ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第07話 如何に愚かな喧嘩を売ったのか(過去編)

08.思い知らせてやる

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 ***

 首都アラム。ヴァンは透過魔法を使ってラルド・シーカーの捜索を行なっている。

 魔法の使用時はその気配をファクターに感じられてしまうものなのだが、透過魔法は気配自体もかなり軽減できる優れものだ。ヴァンほどの手練が本気で使えば、よほど優秀なファクターが完全に意識を集中しない限り察知されない。

 おかげでこの異常事態には誰も気づいていない。……誰にも見えていないだけで、現在この街はヴァンの分身に埋め尽くされているのだ。

 あらゆる建物に侵入し、クローゼットの中まで改めさせてもらっている。こうなるとどちらが犯罪者か分からない。しかし思い返せばヴァンは元々国家反逆罪に問われそうになっている身だ。不法侵入くらい些細なものだろう。

 手配書の写真は二年前に撮影されたものだそうだ。ある程度風貌は変化しているだろう。ヴァンは見落としがないよう注意して念入りに街中の人間の顔を確認していく。

 捜索開始から二分十五秒後、裏通りの雑居ビル七階にある小さなバーのカウンターで目当ての人物を発見した。革のジャケットに金属のチェーンをジャラジャラつけたいかにもな男だ。ヴァンは隣に腰掛けて問いかける。

「過激派組織ルーダシアンの幹部、ラルド・シーカーで間違いないな?」

 透過魔法を解除して唐突に現れたヴァンに、ラルドは目を見開いた。

「なっ……⁉︎ ヴァン様……っ⁉︎」
「用件は分かってるな? ……マスター、彼の会計を」

 ヴァンはカウンター内にいるマスターに視線を送る。しかしあまりの状況にまだ困惑しているようで、完全に固まってしまっていた。

 ラルドは逃げる姿勢を見せない。普段は逃走にテレポートを使用しているらしいが、ヴァン相手に逃げ切るのは不可能だと理解しているようだ。

「ヴァ、ヴァン様。どうやって俺を見つけたんですかい? ここなら平気だと思ったんですがね」

 少し危険な繁華街という土地柄アウトローでも気にせず客として扱う店があるようで、ここもその一つだったらしい。ラルドがマスターに疑いの眼差しを向けていることに気づき、ヴァンは正解を告げる。

「二十万人に分身して網を張った。彼の密告じゃない」

 これから長い間獄中にブチ込むことは確定とはいえ、変に彼を逆恨みされても困る。

「二十万人……! めちゃくちゃな……!」

 ラルドは額に汗を浮かべ、諦めたようにうすら笑いを浮かべていた。

「へ、へへ、ヴァン様。最後に一杯付き合ってもらえませんかね?」
「遠慮する」
「まあそう言わずに。親戚付き合いといこうじゃありませんか」
「親戚?」
「俺たちファクターは全員ルーダス様の子孫じゃないですか。親戚みたいなもんですよ」

 ヴァンは大っぴらにため息をつく。親戚に数えるには血が遠すぎるし、何より────、

「お前なんかに身内と思われたくないな」

 冷酷に言い捨てつつ、さっさと会計を出してくれという願いを込めてマスターに再度視線を送る。するとラルドは目を眇め、少々まごつきながらも抗弁する。

「こ、こちらこそ、アンタの嫁さんとやらが身内になるのは穏やかじゃないですぜ。ビースティア風情がスナキア家に入るなんて……」

 ジルーナだってこんな奴に親族呼ばわりされたくないだろうが、憎々しげなその言い草には少々苛立った。

「何だと?」
「スナキア家じゃなくてもガキをたくさん作るのが俺たちファクターの使命ですよ。たった三百年で何十万人にまで増えたんだ。なのにファクターの筆頭であるあなたが馬鹿げた結婚をするんじゃたまったもんじゃねえ」

 ヴァンはマスターがようやく出してきた会計に視線を落としながら、嘆息混じりに返答する。

「ルーダシアンはスナキア家を神の如く崇めていると聞いたんだが、随分反抗的だな」
「あ、アンタは失格だ。あんな下等種族と結婚してスナキア家の血を途絶えさせるなんて正気じゃねえ」

 ヴァンの結婚に納得いかない。その思いが強いからこそラルドはあんな凶行に走ったのだ。ファクターを選ばれし者として掲げ上げ、それ以外を見下している。

 とはいえその腐った性根を手ずから叩き直してやる義理もない。納得なんてしなくても構わない。何を言われようがジルーナとの結婚生活を続けるだけだ。

「いいから早く金を払え。すぐに隔離島に連れて行ってやる」

 こいつはファクター犯罪者を収容するための孤島行きだ。警察も裁判所も備わっているため、即座に連行しても差し支えない。ヴァン以外のファクターではテレポートでも飛行魔法でも脱出不可能な距離にある。ラルドには余罪があるため、一生隔離島の住民として過ごす可能性もある。

 それをラルド自身、よく理解しているようだった。

「い、嫌だ……!」

 ラルドはテレポートで忽然と姿を消した。ヴァンはやれやれと肩をすくめつつ、魔法の気配を追って再び彼を見つけ出す。バーがあったビルの横を通っている薄暗い裏路地だった。

「どこへ行く。逃げられると思うなよ」

 ヴァンはラルドの背中に声をかける。

「うっ……!」

 ラルドは動揺し、壁を背にした。ヴァンは無表情でラルドに歩み寄る。

「もう観念しろ。お前はもう終わったんだ」
「へ、へへ、それはどうですかね……?」

 ラルドは不気味にニヤつきながら魔力を激らせる。────戦闘態勢だ。

「あ、アンタ今二十万分の一なんだろ? それなら俺にも勝機はあるかもしれねぇ……!」

 追い詰められたことで変に決心してしまったようだ。ヴァンを倒して逃げおおせる心算らしい。

「へへ、や、やってやるぜ……! そうだ、アンタはビースティアなんぞにやられちまった腑抜けだ。俺でも倒せるかもしれねぇ……!」

 ルーダシアンという選民意識を持つ集団で幹部を務めている点や、指名手配されても堂々と飲み歩いている点を見るに、ラルドはファクターの血が濃くそれなりに腕に覚えがあるのだろう。

 だが、格が違う。

「手間取らせるな。力の差も測れないようじゃ望みはない」
「ど、どうですかね? 俺がアンタを叩き直してやりますよ……! ギタギタにぶちのめして、国の守護者って役目を思い出させてやる」  
「今でも守ってはいるさ。お前すらな」

 ヴァンは諦念を込めて言い捨てる。お望みとあらば力づくで応えてやろう。ここまで覚悟を決めた人間を説き伏せるのは難しそうだし、第一面倒だ。

「……相手してやる。だが、お前のことも守ってやろう。大切な国民に怪我などさせない」

 ヴァンは準備体操とばかりに手首を回し、無防備ににじり寄っていく。

「命は奪わない。だが、それ以外は全て砕く」
「へっ、そいつはお優しいことです」

 うわずった声でせめてもの皮肉を返すラルドに、ヴァンはもう一押し脅しをかける。

「思い知らせてやるよ。いかに愚かな喧嘩を売ったのか」
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