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第二章・慈悲の聖女クレディア・シーウェル
枢機卿・慈悲の聖女クレディア・シーウェル3
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「待ってください、正気じゃないです。御自分がなにをおっしゃってるか分かっていますか?」
「もちろんです。でもこれが悪魔から世界を守るため」
「……悪魔から守るために地獄の盟主を利用するということですか?」
「そうです。そもそも上級悪魔に対抗できる聖女は枢機卿を含めても僅かです。このまま上級悪魔と聖女が戦い続ければ夥しい数の聖女が殺されることになるでしょう。でも地獄の盟主ならそうじゃありませんよね? 実際、教会に巣食っていた上級悪魔を倒してくれました」
私は黙り込む。
言いたいことは分かった。
たしかに一般的な聖女が対抗できる悪魔は下級悪魔だけだ。
中級悪魔になると討伐隊の中でもリーダー級の聖女が複数必要になってくる。
上級悪魔など手も足も出ないだろう。上級悪魔側からすれば赤ん坊と遊んでいるのと同じだ。
黙りこむ私の横でギルタレスが不快そうに口を開く。
「おいちょっと待て、俺を利用する気か? この強欲の王を」
「利用するなんてとんでもありません。私は悪魔であるあなたに、ただ悪魔であれと思うだけです。同じ眷属の悪魔でも躊躇わずに殺す、感服いたしました」
「……なにが慈悲の聖女だ」
ギルタレスが呆れた調子で吐き捨てた。
クレディアはただニコニコと微笑むだけだ。
そしてまた私を振り返る。決定権は私だとばかりに。
「……もう一つ聞かせてください。なぜ他の盟主の門も開ける必要があるんですか? 地獄の盟主なんて人間界に来ないほうがいいんじゃないですか?」
「そうですね、だから三千年前に封じました。しかし三千年前とは状況が変わったのです。上級悪魔に人間界を蹂躙されるわけにはいきません。上級悪魔を倒すには地獄の盟主の力が必要です。目には目を、歯には歯を、悪魔には悪魔を、ですよ」
クレディアの言葉に呆気に取られた。
あまりにも無茶と言えば無茶な悪魔討伐だったのだ。
しかしクレディアは笑顔で続ける。
「それに地獄の盟主といえど門を解放した人間は殺せないんです。だから人間の聖女が門を開き、地獄の盟主の手綱を握っておくほうがいいと思いませんか?」
「え、手綱……」
「そうです。人間なら誰でも門を開けられるわけではないのです。いくら聖女でも普通なら魔法陣に触れた瞬間に死んでますよ。だから強欲の王の門を開いたロロットさんの力が必要なんです」
クレディアはそう説明すると改めて私を見つめた。
怖いほど真剣に、まっすぐに。
そして正式に命じる。
「ロロット・カーデリアに命じます。私の密命により地獄の七大盟主の門の解放、並びに上級悪魔討伐を要請します。拒否すれば処刑です。選びなさい」
唖然とした。
でもこれだけははっきりしている。
「……拒否権、ないじゃないですか」
「そうでしょうか。処刑か密命か、選択肢を与えていますよ」
「…………」
それを選択肢だというのなら、世の中のほとんどの選択が可愛いお遊戯になるだろう。
でも先ほどの話しを聞いて分かったことがある。
ギルタレスが私を殺さない理由は、殺せないからだ。
封印を解いて門を開けた私をギルタレスは殺せない。
それを知って、……どうしてかな、不思議。スゥッと冷たい風が抜けるような爽快な気持ちになった。
私を奴隷にしたいなどと強欲の野望を燃やす悪魔に上下関係を教えられる。
でも今すべきことは一つ。
「…………分かりました。その密命、お受けします」
そう、処刑の回避だった。
こうして私は地獄の七大盟主・強欲の王ギルタレスとともに密命を受けることになるのだった。
「もちろんです。でもこれが悪魔から世界を守るため」
「……悪魔から守るために地獄の盟主を利用するということですか?」
「そうです。そもそも上級悪魔に対抗できる聖女は枢機卿を含めても僅かです。このまま上級悪魔と聖女が戦い続ければ夥しい数の聖女が殺されることになるでしょう。でも地獄の盟主ならそうじゃありませんよね? 実際、教会に巣食っていた上級悪魔を倒してくれました」
私は黙り込む。
言いたいことは分かった。
たしかに一般的な聖女が対抗できる悪魔は下級悪魔だけだ。
中級悪魔になると討伐隊の中でもリーダー級の聖女が複数必要になってくる。
上級悪魔など手も足も出ないだろう。上級悪魔側からすれば赤ん坊と遊んでいるのと同じだ。
黙りこむ私の横でギルタレスが不快そうに口を開く。
「おいちょっと待て、俺を利用する気か? この強欲の王を」
「利用するなんてとんでもありません。私は悪魔であるあなたに、ただ悪魔であれと思うだけです。同じ眷属の悪魔でも躊躇わずに殺す、感服いたしました」
「……なにが慈悲の聖女だ」
ギルタレスが呆れた調子で吐き捨てた。
クレディアはただニコニコと微笑むだけだ。
そしてまた私を振り返る。決定権は私だとばかりに。
「……もう一つ聞かせてください。なぜ他の盟主の門も開ける必要があるんですか? 地獄の盟主なんて人間界に来ないほうがいいんじゃないですか?」
「そうですね、だから三千年前に封じました。しかし三千年前とは状況が変わったのです。上級悪魔に人間界を蹂躙されるわけにはいきません。上級悪魔を倒すには地獄の盟主の力が必要です。目には目を、歯には歯を、悪魔には悪魔を、ですよ」
クレディアの言葉に呆気に取られた。
あまりにも無茶と言えば無茶な悪魔討伐だったのだ。
しかしクレディアは笑顔で続ける。
「それに地獄の盟主といえど門を解放した人間は殺せないんです。だから人間の聖女が門を開き、地獄の盟主の手綱を握っておくほうがいいと思いませんか?」
「え、手綱……」
「そうです。人間なら誰でも門を開けられるわけではないのです。いくら聖女でも普通なら魔法陣に触れた瞬間に死んでますよ。だから強欲の王の門を開いたロロットさんの力が必要なんです」
クレディアはそう説明すると改めて私を見つめた。
怖いほど真剣に、まっすぐに。
そして正式に命じる。
「ロロット・カーデリアに命じます。私の密命により地獄の七大盟主の門の解放、並びに上級悪魔討伐を要請します。拒否すれば処刑です。選びなさい」
唖然とした。
でもこれだけははっきりしている。
「……拒否権、ないじゃないですか」
「そうでしょうか。処刑か密命か、選択肢を与えていますよ」
「…………」
それを選択肢だというのなら、世の中のほとんどの選択が可愛いお遊戯になるだろう。
でも先ほどの話しを聞いて分かったことがある。
ギルタレスが私を殺さない理由は、殺せないからだ。
封印を解いて門を開けた私をギルタレスは殺せない。
それを知って、……どうしてかな、不思議。スゥッと冷たい風が抜けるような爽快な気持ちになった。
私を奴隷にしたいなどと強欲の野望を燃やす悪魔に上下関係を教えられる。
でも今すべきことは一つ。
「…………分かりました。その密命、お受けします」
そう、処刑の回避だった。
こうして私は地獄の七大盟主・強欲の王ギルタレスとともに密命を受けることになるのだった。
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