能となるだろう』

 これにてヴァンの計画は完遂。誘拐は防ぎ、軍にも総理にも同時に勝利した。

「これで一段落ですわね。ヴァン様、お疲れ様です」

 隣で第七夫人・エルリアがしみじみと呟いた。

 彼女は先ほどまで自宅で過ごしていたというのにアイメイクまでバッチリ作り込んでいた。毛先を無造作に遊ばせたセミロングの髪はその実精密な調整の元でセットされていたはずだ。……だが今はメイクも髪も少し乱れている。

 服も着ていない。

「ねぇヴァン様、もう一回……」

 ヴァンの腕の中で艶っぽい声で囁く。潤んだ眼。ほの赤く染められた頬。その全身からはメスの香りとしか表現できない何かがムンムンと立ち昇っていた。

 エルリアはヴァンの「布団の中に隠れていよう」という下心満載の提案に、「であれば場末のラブホにでも避難して思う存分楽しみましょう!」というヴァンをエロで上回る見事な回答を突きつけた。確かにそんなところにヴァン・スナキア夫妻がいるとは誰も思うまい。他の分身たちが世界のあちこちで悪戦苦闘している中で、ヴァン[エルリア]は本腰を入れて妻とイチャこいていたのだ。

 申し訳ないとは思っている。それどころじゃないだろというお叱りは理解できる。だが妻からの誘いを断るなどというヴァンらしからぬ姿を見せてしまえば、ヴァンが何らかのトラブルに巻き込まれて気が気じゃない状態であることが伝わってしまう。問い詰められれば戦争が起きかけていることを隠しきれなくなるかもしれない。

 このヴァンにとっては全て放っぽり出してエルリアとのエロに集中するのが重要な任務だったのだ。しかし、流石に潮時だろう。

「そ、そろそろ帰ろう。もう夕飯の時間だ」

 もうソワソワして仕方がない。ヴァンにはまだネイルド共和国とギリザナの首脳を探し当てて戦争を止めるという大仕事が残っているのだ。「夕食」というワードを出せばヴァンがしたくないからではなく帰るべき時間だから断っているというニュアンスになるはず。

「で、ですがヴァン様……。今日のわたくしは少しおかしいんです。あれだけ<検閲されました>で<検閲されました>の奥を<検閲されました>していただいたのに身体の疼きが治らないんです……」

 エルリアはお上品な口調で絶対に放送できない単語を連発する。ベッドの上だからではない。こういう人なのだ。

「種の保存のための本能なのでしょうか。ヴァン様がピンチだと思うと何だか<検閲されました>が<検閲されました>になってしまうんです。そう、ピンチはセックスの元なのです!」

 セックスという単語が可愛く感じるほどの隠語を交えて熱弁する。表情は真剣そのもの。彼女はきっと淫乱の星のコアから生まれたエロの権化なのだ。

「そ、そうは言っても、他のみんなはもう帰って料理してくれてるぞ……?」

 単にもはやエロどころではないというだけではない。彼女だけサボる形になるのは彼女の立場を悪くするのではと心配になる。

「あ、皆さんが集まってらっしゃるなら<検閲されました>をしましょう! 今日こそ! 全員参加のお下劣<検閲されました>を!」

 エルリアは多人数参加型の淫らな取っ組み合いを示す単語を二度放つ。

「エル、それはしないっていつも言ってるだろ?」
「もう。ヴァン様は性癖に合致する女性ばかりを集めているんですから、わたくしの性癖と向き合ってくださってもいいじゃないですか。しましょうよ、<検閲されました>を!」
「……っ」

 また言う。彼女は「被ハーレムフェチ」という世にも珍しい性癖を抱えていた。好きな男性が多数の女性を侍らせているのを見るとムラムラするそうだ。ある意味一夫多妻という環境に最も適した人物である。

「エル? いつも言ってるがそれは……」

 ヴァンが複数の妻を迎えたのは別に淫奔な毎日を謳歌するためではない。本当にやむを得ない事情があって仕方なく受け入れていただいている立場だ。せめて一人一人にできるだけ誠実でありたいヴァンは、他の妻を巻き込んでしまうソレを受け入れることはできずにいた。

「ですが、わたくしかつてないほど昂っておりましてすごく<検閲されました>です。今他の皆さんのお顔を見たら我を忘れて襲い掛かって全員の<検閲されました>をおっ広げにしてしまうかもしれませんよ?」
「か、勘弁してくれ。また『変態』って怒られるぞ」
「まあ! 私変態ではありませんよ! 性欲スイッチの『OFF』が壊れているだけです!」

 おそらくそれを変態というのだろう。だがヴァンもヴァンで国中に異常性癖の変態と呼ばれている身なので強く言えない。ある意味お似合いのカップルである。

わたくし多少暴れても他の皆さんには許していただけます! 昨日は『花嫁修行・その1344』で身につけたコンロの修理でミオさんを助けて差し上げましたし、先日は『花嫁修行・その3932』で身につけた壁紙張り替えでフラムさんを────」
「くっ……!」

 そして彼女を強く叱れないのは他の妻も同様だった。エルリアは『嫁サイボーグ』の異名を持ち、万を超えるスキルを有している。人のために苦労することを厭わず、他の妻たちが何か困っていたら進んで助けに行く。皆エルリアには深く感謝しているのだ。

 こうなったら帰るのも恐ろしい。ここで彼女を性的にギタギタにして満足させるしかない。だが戦争のことが気がかりで────、

(こちらヴァン[ネイルド共和国]。大統領を見つけた!)
(こちらヴァン[ギリザナ]。こっちもだ! 説得に取りかかる!)

「!」

 タイミングよく朗報が入る。あとは両首脳を説得すれば今日のタスクは終了だ。これでこちらはこちらのやるべき事に集中できる。あちらの自分たちはまさか今の報告がセックス開始の合図になるとは思っていなかっただろう。申し訳ないが頑張ってくれ。

「エル、一対一にしよう。気絶させて連れ帰ってやるからな……!」
「あら、そんなに頑張ってくださるのであれば♡」

 エルリアはひとまず納得したようで、自らのプルプルの唇を端からつーっと舐めた。そして何を思ったか勢いよくベッドから飛び出て、近くにあった棚を開ける。

「せっかくホテルに来ましたし、次は何か道具でも使いましょう! あ、緊縛なんていかがです⁉︎」

 ────気絶するのはこっちになるかもしれない。なんせ彼女の花嫁修行シリーズの内三割は性的なやつだ。

 モザイクをかけなければ放送できない類のアイテムを素っ裸で物色する彼女の背中を見つめながら、ヴァンは考える。本日他の妻たちはヴァンの計画に協力してくれたり、知恵をくれたり、意図はせずともアイディアを出してくれたりと大活躍だった。エルリアも何かやってくれよと責める気は一切ないのだが、スキルフルな彼女こそ貢献する場面がありそうなものだったのに。

「エルは今日……、エロいだけだったな」
「まあ♡ どうしてそんなに褒めてくださるんですか?」
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