41 / 47
Episode2・魔界の玉座のかたわらに
家族で初めての洞窟探検8
しおりを挟む
朝から新鮮な鳥肉を食べたからでしょうか、昨日の疲労が嘘のように癒えた気がします。
イスラの体力も回復したようで気合いを入れて荷物を背負ってくれました。
「できたぞ、はやくいこう」
「頼もしいですね。あなたも準備はいいですか?」
抱っこしているゼロスを覗き込む。
抱っこ紐で固定したゼロスは私の胸元で上機嫌に手足をばたつかせます。
「あーあー!」
「準備できているようですね」
いい子いい子と頭を撫でてあげると、ゼロスは嬉しそうにぺたっと全身で抱きついてきました。
こうして私たちの支度が整うと出発です。
ハウストが先頭に立ち、それにイスラと私が続きます。
滑りやすい足元に気を付けながら歩いていましたが、ふと先頭のハウストが立ち止まりました。
「どうしました?」
「岩だ。登って超えるしかないな」
ハウストが前方をランタンで照らします。
どうやら壁の崩落があったようで巨岩が積みあがっています。幸いにも通路が塞がれている様子はありませんが、巨岩をよじ登って越えるしかないようです。
「ブレイラ、登れるか?」
「はい、一人で大丈夫です」
砂利や岩が自分の背丈より高く積みあがっていますが、これくらいの斜面と高さなら登れます。
私は正面で抱っこしていたゼロスをおんぶに切り替えました。紐でしっかり背中に固定します。
「先に行くぞ」
まずハウストが登り、あっという間に巨岩の上に辿り着きました。
イスラも足場を利用して身軽に岩を登ってしまいます。
私も二人のように岩を登ろうと、足場を選びながらよじ登っていく。
砂利で滑りそうになりますが、大丈夫、できます。
「よいしょ、よいしょ」
「あーあー!」
背中のゼロスが小さな手で私の髪をぎゅっと握りしめます。
いたいですよ、ゼロス。でもこれって応援してくれているんですよね、たぶん。
なんとか登るとハウストとイスラが待っていてくれます。
「よく登ったな」
「当たり前です。私もこれくらい登れるんですよ」
フフンッ、誇らしいです。
山育ちを舐めないでもらいたいです。
そもそもハウストとイスラの身体能力や体力が規格外なのであって、私に体力が無いわけでも運動音痴なわけでもありません。むしろ平均より上のはず。
「大丈夫のようだな、次に行くぞ」
「はい」
私もハウストとイスラに続いてまた巨岩を登ります。
あ、この岩、さっきのよりも登り難いですね。斜面も急で滑りやすい。
ハウストとイスラはどうしているかと見上げると、二人はなんの問題もなくひょいひょい登っていました。羨ましいくらいの身体能力の高さと器用さです。
私は滑らないように気を付けながら斜面にへばりつく。ハウストやイスラとは違ってあまり格好いい登り方ではないので恥ずかしい。
「ブレイラ、大丈夫か?」
先に登ったハウストが心配そうに見下ろしてくれます。
でも今、私、岩にカエルみたいにへばりついているんですよね。
「……あんまり見ないでください」
「なぜだ」
「なぜって……」
「潰れたカエルみたいだからか?」
「つ、潰れた?! もっと別の言い方があるでしょう!」
潰れたとは何事です。せめてカエルだけならまだしも。
しかし岩にへばりつきながら睨んでも迫力はなく、ハウストは面白そうに笑って手を伸ばしてきました。
「手を貸せ」
「自分で登れます」
「俺が手を貸したい」
「……お願いします」
ハウストはずるいです。
私が断れない言い方をよく心得ているのですから。
手を伸ばすと彼の大きな手に握り返される。そして一気に体が引き上げられました。
私とゼロスを片手で引っ張り上げてもハウストの体幹が揺らぐことはありません。
「ありがとうございます」
「潰れたカエルのような姿も、もう少し見ていたかったがな」
「からかってます?」
「とんでもない。ゼロス、お前もよく頑張っているな」
ハウストは軽く笑って言うと、私の背中にいるゼロスの丸い頬をひと撫でしました。
ゼロスがくすぐったさに「きゃあ」と声を上げて喜んでいます。誤魔化されたような気もしますが怒る気が失せてしまいましたよ。
そして一緒に頭上を見上げます。あと少しで越えられそう。
ここを超えてしばらく進むと広い空間があり、そこに祈り石があるのです。
「ここから先は何があるか分からない。ゼロスは俺が抱いていこう」
「はい、お願いします」
ハウストにゼロスを渡しました。
彼は片腕でゼロスを抱き、イスラに指示をだします。
「イスラ、お前はいつでも剣が抜けるように準備しておけ」
「わかった。まかせろ」
「えっ、剣? どうしてそんなものを」
「念の為だ。ここで魔力は使えないからな」
ハウストはそう言うと、ゼロスを抱いて器用に岩を登りだしました。
そして先に頂上を超えて向こう側へ。
「いいぞ、来い!」
少しすると巨岩の壁の向こうからハウストの声がしました。
その声に私とイスラも頷いて、さっそく登っていきます。
頂上まで登って見下ろすと、ゼロスを抱いたハウストが待ってくれていました。降りても大丈夫なようです。
「いきましょう、イスラ」
「ブレイラ、こっちがおりやすいぞ」
「ふふ、ありがとうございます」
イスラが降りやすい順路を教えながら先導してくれます。頼もしいですね。
私をちらちら確認しながら降りてくれるのは嬉しいですが、余所見をしていると危ないです。
「イスラ、私のことはいいですから」
「――――二人とも飛び降りろ!!」
突如、ハウストの鋭い声があがりました。
反射的に振り返ると視界一杯に迫る巨大な影。
「イスラ!!」
ドゴオオオオンッ!!!!
岩壁に影が衝突したのと、寸前にイスラの腕を掴んで飛び降りたのは同時。
イスラの小さな体を腕の中に抱きしめて、落下の衝撃にぎゅっと身を固くする。
「ッ、くっ!!」
地面に着地し、勢いのままごろごろ転がりました。
全身に痛みが走って呻きが漏れてしまう。
覚悟して身構えましたが痛いものは痛いです。幸い大怪我はしていませんが痛くないはずありません。
「ブレイラ?!」
抱きしめていたイスラが慌てて腕の中から飛び出しました。
イスラが泣きそうな顔で私に抱きついてきます。
イスラの体力も回復したようで気合いを入れて荷物を背負ってくれました。
「できたぞ、はやくいこう」
「頼もしいですね。あなたも準備はいいですか?」
抱っこしているゼロスを覗き込む。
抱っこ紐で固定したゼロスは私の胸元で上機嫌に手足をばたつかせます。
「あーあー!」
「準備できているようですね」
いい子いい子と頭を撫でてあげると、ゼロスは嬉しそうにぺたっと全身で抱きついてきました。
こうして私たちの支度が整うと出発です。
ハウストが先頭に立ち、それにイスラと私が続きます。
滑りやすい足元に気を付けながら歩いていましたが、ふと先頭のハウストが立ち止まりました。
「どうしました?」
「岩だ。登って超えるしかないな」
ハウストが前方をランタンで照らします。
どうやら壁の崩落があったようで巨岩が積みあがっています。幸いにも通路が塞がれている様子はありませんが、巨岩をよじ登って越えるしかないようです。
「ブレイラ、登れるか?」
「はい、一人で大丈夫です」
砂利や岩が自分の背丈より高く積みあがっていますが、これくらいの斜面と高さなら登れます。
私は正面で抱っこしていたゼロスをおんぶに切り替えました。紐でしっかり背中に固定します。
「先に行くぞ」
まずハウストが登り、あっという間に巨岩の上に辿り着きました。
イスラも足場を利用して身軽に岩を登ってしまいます。
私も二人のように岩を登ろうと、足場を選びながらよじ登っていく。
砂利で滑りそうになりますが、大丈夫、できます。
「よいしょ、よいしょ」
「あーあー!」
背中のゼロスが小さな手で私の髪をぎゅっと握りしめます。
いたいですよ、ゼロス。でもこれって応援してくれているんですよね、たぶん。
なんとか登るとハウストとイスラが待っていてくれます。
「よく登ったな」
「当たり前です。私もこれくらい登れるんですよ」
フフンッ、誇らしいです。
山育ちを舐めないでもらいたいです。
そもそもハウストとイスラの身体能力や体力が規格外なのであって、私に体力が無いわけでも運動音痴なわけでもありません。むしろ平均より上のはず。
「大丈夫のようだな、次に行くぞ」
「はい」
私もハウストとイスラに続いてまた巨岩を登ります。
あ、この岩、さっきのよりも登り難いですね。斜面も急で滑りやすい。
ハウストとイスラはどうしているかと見上げると、二人はなんの問題もなくひょいひょい登っていました。羨ましいくらいの身体能力の高さと器用さです。
私は滑らないように気を付けながら斜面にへばりつく。ハウストやイスラとは違ってあまり格好いい登り方ではないので恥ずかしい。
「ブレイラ、大丈夫か?」
先に登ったハウストが心配そうに見下ろしてくれます。
でも今、私、岩にカエルみたいにへばりついているんですよね。
「……あんまり見ないでください」
「なぜだ」
「なぜって……」
「潰れたカエルみたいだからか?」
「つ、潰れた?! もっと別の言い方があるでしょう!」
潰れたとは何事です。せめてカエルだけならまだしも。
しかし岩にへばりつきながら睨んでも迫力はなく、ハウストは面白そうに笑って手を伸ばしてきました。
「手を貸せ」
「自分で登れます」
「俺が手を貸したい」
「……お願いします」
ハウストはずるいです。
私が断れない言い方をよく心得ているのですから。
手を伸ばすと彼の大きな手に握り返される。そして一気に体が引き上げられました。
私とゼロスを片手で引っ張り上げてもハウストの体幹が揺らぐことはありません。
「ありがとうございます」
「潰れたカエルのような姿も、もう少し見ていたかったがな」
「からかってます?」
「とんでもない。ゼロス、お前もよく頑張っているな」
ハウストは軽く笑って言うと、私の背中にいるゼロスの丸い頬をひと撫でしました。
ゼロスがくすぐったさに「きゃあ」と声を上げて喜んでいます。誤魔化されたような気もしますが怒る気が失せてしまいましたよ。
そして一緒に頭上を見上げます。あと少しで越えられそう。
ここを超えてしばらく進むと広い空間があり、そこに祈り石があるのです。
「ここから先は何があるか分からない。ゼロスは俺が抱いていこう」
「はい、お願いします」
ハウストにゼロスを渡しました。
彼は片腕でゼロスを抱き、イスラに指示をだします。
「イスラ、お前はいつでも剣が抜けるように準備しておけ」
「わかった。まかせろ」
「えっ、剣? どうしてそんなものを」
「念の為だ。ここで魔力は使えないからな」
ハウストはそう言うと、ゼロスを抱いて器用に岩を登りだしました。
そして先に頂上を超えて向こう側へ。
「いいぞ、来い!」
少しすると巨岩の壁の向こうからハウストの声がしました。
その声に私とイスラも頷いて、さっそく登っていきます。
頂上まで登って見下ろすと、ゼロスを抱いたハウストが待ってくれていました。降りても大丈夫なようです。
「いきましょう、イスラ」
「ブレイラ、こっちがおりやすいぞ」
「ふふ、ありがとうございます」
イスラが降りやすい順路を教えながら先導してくれます。頼もしいですね。
私をちらちら確認しながら降りてくれるのは嬉しいですが、余所見をしていると危ないです。
「イスラ、私のことはいいですから」
「――――二人とも飛び降りろ!!」
突如、ハウストの鋭い声があがりました。
反射的に振り返ると視界一杯に迫る巨大な影。
「イスラ!!」
ドゴオオオオンッ!!!!
岩壁に影が衝突したのと、寸前にイスラの腕を掴んで飛び降りたのは同時。
イスラの小さな体を腕の中に抱きしめて、落下の衝撃にぎゅっと身を固くする。
「ッ、くっ!!」
地面に着地し、勢いのままごろごろ転がりました。
全身に痛みが走って呻きが漏れてしまう。
覚悟して身構えましたが痛いものは痛いです。幸い大怪我はしていませんが痛くないはずありません。
「ブレイラ?!」
抱きしめていたイスラが慌てて腕の中から飛び出しました。
イスラが泣きそうな顔で私に抱きついてきます。
32
あなたにおすすめの小説
星降る夜に ~これは大人の純愛なのか。臆病者の足踏みか。~
大波小波
BL
鳴滝 和正(なるたき かずまさ)は、イベント会社に勤めるサラリーマンだ。
彼はある日、打ち合わせ先の空き時間を過ごしたプラネタリウムで、寝入ってしまう。
和正を優しく起こしてくれたのは、そこのナレーターを務める青年・清水 祐也(しみず ゆうや)だった。
祐也を気に入った和正は、頻繁にプラネタリウムに通うようになる。
夕食も共にするほど、親しくなった二人。
しかし祐也は夜のバイトが忙しく、なかなかデートの時間が取れなかった。
それでも彼と過ごした後は、心が晴れる和正だ。
浮かれ気分のまま、彼はボーイズ・バーに立ち寄った。
そしてスタッフメニューの中に、祐也の姿を見つけてしまう。
彼の夜の顔は、風俗店で働く男娼だったのだ……。
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました
じゅん
BL
人間領に進撃許可を出そうとしていた美しき魔王は、突如、前世の記憶を思い出す。
「ここ、RPGゲームの世界じゃん! しかもぼく、勇者に倒されて死んじゃうんですけど!」
ぼくは前世では病弱で、18歳で死んでしまった。今度こそ長生きしたい!
勇者に討たれないためには「人と魔族が争わない平和な世の中にすればいい」と、魔王になったぼくは考えて、勇者に協力してもらうことにした。本来は天敵だけど、勇者は魔族だからって差別しない人格者だ。
勇者に誠意を試されるものの、信頼を得ることに成功!
世界平和を進めていくうちに、だんだん勇者との距離が近くなり――。
※注:
R15の回には、小見出しに☆、
R18の回には、小見出しに★をつけています。
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる